第1章 夢の声6



そう思っているとはいえ、

紫乃が純粋に疑問に思っている事がつい口から漏れる。



「…ねえ、環はどうして私と一緒にいてくれるの?環は他に面白い友人がいるでしょう?」



紫乃の髪を吹き終わり、環は自身の濡れたシャツにタオルを滑らせている。


そして紫乃の言葉に、一瞬動きを止めて、とても驚いた顔をして笑った。



「紫乃がそんな事言うと思わなかった。どうして、って私は紫乃といるのが好きだし落ち着くからだよ。」



当たり前のようにそう言って、少し曇った眼鏡を外した。


真っ直ぐに見つめてくる、その大きな目に紫乃も笑った。




「そう…ありがとう。やっぱり環って変わってるのね。」


「ええ、褒めてないよねそれ!」



眉を下げて笑う顔が、環らしいなと思いながら、紫乃は長い黒髪を横に流す。




「感謝の言葉なの。環、髪を結い直してあげる。」



「あ、ほつれちゃったんだ。でも中に入ってからでいいよ。」



話している内に、濡れて色濃くなっていた制服の裾も少しだけ乾いていた。


雨が変わらず降り続けているのを横目に、環が重いドアを押し開けた。




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