第3話 霹靂の地雷

 GARDEN関東支部技術局、もとい技術主任の執務室では一組の男女が話していた。 

 「したっけ、いっちょまえに口答えするんだよ。これが反抗期かあって俺、感動したもん。……アーキテクト、聞いてる?」

 名を呼ばれた女性は彼に手のひらを向けて、話を中断させる。

 「今、ひらめきそうなの。」

 相手にされないことを理解した男性は、静かにアーキテクトを待った。

 「それにしても、カミトキは方言治らないわね。ヘイムダルも言ってた、うつるって。」

 アーキテクトは閃きを書き留めて訛りを隠さない霹靂(カミトキ)を笑う。

 「いや、うつるってなんだ。失礼だな、病気じゃあるまいし。」

 不満を唱える霹靂にアーキテクトはヘイムダルの話を振る。

 「でも良かったわね。あの子、名前もコールサインも気に入ってるみたいで。」

 「だべ? めんこいよな~。俺が考えてつけてやったコールサインで呼べってよ。」

 霹靂は嬉しそうに語る。

 「あんまりニヤニヤしてるとロリコンみたいだから止めなさい。」

 「なんでさ?みちるは俺の娘だべや。」

 「血縁ではないでしょ。」

 アーキテクトの言葉に霹靂は声がでなくなる。

 「……でも、でも俺、充分育ての親名乗れるよな?」

 やっと紡いだ声は情けなく震えていた。

 「ちょっと、泣かないで。情けないわね。あなた幾つになったの?」

 「……36。」

 「いい大人が年下に泣かされてんじゃないわよ。」

 「俺さ、ちゃんと面倒みてきたつもりだったんだ。でも、はたから見ればロリコンなんだろうか……。」

 アーキテクトはため息をつく。

 「いいえ、あなたはあの子のよき父親であり兄であり、バディよ。誰が見てもあなたをロリコンとは言わないわ。」

 「だよな。そうだよな……。」

 「全く。少しからかっただけじゃない。ヘイムダルがいないと腑抜けなのも、本当に変わらないわね。」

 アーキテクトは書き留めた閃きを形にするべく設計図を書き重ねる。

 紙と鉛筆が擦れる音だけが部屋に響いた。

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