第1章 夢の声11
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どれくらい追いかけたのか。
あまり奥まで入ったことの無い林の、
乱雑な木立の隙間を走り抜けた先で、金色の鳥はとある木の太い枝に止まった。
そこはさっきまでの草木が生い茂っていた景色とは全く違い、広く拓けた場所だった。
灯りは勿論無く夜闇に包まれていたが、金色の鳥が発光する様に周囲を照らしている。
いつの間にか足並みが揃っていた紫乃と環は、同時に足を止め、その鳥の止まった木を見上げた。
全く息の切れていない環の横で、普段に運動のしない紫乃は激しく肩を上下させて息を整えていた。
「この林…こんなに大きい木あったかなあ…?それに沼…?いや、湖かな…。」
環が首を傾げて見る眼前には、大きな湖があり、その真ん中に見覚えのない大樹があった。
湖の中に根を張っているのか、水面から巨大な幹が生えている様に見える。
「(夢の景色と…似てる…!?)」
未だ息の整わない紫乃は、それを言葉に出来ずとも、頭が混乱するほど驚いた。
少しでも落ち着くように深く空気を吸って、優しい金色の光の中で大樹を見上げる。
紫乃の夢の中の景色ほど、周りは明るく綺麗ではないが、印象的だった湖と大樹が目の前に聳えている。
「ねえ、紫乃。この林にこんな場所、なかったよね?」
環が、一歩後ろで呆然として立っている紫乃を振り返る。
「紫乃、大丈夫?」
様子のおかしいと思ったのか、環が紫乃の肩に手を添えて顔を覗き込む。
そんな環の背後を見やると、金色の鳥が静かにこちらを見ていた。
「ごめんなさい、大丈夫よ。」
環に微笑みかけ、湖に近づく。
「紫乃が走っていっちゃうからびっくりしたよ…。いきなりどうしたの?」
「…さっき、"こっちにきて"っ声が聞こえたの…。」
「声…?」
先程の声は環には聞こえていない様だった。
暗闇の中で周囲を照らす金色の光だけを頼りに二人で湖畔に立つ。
湖の中は暗く、綺麗な水なのかも分からない。
「夢で聞いた声と同じ…女の子の声が聞こえた。」
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