第4話 オーダーも楽じゃない
うちは虹元みちる。コールサインはヘイムダル。由来は北欧神話の門番。詳しく知らないけど、その神サマも耳と眼が良くて歯が金色らしい。これだけ特徴そろうと、もう生まれ変わりなんじゃね?
そんなうちの能力は、正直あんまりいいもんじゃない。
任務中は気をはりつめるから必要ないけど、普段はヘリコプター用の消音ヘッドフォンをしてる。何もなしだと、音を拾いすぎて酔うし、うるさくて敵わない。
あと厚手のマスク。これも必須。臭いで胸を悪くしないように。最悪吐くから。スペックカラーもちょうど隠れるし。
それに市販のものは味がとても濃く感じる。食べれないほどじゃないけど化学調味料の味がする。薬臭い。
なまものはいつも腐りかけの酸っぱ苦さがきわだって苦手だ。よっぽど新鮮じゃないと美味しく食べれない。
でも、この視力は結構気に入ってる。双眼鏡、望遠鏡、可変スコープなんかより、ずっとよく見えるし視野も広いし、星も月もすごくよく見えるし、もちろん手元もよく見える。ドライアイじゃなければ、ほんとに最高。あ、目薬買うの忘れた。
ちゃんと制御できるんだけど、そのあとすごく疲れるのは、うちの訓練不足だ。身体鍛えないとな。しょっちゅう風邪ひくし。
これもうちがオーダーだからだ。赤ちゃんの頃捨てられて、餓死寸前で拾われたらしい。うちの身長が伸びないのもきっとそのせいだ。
今はガーデンの活躍のお陰で、オーダーへの偏見とか人権無視とか少なくなってきたけど、うちが生まれた頃は日本にガーデンが出来てから日が浅くて、似たような境遇の同級生もいる。
あ、パースエイダーが呼んでる。端末使えばいいのに。一応端末から確認するか。
『呼んだ?』
『はい。任務ですよ。』
『了解。今行く。』
やれやれ、任務でろくに勉強も出来やしない。まあ、そんなに本腰いれてないけど。
大人はみんな言う。楽な仕事なんかない。それぞれの苦労がある。なるほど、オーダーも楽じゃない、なんてね。
ヘッドフォンを耳から外し、肩にかけた。頭の中に大量の音が広がる。
集中力を飼い慣らせ、ヘイムダル。
自分の鼓動に耳を澄ます。一気に雑音のひとつひとつが整理されていく。もう雑音などない。すべてクリアに聞こえる。
さあ、任務だ。
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