第12話 彼の雷は青白い

 

 「わかるか、甲斐くん。俺のこの気持ちが。」

 俺はワンカップをやめて、年下の上司を飲みに誘った。

 「飲みすぎですよ、きくさん。もう水飲んでください。」

 居酒屋なんか久しぶりにきたな。まだ飲み足りん。

 「みちるは、俺の娘なんだよ。でも、俺はみちるの親にはなれないんだよ。」

 みちるを拾ったのは、初任務の帰りだった。当時20歳だった俺はその赤ん坊の為に生きると決めた。

 その日、俺は力不足で、誰一人救えなかった。皆、化物の餌食になってしまったのだ。

 ネフィリムを打ち倒すのに必死で周りを見ていなかった。

 「俺は人殺しだ…。みちるのご両親を、俺は、俺は…!」

 握りしめたグラスがバチバチと音をたてて青白い火花が散る。

 「きくさん。抑えて。」

 「今でも夢に見るんだ。助けを求める手から枯れていくのを、弾き壊してしまったあの瞬間を…。」

 俺は、みちるの両親を殺してしまったのだ。俺の特性能力は統計外の≪拒絶反応≫。

 任意の物質を拒絶する能力だ。物質を劣化させたり、結界のように弾くことができる。

 「化物は、俺だ…。」

 俺の手の平には、グラスの形をしたアルコールが未だに火花を散らしていた。

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