真夏の尿意

神町 拝

真夏の尿意

世界は今、摂氏36度だ。


おれはダバダバダバ、とトチ狂ったように汗を流していた。

体中の水分が失われていき、熱中症の前症状のような軽い立ちくらみを覚える。


なのに、唐突に尿意は訪れる。

やめろ。


これ以上水を排出してはならない。

そう意識したとたん、軽い寒気とともに尿意は和らいだ。


ダバダバダバ、と相も変わらず発汗は続く。

尿意はもうない。

ああ、おれはさっき自分のを飲んじまったんだな、と奇妙に納得した。


ダバダバダバ。


心なしか、辺りはほんのりとアンモニア臭かった。



―了

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真夏の尿意 神町 拝 @mistel

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