殺されたがっている魔物の治療
灯台の種火が点いた。
火は夜空に一条の光を差す。
やがて、夜空から星がゆっくりと降り注ぎ、少女の手のひらに落ちた。
「これが星の石」
天から降った星の石は道端で見かけた石と同じ形状で同じ輝きをしている。
「まったく面白くない」
ボクも同じ意見だ、トバ。
「けど、今のオレはこの輝きが一番だ」
トバはそういって、星の石を見つめた。
「星海の灯台をどうする気だ?」
キングガーゴイルは虫の息さながらそう言った。
「用は済んだ。帰る」
「信じられるか……」
キングガーゴイルは力を振りしぼり、こっちへとにじり寄る。
「星海の灯台を使って魔物を滅ぼせよ。世界を征服しろよ。人間の街一つでも滅ぼせば、世界はオマエのものだぞ」
キングガーゴイルはケケケと、ささやき笑う。
「オレを倒したんだ。世界を壊せ。いいか、世界を壊せよ」
キングガーゴイルは横になる。もう力がないのだろう。
「ハハハ、ハハハ……」
キングガーゴイルは声を閉じ、まぶたも閉じようとする。
「フィーラ、癒しの魔法、使えるよな」
「はい!」
「こいつを癒してくれ」
「はい。って!?」
嫌がるフィーラにもう一度お願いする。
「やってくれ」
「は、はい」
フィーラはボクの言葉に頷き、キングガーゴイルのキズを癒す。
「何する気だ?」
「治癒魔法です」
「オレに必要なのは死に挑む誇りだ。力がある者に殺されたその
「死は誇りも何も持ち込めません」
「みじめなんだよ。もっと誇らしく殺してくれよ」
「わたしのおじいちゃんは病で亡くなりました。お父さんお母さんは隊商の途中で行方不明になりました」
「……なんだよ、それ」
キングガーゴイルは自分のカオを片手で隠す。
「魔物だ! 魔物なんだよ! 俺は! 死ぬことぐらい価値付けさせろ!」
キングガーゴイルはフィーラの手を振りはたいた。
「誰かに殺されたがっている病にかかっているな」
ボクはめんどくそうに言った。
「ふん」
声に元気が戻った。これなら大丈夫だ。
「感謝はしない」
「逆恨みは怖いだけだ、敵は作りたくない」
「ふん」
「それより、ちゃんと守っとけよ、この灯台を。いつか俺達よりすごいヤツが来るぞ」
「ふざけるな! 今すぐオレを殺――」
「すごいと思っているのか? 俺たちを?」
キングガーゴイルは視線をずらす。なんかムカつく。
「悪いものでも食ったと思って今日の事は忘れとけ」
「……忘れられなかったら?」
「そのときは大声でも出せ」
キングガーゴイルは大声を出そうとしたがやめた。キズに触るようだった。
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