悪夢の檻

何もかも終わったなんて思うなよ

ここからだ 真の始まりは


傷だらけの醜い顔を白い仮面で隠して

問答無用のチェーンソーを抱えれば

ゆっくりと黒い外套が迫り行く


あの館の前に立つ

生い茂る奇妙な植物たちは沈黙を守っていた


血が異様に冷たくなっている 俺らしくもない

汗ばむ季節なのに吐息が白くなりそうだ



平和な時間はここで終わりだ 二度と光を見ることは誰も叶わない

ここからはお前らの罪と向き合う時間だ 存分にね


脳裏に焼け付いて離れないように

鮮血を撒き散らし 肢体を切り落としてやろう

これが君の選択だ ご満足かい?



シャンデリアの下に並べてやるよ

もはや人の形をしていない肉塊たちを


肉体が滅びようと魂までもを捕獲して

この檻の中で永劫の惨劇を披露しよう


この洋館には十重二十重の呪いがかけてある

どの扉も窓も開きはしないさ

たとえ全員が死んだとしてもね



恨むなら自分を恨むんだな

誰かを道連れにすることくらいどんな屑にだってできるんだ




――そして扉は開け放たれた

突如として黒衣の殺人鬼が闖入する

チェーンソーの轟音が静寂と沈黙を粉々に引き裂いた



おやおやそんなに悲鳴を上げて

血の気が引いた蒼白な顔を晒して

名探偵様はまさか推理してなかったのか?

こんなにも必然の帰結を



後日、退屈なニュースで語られるだろう

非難の声と矮小化された中傷的分析は

俺が映し出した悪夢の実像の証明さ



そんなに俺が怖いのか

今更謝ったってもう遅いさ

今更非難したってもう遅いさ

今更弁明したってもう遅いさ

今更何を語ってももう遅いさ


さあ悲鳴を上げてみろ

泣き叫べ 怒れ 怯えてろ


それだけが俺の快感だ 俺を上昇させる唯一の光だ




俺は誰の命乞いにも耳を貸さずに

ただただ金属の刃を振るい続ける


終焉へと向かって腕(かいな)を振るい続ける

皮膚が裂け、肉片が飛び散り、赤い血が流れ出していた

その地獄絵図を、もう一人の俺がやはり他人事のように見つめていた



この真実の刃の前では皆が演技をやめる

化けの皮が剥がれて裸の心が露呈するんだ


傲慢な人間ほどか弱く 腰を抜かしてただ震えている

もう悲鳴を上げる者すらいないのか?

もう非難する者すらいないのか?


いつもの勢いはどこへ行った?

いつもの自己陶酔はどこへ行った?

正義は勝つんじゃなかったのか?




俺は洋館を真紅に染め上げていく

これは一枚の絶望の絵画


赤がもっと必要だ

この衝動を表すためにはまだ足りないんだ

塗っても塗ってもまだ渇くんだ




奴らに塗られたペンキの赤と

奴らの鮮血の赤が混ざり合って

もう区別なんて付けられやしない




後日、退屈なニュースで語られるだろう

非難の声と矮小化された中傷的分析は

俺が描き出した絵画の鮮烈の証明さ




無論、俺だってもう長くはない

毒が胸を蝕んでいる

命の砂時計はまもなく尽き果てるようだ




真実から目を逸らし続ける限り

自らの罪深さを懺悔しない限り

第二、第三の殺人鬼が続々と現れるだろう

もっと凶悪で強力な存在となってね


人が正義感という麻薬に酔えば酔うほど、殺人鬼は不死身となり

人が悪夢から逃げれば逃げるほど、その檻からは逃れられなくなる

呪縛の鉄鎖は深く複雑に絡みついていく 肉体に浸透し融合していく



殺人鬼は食事をしているときも、眠っているときもお前を狙っているぞ



やがてはお前の心に住むようになる

どこへ行っても何をしていても安全なんてどこにも無い

24時間、チェーンソーの轟音が鳴り止まないんだ

これが君の選択だろう? ご満足かい?



そんなに俺たちが怖いのか

今更謝ったってもう遅いさ

今更非難したってもう遅いさ

今更弁明したってもう遅いさ

今更何を語ってももう遅いさ


さあ悲鳴を上げてみろ

泣き叫べ 怒れ 怯えてろ


それだけが俺の快感だ 俺を上昇させる唯一の光だ

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