01話 ステータスカード

今、僕は5歳。


5歳というのは、一桁の歳の中では最も重要な歳。


その理由はステータスカードと呼ばれる物が渡される日だからだ。


ステータスカードは、名前、生年月日、血液型、身長、体重、そしてステータスまでもが記載されている、所謂身分証明書みたいな物で、世間からはアーティファクトと呼ばれている。


アーティファクトとは神代に創られた魔導具の事。


アーティファクトはステータスカード以外にも沢山あるが、最も汎用性があり、複製されているのはステータスカードだけ。


そんな素晴らしいステータスカードを貰いに今日、村の教会に行く。


僕は前回の周回より、本当は早くステータスカードを貰いたかった。


その理由は、今回の周回では前回の周回より、村の人口が増加しているからだ。


これでは理由になってはいないが、これからする話で理解できると思う。


こほんっ……。


今、この時点で既に前回の周回と異なっている事から、あのはぐれ冒険者がいつ村を襲撃に来るかが分からなくなっている。


前回の周回では僕が15歳の時にはぐれ冒険者が村を襲撃に来たが、今回の周回ではそれより早く襲撃に来ると思っている。


その理由は、村の人口が前回の周回より増えた事で、村が発展してしまい、はぐれ冒険者に襲撃されやすくなっているからだ。


あのはぐれ冒険者は、大きな村から襲撃しているから、今回の周回では前回の周回より村が発展し、大きくなってしまっているから、襲撃される時期が早まってしまった。


だから、ステータスカードを早く貰いに行きたかったのだ。


だが、こういう事が起こってしまう可能性があると分かっていたから、僕だってステータスカードを貰いに行くまで、唯のんびりと暮らしていたわけではない。


剣術を学んだり、魔術の事を勉強したりして、前回の周回とは違って、強くなる為に時間を使った。


「りうる、いまからきょうかいにいくんだって」


「うん、分かった。ルミアは先に外に出てて」


ルミア=ティオネル、僕の幼馴染。


綺麗な水色の髪に、水色の瞳の持ち主で、よく家に遊びに来るロングヘアーの女の子。


というか、毎日来てる。


どんだけ遊びたいんだよって言いたいほどに遊びに来てる。


嬉しいけどさ。


今のルミアはワンピースを着ていてとても可愛いだけなのだが、今から10年後の15歳になった彼女は今の可愛さも保ちつつ、美しくなるのだ。


幼馴染で無ければ、僕なんて相手にしないだろうと思ってしまうほどに。


……行きますか。


僕は今いるリビングから出て、玄関に向かい、そして玄関を開けて、外に出る。


今は昼で、上を向けば、そこには雲ひとつない空が広がっていた。


「おそいよ、りうる」


「ごめん」


そう言った直後、ルミアは手を差し出してきた。


多分、手を繋げって事だと思うから、手を繋いであげた。


その後、ルミアを見ると嬉しそうに笑顔を浮かべていた。


僕はその笑顔を見つめていると、空いている方の手を握られたので誰だと思って見てみたらリリナだった。


リリナは銀色の髪に碧い瞳の持ち主で、僕の一歳年下の妹だ。


そんなリリナに「どうしたんだ?」と、聞いてみたら、こう返って来た。


「別に」と。


……おかしいよ。


リリナはまだ4歳だよ?


何だよ、『別に』って。


4歳が言う言葉じゃないよ!


偶にルミアの方がリリナより年上の筈なのに、口調や態度で、あれ? どっちが年上だっけ? って思ってしまう。


……だがしかし、僕は知っている。


リリナがクーデレだという事を。


リリナはマジで可愛いからな?


今は唯の愛想の悪い幼女だけど、今から10年後のリリナがデレたら可愛すぎるから。


ま、今のリリナも充分可愛いんだけどな。


……そろそろリリナの自慢話はやめておこうか。


何故なら、母さんと父さん、そしてルミアの両親が僕たちを置いて先々歩くから、大分差が開いてしまったからだ。


子供と大人の歩幅は全然違うんだから、もう少しさ、ゆっくり歩いてくれればいいのに、と心から思ってしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今、僕たちはステータスカードを発行する為に必要なある一つの動作をし終わったところだ。


ある一つの動作とは、手を水晶玉にかざす、というものだ。


この水晶玉はアーティファクトの一つで、色は藍色、大きさは直後20cm。


手をかざすだけでステータスカードを発行出来るなんて凄いとか言いようがない。


どうしてこの水晶玉に、手をかざすだけでステータスカードを発行出来てしまうのかはよく分かってはいないが、魔力が関係してると言われている。


「はい。これが、あなたのステータスカードね」と、優しそうなおばさんが言いながら、ステータスカードを渡して来た。


ステータスカードは普段は透明だが、魔力を注ぐと、注いだ魔力に反応して青い文字が浮かび上がる。


ステータスカードには、青い文字でこう浮かび上がっていた。


【リウル=エルリオン】 5歳 AB型

種族 ヒューマン

レベル 1

【HP 12/12(+0)】 【MP 9/9(+0)】

《ステータス》

攻撃 15(+0) I(+I)

防御 11(+0) I(+I)

敏捷 14(+0) I(+I)

器用 13(+0) I(+I)

魔力 10(+0) I(+I)

《スキル》 【超成長】【リーリエさんのおまかせ[錬成][叡智][契約][感知][鑑定]】

《固有スキル》 無し

《加護》 【神の加護】


……賭けに勝った。


【リーリエさんのおまかせ】は、最低で一つ、最高で五つ、ランダムで《スキル》を与えられるんだけど、五つなんてかなり確率が低いはずなのに、引いてしまった。


最もハズレである一つしか与えられない、である確率は、80%だったはずだ。


だからこれは賭けだったのだ。


10回に8回はハズレを引いてしまう、だがたった数%の確率で大当たりを引き当ててしまう可能性があった。


僕はその可能性に賭けたんだ。


そして僕は数%の確率で大当たりを引き当ててしまったんだけど、ただ単に運がいいのか、リーリエさんがそうなるように仕組んだのかは分からない。


それはどちらでもいいんだけどさ、これらの《スキル》の詳細が全く分からないんだよね。


それに《ステータス》にある(+0)と【神の加護】というのは一体何なんだろう。


前回の周回の時はこんなの無かったはず。


うーん。


……考えても分からないから、放置しとこ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その頃リーリエは、楽しそうにしていた。


「私が好き勝手に《スキル》を五つ選んだり、【神の加護】を授けたの、リウル君にバレてるかな?」と、リーリエは椅子に座り、足をぷらんぷらん揺らしながら言っているが、そこの空間にはリーリエ以外誰も居ない。


つまり独り言だ。


「今度はいつ会えるかなぁ? 会えたら今度は何をしてあげようかなぁ?」と次は、頭を傾かせながら言っている。


……独り言だ。


リーリエが好き勝手に《スキル》を五つ選んだり、【神の加護】を授けた事をリウルが知るのと、リーリエとリウルが再開するのは今から8年後、リウルがレベル2へと昇格した時だ。



































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