第7話 プロレタリア文学・演劇関連2

『物語 プロレタリア文学運動 上』

…新日本出版社発行。蔵原惟人・手塚英孝著

昭和42年の初版。作者の蔵原氏は革命後のロシアに留学しプロレタリア文学運動初期から活動し治安維持法に触れて逮捕され獄中で過ごした人物。日本共産党に入党し、戦後は中央委員会幹部役員・文化部長を務めた。イデオロギーと出版物、共産党の組織と労働組織、用語など理路整然と、流れに沿って理解できるようになっている。似たような読み方が多いプロレタリア界の略語など特にわかりやすい。


『日本プロレタリア文学大系・3』

…三一書房発行。蔵原惟人・平野謙・小田切秀雄・野間宏・竹内好 責任編集

昭和29年の初版。昭和3年の全日本無産者同盟(ナップ)設立から翌昭和4年6月くらいまでのプロレタリア文学(小説、戯曲、評論、詩、短歌、俳句)を網羅。プロレタリア文学の中でもマイナージャンルの詩歌・俳句まで収録した第一級の資料。ただし古本で状態は良くない。教科書や歴史資料では絶対に取り上げられないだろう生々しい表現はすさまじい。中でも詩「おりゃ朝鮮人だ」(金柄昊 )、「拷問を耐える歌」(田木繁 )は色々な意味ですごい。


『戦火に生きた演劇人たち 演出家・八田元夫と「桜隊」の悲劇』

…講談社発行。堀川惠子著

今年(2017年)7月に発行された新しい本。日本の近代演劇と労働運動。思想の関わりを通しつつ演劇そのものから離れる事の出来ない役者・舞台人の業のようなものを描いたドキュメンタリー。桜隊に関してはいくつも作品が世に出ているが、丸山定男と関係の深い八田元夫の目を通して描いている。戦時中の演劇事情を知るうえで頼りになる。


『捕囚』

…河出書房新社発行。阿部知二著

本作でとりあげた近衛文麿のブレーン集団「昭和研究会」の主要メンバーだった哲学者の三木清がなぜ投獄され終戦後も釈放されず獄死したのかを描く大著。ドキュメンタリーというよりは観念小説のようなので、氏の年表を傍らに置いて、サブテキストとして読むのがいいと思う。



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