第10話
「もうアシェル君ったらぁ~今度はあのムキムキ筋肉イケメン君を連れてきたの~?最高ねぇ~あんた」
その声を聴いてカケルは寒気を感じた。普段から上半身裸で生活しているカケルにとって寒気という言葉は宇宙より遠い言葉であったが、今回ばかりは身近に感じた。
「おい、アシェル、こいつはいったい何なんだ……?」
思わずカケルはアシェルに耳打ちした。そうするとアシェルはこう答えた。
「自分がよく行ってるオカマバーのママのリヴェンさんだ。この人なら面倒見がいいから頼み聞いてくれるかなって。実際条件付きで頼み聞いてくれたし。」
「おい、ちょっと待って、その条件って何なんだ!?すごく嫌な予感しかねえんだが!」
「まあ、待てって。そんなに焦ることじゃない。」
焦りを抑えられないカケルを抑えながらアシェルは話を進める。
「ってことでこの少女を今日、しばらくの間預かってほしいんだ。無理か?」
「なーに言ってるの!?こんなムキムキ筋肉イケメン君を目の前にして断るわけがないじゃない!」
「おいちょっと待……」
「よかったよかった。んじゃあこいつとの筋肉頬ずりとで取引成立だ。いいか?」
「おけぴーよ!」
「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいちょっとまって」
思わずカケルが制止する。
「どうしたカケル。なんか不満があるのか?」
「不満しかねえよ!なんで俺がいない間にそんな契約してるんだ!?なんなんだ筋肉頬ずりって!?」
「カケルは筋肉がムッキムキだからその筋肉をぜひリヴェンさんに堪能してもらおうって」
「頭おかしいだろ!死んでも嫌だぞ!そんなこと!大体なんなんだこのオッサン……」
とカケルが『オッサン』というワードを口にすると、
「あぁ!?」
リヴェンから唐突な図太い声が聞こえてきた。
「誰がオッサンだって!?あぁ!?」
そうリヴェンが言うと、アシェルはカケルにこう耳打ちをした。
「おい、カケル!以後絶対リヴェンさんのことを『オッサン』って言わない方がいいぞ!」
「なんでだよ!どう見たってこいつはオッサンだろ!」
「あの人が、どういう人なのかも知らないのか!?」
アシェルはそういうと、
「カケルは『竜の死神』ってやつを知ってるよな?」
「おう、当然知ってるぜ。」
「この人がその元『竜の死神』だった奴だぞ!」
そうアシェルが言うとカケルは目が点になった。
「おいおい、ちょっと待て、『竜の死神』って、あの二年前に行方をくらましたっていう有名な殺し屋じゃねえか!?なんでそんな奴がこんなところでオカマバーなんてやってるんだ!?」
「それはまだ本人が話そうとしてないからわからないが、実際に前に腕も見せてもらったらちゃんと竜と十字架のマークが彫られていたんだ。本人の言う通り、あの人は『竜の死神』だよ。ここ周辺のバーの通りの元締めを担ってるって言ってるし敵にしたら絶対にかなわない相手だぞ。ここは敵にするより絶対に味方にした方がいい。だからお前はあいつに筋肉頬ずりされるだけで少しでもあの大金につながると思えば……」
そうアシェルが熱弁すると、カケルは呆れた顔を隠しながらリヴェンに向かって
「しょーがねぇなー。筋肉を触るのはタダじゃねえんだぞぉ。ちゃんとあのガキを預かってくれるんだよなぁ?」
そういってリヴェンの顔に自分のシックスパックを近づけた。
「当然よぉ~こんな筋肉見せられたらアタシ何でも言うこと聞いちゃうわぁ~」
そういってカケルのおなか周りをがっしりつかんで、筋肉を堪能した。その時、すでにカケルの顔はアシエルに向かっており、何者でもいいから助けてほしいという顔をしていた。
アシェルは無視をした。
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