白い影③
「身長はクルノよりちょっと高いぐらいだけど、薄茶のローブとフードのせいで男か女かも分からない」
「念の為、食べ終わったら撒くか」
「早く行った方が……俺の白雨やルーナクの春雨みたいな力を持ってたらどうするんだ」
前を向いて食べながら、リースが言う。食べる様子はクルノとは違って動きがぎこちなく、わざとらしい。
「ま、仕掛けるならもっと人気の無い所のはず、まだ無視でいいさ」
クルノがいいながら、最後の一口を口の中に放り込む。リースは少し考えた後、米をかきこんだ。
クルノ達は立ち上がり、自然な足取りで屋台街へと向かう。
「奴は動いた?」
心配そうにリースが聞いた。よく考えれば、白雨は少し目立つ。これを隠すものが必要だなとクルノは思った。
「大丈夫。念の為このまま撒いて集合場所に向かうぞ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一通り屋台街を通り、住宅街の中にある集合場所の集会所に着いた。古びた木造の建物で、この地区に住む者が使う建物だ。
指定された部屋の扉を開けると、一斉に屈強な男達の視線がクルノ達に突き刺さった。時間には少し早い時間だが、もう殆どの人数が揃っていたようだ。
クルノが辺りを見回すと、会議室の前面に何処か建物の地図が張られ、その横に会長――ユグライが堂々たる風格で座っていた。商会私兵達と比べても、その凄まじい肉体は群を抜いている。
クルノがどこにいけばいいのかと迷っていると、ノアはクルノの耳元に近づき、
「あの会長、何食べたらあんな身体になるんだろうな」
至って真剣な眼差しで言った。
「誰かに聞こえたらどうするんだ」
思わずクルノは肘打ちでノアを黙らせる。
クルノは近くにいた私兵に軽く会釈すると、私兵は鋭い目でクルノを睨む。聞こえていたのか、他の理由か、クルノには分からなかったが、無視して奥へと進み、会議室の後ろの壁にもたれかかる。ノアとリースもそれに続いた。
「ふむ、これで全員揃ったようだな。では少し早いが、作戦会議を始める。知っている者も居るだろうが、今回の討伐対象であるバビル一味は不可解な点が多い。よって今回は私達だけで行わずラルシュレイ相談所から傭兵を雇って共に行動する」
ユグライが立ち上がり、今回の作戦の説明が始まった。ユグライが傭兵を雇うと言った瞬間、私兵達がざわめきだすが、ユグライが手を上げると、何事も無かったように場内が静かになる。
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