第5話 試験に合格して

 

 

 「あの時のエルヴァン校長先生の顔は面白かったなぁ」

 「でも、凄いわよね。試験で合格以上の結果を出したのは歴代の中でも高志で3人目らしいわよ?」


 魔法学校の試験を合格した高志は、晴れて4月からエルヴァン魔法学校に通う事になった。高志には才能があるようで、それは試験を受け持ったエルヴァンを驚かせる程の物だった。


 エルヴァンから入学前に寮に入れて直々に授業をしたいとも言われたが、それは断らせてもらった。太郎と清美が少しでも長く高志と一緒にいたかったからだ。


 「まさか自分で身体強化の魔法を編み出すとか、我が子ながら恐ろしいよな」

 「本当よね。高志の才能が凄すぎて私、震えが止まらないもの!」


  言語魔法を1週間で覚えてしまった高志は、残りの3週間を使って身体強化の魔法を開発していた。

 勿論それは昔からある魔法ではあるのだが、今まで魔法を知らなかった子供が魔法を知って1ヵ月で不完全ながら魔法を作ってしまうというのは、前代未聞だったらしい。


 「しかしアニメでやってた修行ごっこを参考にして魔法を作ったとか、あいつは本当に凄いな」

 「そうよね。あのハンター漫画が凄いだけかもしれないけど……」


 さすが世界に誇るジャパニメーションといった所だろうか。

 あれから太郎は高志に色々なアニメを見せて英才教育を施したので、もしかしたらそろそろ新しい魔法ができているかもしれない。


 「作者繋がりで指から魔法弾飛ばしたりしないかな?」

 「それなら昨日空き地で見せてくれたわよ」

 「マジか。高志も来月には寮の方に行っちゃうし、俺も早めに見せてもらわないとな」


 時間が流れるのは早いもので、来月には高志はエルヴァン魔法学校に入学する。高志は今も荷造りを頑張っているのだろう。2階の方でガタガタと物音が聞こえてくる。


 「寂しくなるなぁ」

 「まぁ、週一で帰って来るんだし、我慢しましょうよ」

 「お父さーん! 荷造り終わったよ!」

 「おぉ、よくやったな! それじゃあ今日は入学祝として寿司屋に連れてってやるぞ!」


 子供と言うのは成長が早いものだ。

 まだまだ可愛がりたいのに、高志は来月からは別の所に行ってしまう。


 「ねぇ、今日は回らないお寿司屋さんに行くって本当!?」

 「ははは、ウソだよ。高志はハンバーグ寿司が好きだろう? 回らないお寿司屋さんにはハンバーグ寿司はないんだぞ?」

 「そうなんだー。じゃあ僕は回ってるお寿司屋さんの方が良いな!」


 本当に高志は大丈夫だろうか? 

 いじめられたりしないか少し不安になるが、今は自分の息子の事を信じるしかない。せめて今日は思いっきり可愛がってやろうと、太郎は高志を抱き上げて回転ずしに向かうのだった。

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