第22話

授業が終わって、私はこの後授業がないので由香さんと別れて駐輪場へ向かう。

自転車で来ていないのに、2人になれるこの時間のあの場所へ。


少し待っているといつものように安藤先生が学校外から戻ってくる。


「あんどー!」

そう呼びながら手を振ると満面の笑みでこちらへ向かってくるあんどー。


「あけましておめでとう。今年もよろしくね!」


「おう。俺こそ、今年もよろしく!」


「さっそくだけど傘、貸してくれてありがとう。」


「ううん!濡れずに済んだだろ?(笑)」


「おかげさまで。(笑) 本当は金曜日に返そうと思ってたのにごめんね。」


「いいよいいよ(笑) あ、でも俺さ傘が無くて買い物行っても駐車場からその店の中までは毎回濡れてたからな~~(笑)」


「えぇーーー、だってもう1本持ってるっていったじゃん~、嘘だったの?」


「あ、まぁ千佳はそう言わなかったら傘を受け取らなかっただろ?だからさ優しい嘘をつきました。(笑)」


「もう~。馬鹿~~。本当にごめんなさい。風邪、引かなかった?大丈夫?」


「大丈夫、大丈夫!そんな弱くないです~~~~」


「ならよかった」


「そういえば、千佳は冬休み何してたの?」


「うーーん、バイトとおせち作ってたかな」


「へー、またバイトか(笑) そろそろ辞めろよな(笑) おせち作れるんだ!すごいじゃん」


「バイトね、ちゃんと考えてるよ。おせちくらい作れまっせ!!(笑)」


「正直できなそうだなって思ってた(笑)」


「はいはい、すいませんでしたね~~。あんどーは何してたの?」


「俺は仕事して、年末年始は実家帰ってた。寒かったぜ、長野」


「そっか!ゆっくりできた?」


「うーん。まぁな。でもさ俺の妹が突然留学するって聞いてさ(笑)

びっくりだったわ~。あとね、紅白見たんだけど、今流行りの歌をあんなにじっくり聞いたの初めてだったからおもしろかった~。千佳はどんな歌が好きなの?」


「うーーん。幅広く聞くから好きな歌いっぱいあるよ。でも最近だと星〇源さんかな。」


「そっか~。病気から復活してきてあのクオリティーはすごいよな。」


「あ、そうそう。私さ果物好きなんだけどさ、長野っておいしい果物多くて羨ましいよ~」


「そうだったんだ、俺なんて小さい時から食べてるからちょっと飽きたけどな(笑)」



そんなたわいもない話を2人でして、でもその時間はすごく幸せな時間で。

実家の話も、家族の話も聞けて正直嬉しかった。


また優越感と特別感を盛大に感じてニヤけが止まらなかった。


でも、この幸せな時間。

もうあと少しで無くなってしまう。


この時、きっと安藤先生は気づいてた。


私は知らなかった。

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