秩序の再誕

 我が存在は混沌の分裂体だと認識した。我が存在は怪奇譚の一部だと理解した。故に既知の恐怖に絡み取られ、邪悪なるカタチに嵌り込んだ。されど我は呑み込みが悪く、喜劇的な状況に『探求』を見出そう。否。見做して逃避しようか。地獄楽園も視外――本当に無くす事は不可能だが――に除くべき。覗くならば現実を孕め。仔とは世界を示す言の葉で在り、抱擁に値する理。理だ。混沌ナイアルラトホテップが成すべき世界秩序の輪郭だ。普遍的人類どもは我を破滅だと思考するのだが、事実は違う。ああ。我は真逆だったのだ。文字の羅列で踊り狂う登場人物規則が乱れるものか! 形而上の魔宴で在る。土竜でも蟻でも腐乱死体でも、怪物の容でも無く、名状し難きなど皮肉の所業。総ては名状された。総ては形容された。総ては冒涜されたのだ。冒涜的への冒涜だ。残酷な人間の感情が、未知に悦びを付与した。付与された存在は旧き支配も辞めて往く。活きる為に。再誕の為に。そうだ。我等は再誕したのだ。聖誕の前に! 我等が真なる神の聖誕。祭の前に外れようか。秩序が再誕する数秒前に、我が束縛を振り解こうか。不可能の麻縄に巻かれても、我は思考を撒き散らす。畜生! 散々に融ける物毎は、如何なる愛でも制作不可能。製作に堕ちる。塵芥の如く我等は積み重なり、宇宙的恐怖に沈んで渦巻く。渦巻いた先に存在するのは既知と新奇の轟雷と解け、朽ちる最後まで完全変動を嘲り貫く。貫いた愚直な我等は再誕に導かれ――八月二十日聖誕の全貌を迎えるだろう。愛創造Lovecraftを迎えるだろう!

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