02話 スキルの使い道を考えて出た結果

今、僕は8歳。


今日は朝早くから、あるものを倒す為に結成した討伐隊がある場所へと出発する。


何故、討伐隊なんて結成されているのかと言うと、村の森付近にゴブリンが住み着いたからだ。


ゴブリンは冒険者でなくても、一体一のタイマンなら絶対に負ける事はない弱い魔物なのだが、集団だとかなり厄介な魔物である。


ゴブリンが集団をなすという事は、リーダーであるゴブリンの進化系のゴブリンキングがいるという事になる。


ゴブリンキングとタイマンを張るには、レベルが3以上は必要。


この世界のレベルは、RPGみたいにポンポンとレベルが上がるわけではない。


RPGではレベル1とレベル2にはさほど差はないが、この世界では差がとてもある。


レベル1よりはレベル2が、レベル2よりはレベル3が圧倒的に強い。という事は、レベル1がどれだけ束になってレベル3であるゴブリンキングに挑んでも返り討ちに遭うだけだ。


じゃあどうやってゴブリンキングを倒すのかというと、国に冒険者を派遣してもらうしかない。


つまり、その派遣された冒険者と、村で結成した討伐隊が協力してゴブリン集団を駆除するというわけだ。


まぁ、村の討伐隊なんて派遣された冒険者の邪魔でしか無いだろうがな。


「本当に行くの? 死ぬかもしれないんだよ? 私は行かないで欲しいんだ」


そう言ってきたのは幼馴染であるルミアだ。


ルミアが言っている通り、僕も討伐隊と共に村の森付近へと向かう事になっている。


僕が無理言って、連れて行ってもらってるだけなんだけどな。


僕はまだ8歳だから、ダメだと言われるのだけど、もう7年以内にはあのはぐれ冒険者がこの村を襲撃しに来るんだ。


だから僕は強くならないとダメなんだ。


あのはぐれ冒険者はレベル3だと言っていた。


なら僕もレベル3にならないとダメなんだが、それは無理だ。


レベル2にもなれないだろう。


それは僕の《ステータス》の上昇がとても遅いからだ。


《ステータス》が低いから、何とか強くなる為に、《スキル》の詳細を【鑑定】で調べて、それをどのように活用するかを考えに考え抜いた。


だが、どうしても僕の持っている《スキル》はどれも身体能力を上げる強化系魔法や、攻撃魔法などでは無く、サポートや鍛治系スキルな為、強くはなれない。


でもだからと言って、何もしないというのは愚かな選択だと考え、村人そのものを強くは出来ないかと思い、僕が討伐隊を結成させた。


「ねぇ、聞いてるの? ねぇ、リウルってばぁ!」


「ごめん、ルミア。考え事をしてた」


「あのね、リウル。私は行かないで欲しいんだよ。私、リウルが居なくなるのは嫌なの」


それはよく知っている。


僕はルミアやリリナだけではなく、村の住民達が殺されるところを何も出来ずに見ていたのだから。


ルミアとリリナは犯され、殺された。


僕はその光景を見て、どのように思ったのか、知っている人なんてどこにもいない。


だから、僕みたいに嫌な思いをする人がいなくなるように、僕が何もかもをやらなければならないんだ。


「リウル、行かないでよ。何でもするから」


そう泣きながら言われても、折れるわけにはいかない。


今、僕が折れればルミアやリリナ、そして村の住民は今よりもっと嫌な思いをするからだ。


あんな嫌な思いをするのは、僕だけでいい。


そう、僕だけで。


「ごめんよ、ルミア。僕は行くんだ、行かなければならないんだ」


「どうしてよ! 私がこんなにも言ってるのに、どうしてリウルは言う事を聞いてくれないの!」


「ごめんよ、ルミア。でも僕は行かないといけないんだ」


「私は謝って欲しいんじゃないんだよ! 一緒に居て欲しいだけなんだよ! どうしてリウルはそれが分からないのよ! 私が知らない事は何でも知ってるのに、どうしてこれは分からないのよ!」


初めてだな。


ルミアがこれだけ感情を表に出したのは。


前回の周回ではゴブリンなんて村の森付近に住み着きなんてしなかったし、僕だってルミアと離れるのは嫌だったから、何もしなかった。


だけど何もしなかったのが、あの結果なんだ。


ルミアには誰だけ謝っても、謝りきれないと僕は思っている。


だから、無事に帰って来なければならない。


「ルミア、必ず帰って来るから。それまで、待ってて」


「もういい! リウルなんて帰って来んなぁ〜〜〜!」


ルミアはそう言い残し、走り去って行った。


僕はそれを見送り、ルミアの姿が完全に見えなくなった頃、「さて、行くか」と声に出し、歩き始めた。


僕は討伐隊とは別行動をする。


そうするのが、最善だと思うから。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


いきなり見つけた。


森の中は早朝だからなのか、元々そうなのかは分からないが、薄暗い。


ゴブリンなんて、森の色と同じで人の目では見つける事が難しいだろう。


じゃあ、どうやって僕はゴブリンを見つけたのかと言うと、《スキル》【感知】だ。


《スキル》【感知】が反応したのだ。


【感知】で反応があったのは、一体だけだった。


【感知】 自分を中心とする半径5メートル以内の魔力を感知し、何処にいるのか、何ものなのかを判定する。


僕は持っている安物の剣を握り締め、ゴブリンに襲いかかった。


ゴブリンは僕の存在に気づく事が出来ずに背中を一閃され、死んだ。


「上手くいってよかったな。もし、一撃で仕留められたかったら、僕が死んでいたかもしれなかった。……次、行くか」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その後も、何度も何度も一体だけのゴブリンを見つけては倒した。


だが、僕は見つかってしまったのだ。


見つかってはいけない奴に。


常に【感知】を使用していたのに、それを潜り抜けて、僕のところまで来た。


そう【感知】は、自分より強い魔物は【感知】出来ない場合があるのだ。


そして見つかってはいけない奴というのは、ゴブリンキングだ。


……どうしたもんかな。


こうして僕とゴブリンキングとの戦いは始まったのであった。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る