狩り

@hiro7342

第1話

日:キリがいいし日記つけるわ


月:福引があたって商品券げっと。(1000円)

日記を書き始めたのがよかったのかもしれない。今度なんか買おう。


火:分からなさすぎてテキトーに解いたテストがそこそこ良い成績だった。

マジでついてる、やばい。日記ありがとう。


水:財布の紐を握って振り回してたら、排水路に財布を落とした。穴は小さく、蓋みたいなのが取れなくて、結局回収できなかった。

商品券入れっぱなしだったのに……。


木:帰りに新しい財布を買いに行った。灰色のやつ。お古があったがボロボロすぎて使い物にならなかった。

その帰りに珍しい人形が落ちてた。なんだっけ、日本人形って言うんだっけ。

赤い着物で髪が長くて、肌が白かった。

誰の落とし物だろう。


金:なんとなくアレが気になったので、落ちてた場所に行ってみた。

もう人形はそこになかった。きっと持ち主が拾いに来たんだろう。あんなの自分のにしようなんて物好きはなかなかいないだろう。

あと、家の庭にアサガオが咲いていた。ダチ……なんとかって名前だったな。ティッシュみたいにふにゃふにゃしてた。

それをほんのちょっぴり濾したやつを飲まされた。ものっそい好みじゃない。

健康にはいいらしいので、毎日飲んでみようよ、とのこと。

めちゃくちゃ飲みたくないが、うちの親、断ると面倒なことになるしな……。


土:今日は台風が来るそうだが、今のところその様子はない。雲1つ見当たらない。明日来るのかな。

できれば朝一に来て欲しい。


日:台風が来た。

部屋の天井が雨漏りした。

汚れてたのか若干垂れる水が赤い。

その調子で壊れないかが少し心配だ。なんて言いつつこの部屋で寝るんだが。


月:台風は過ぎていた。今日は普通に学校があった。

正門の近くにあった大きな木が倒れていた。台風のせいだろう。


雨漏りした水はバケツいっぱいに溜まってて、赤くて少し気持ち悪かった。土曜日あたりに掃除したいと思う。


火:正門で写真撮ってる人がいて、不思議に思って近寄ったら、倒木のそばに日本人形があった。この前見たのとは違うと思いたいけど、日記を見る限りよく似ている。

日記つけててよかった。

無視したがあれからどうなったのだろう。

……あと、微妙に頭が痛い。


金:俺の机の中にあった。

ビビリちらして思わず外に投げてしまった。

明日が休みで本当によかった。休みたい。更に頭が痛くなってきた。


土:玄関のドア開けたとこにあった。

迷わず蹴っ飛ばした。この時こちらを見ていた気がする。

急いで新聞を回収して閉めた。

今日はずっと家の中にいた。


日:誰かに見られている気がしてならない。

窓の外を見ても特に何もないが、玄関に人形はずっと置いてあった。道路までふっ飛ばしたはずなのだが……気を効かせて誰かが戻したのだろうか。余計なことを。

家族は誰も気づいてないらしい。連れて行って指をさしても、何馬鹿なこと言ってんだで終わってしまう。

……何だか汚れている気がするのは気のせいだろうか?

いや、よく考えれば、汚れているのが自然だろう。蹴っ飛ばしたりもしてるし。


月:交番まで頑張って人形を持っていった。

幻聴が聞こえる。


火:寒気がする。

廊下に人形が落ちていた。肌にヒビが入っていた。

外に急いでぶん投げた。


水:ゾクゾクする。たのしい。いたみも引いてきた。

だんだんクセになってきた。

着物がボロぞうきんみたいにきたなくなっていた。


金:ついたのしくなってがっこうでわらってしまった。

ほんとにさいこうのきぶんだ。

まどをみればあの子がみている。


ど:あかいあかい。めがいたい。

からだがべとべとだ。へんなにおいもする。

まあたのしいからいいや。


にち:あのこがいえにやってきた。

とてもかわいそうだった。

おふろにいれてみた。


げつ:かわいい。かわいい。かわいい。かわいい。

そとがうるさい。

だまらせた。べとべとだ。




たいへん。よごれおちない。

すっきりしな

けどべ


(このページは破かれており、一部しか文字が判読できない。また、全体的に生臭い匂いが染み付いている)

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