第1章 夢の声3


ーーー



いつもより小幅で歩く2人の足でばちゃばちゃと地面の水が跳ねる。


あまり急ぐと革靴に水が入りそうだった。


雨脚は段々と静まってきてはいるが、まだ暫く止みそうに無い。




「さっきよりは止んできたけど水溜りが酷いね。」


「うん…環、ちゃんと傘に入って。濡れてるわ。」



背が高い環が傘を持って、紫乃の方に深く傘を傾けている為、環の左肩がシャツが透けそうな程濡れている。


この子はこういう所があるなと思いながら、紫乃は彼女の腕を引っ張った。



「紫乃だって後ろ髪もスカートも濡れちゃってるよ。」


「え、本当?」



腕を後ろに回すと腰まで伸びた黒髪が触れる。


酷く濡れているわけでもなく湿っている程度なので、後でタオルで拭けば問題無いだろうと思った。




「環もスカートの裾が濡れてる。」


「私は入れて貰ってるんだからいいのー。」


「…後でちゃんと拭いてね、風邪引かないでよ。」



紫乃は優しいなあと言いながら笑う環を見て、紫乃も微笑んだ。


お互いのスクールバッグは傘からはみ出ていたが革の素材が水を弾いていた。


幸い、図書館は学校からすぐ近くで、10分も歩かない内に着く。



家に帰るよりはずっと近い。



夕方以降に雨は止む予報だったので、雨宿りも兼ねての勉強会だね等と雑話しながら、図書館への通りを曲がっていった。




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