第11話 焼きごて、エスクラーボ

 ガスパール・フェルナンデス、ミゲル・ジェロニモ、ヴェントーラ、トメ・バルデス、マリア・ペレイラ、フランシスカ・モンテイラ、モロ・ジョアン、セニョーラ・アマリサゥン、ジョアン、ギルマール、アグエダ、マリアーナ、マリアーナ・ナバーロ。


 どこの国の名前だと思いますか? なんか南米のサッカー選手の名前みたいですが、みんな日本人の名前です。大半は日本人奴隷の名前ですね。エスクラーボというのはポルトガル語やスペイン語で『奴隷』の意味です。


 16世紀の日本と言えば、みんな大好き戦国時代です。戦国時代は、世界的には大航海時代ですね。日本にもスペインやポルトガル、オランダの船がたくさんやってきました。その中で、外国に奴隷として売られてしまった日本人奴隷たちがたくさんいました。


 「だから、ヨーロッパって侵略的だよねー」と思ってしまいそうですが、事はそう単純ではありません。

 だってヨーロッパ人に奴隷を売っていたのは日本人なんですから。


 戦国時代の日本では、いくさの最中に「乱妨取り」といって敵の財産や人間をさらって売っぱらうのが当たり前でした。

 今では郷土の英雄になっている武田信玄や上杉謙信も奴隷狩りの親玉としての一面も持っていたのです。

 特に戦国時代の日本は天候不順で、旱ばつや冷害が多く、どこの地域でも極端な不作でした。人々は文字通り、飢えをしのぐために隣国を襲っていたのです。


 特に海外に売られたのが九州の日本人です。島津軍と大友軍の戦争ではたくさんの乱取りの被害者が出て、それをポルトガルの船が大量に買い付けていました。


 みなさん、ヤスケという黒人の侍の話を聞いた事があるでしょう。彼もモザンビークで宣教師に買われた奴隷ではないか、という説が有力です。


 買い付けられた日本人奴隷たちは、教会に連れて行かれ洗礼を受けさせられると、キリスト教徒ふうの名前を付けられました。中にはあごほほに焼印を入れられている奴隷もいました。

 もとの名前は一部を除いて分かりません。


 こういうのを歴史のロマン、と言っていいのでしょうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る