白い影②

☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 アルムハイド国の中心である王都や、他国との国境、国の最大産業の一つの鉱山を結ぶ交易の中心地、それがレストと言う町である。

 町の性質上様々な人間が出入りする為トラブルも多く、王都から派遣される兵士や自治体が雇った傭兵等が町の至る所で目を光らせており、騒がしい雰囲気と裏腹に、何処か息が詰まる。

 クルノ達はまず三人素泊まり出来る安宿を借り、荷物を降ろした。

 ここから数日、ここでこの宿で待機し、ドグネル商会からの連絡を待つ。それまでは夜の定期会以外は自由の時間だ。

 クルノ達はまず、レスト名物の屋台街へと向かった。


「……ここはいつ来ても人が多いな」


 到着するやクルノが少し不満そうに人ごみを睨む。


「ま、人混みが嫌いなクルノには悪いけど、人を隠すなら人の中ってことで。ここならリースも簡単には見つからない。今回はここに決まり」

「今回? いつもここに来るくせに」


 クルノに指摘され、ノアはごまかすように笑った。

 交易の盛んな町なだけあり、屋台街には様々な種類の出店があり、その場で食べられるテーブルの上でも、様々な職種の人間が言葉を交わす。この町最大のコミュニティが形成される場所だ。

 クルノ達はごった返す人の波の合間を縫って、今晩の食事をする店を探す。人混みのせいで少し屋台に意識を持っていかれるとはぐれそうになる。

 値段と量のバランスを考えて料理を選び、すぐに座れるところは無かったので、三人は少し離れにあるテーブルに着いた。ノアが先に座り、対面にクルノとリースが座る。ノアは一足先に熱々の肉を齧って、満足そうに微笑んだ。


「今日の定例会で、メンバーの顔合わせがあって、細かい作戦を決める事になっている。一応、向こうの推定人数が二十人程で、こちらがその倍の四十人近くいる。実力も、王都ギルドのAランクからBランクレベルばかりだ。これなら、ただの盗賊団なら大した仕事じゃない」


 挽肉を生地で包んで揚げたパリパリの名物料理を齧りながら、クルノが淡々と説明する。ノアは話半分と言った様子で、肉を齧っていた。


「前に返り討ちあったって傭兵団は? どれぐらいの戦力なんだ?」


 リースが野菜と米を煮込み、スパイスで味付けされた身体温まる料理を書き込みながら言う。


「Bランク多数で少し戦力は劣ってるけど、どっちにしろ普通の盗賊団ならBランクで十分のはず。十分考えていかないとこっちも痛手を負う」

「ま、定例会次第でしょ、それより後ろの通路にいる奴、ずっとこっち見てるけど昼の奴と関係あると思う?」


 いつの間にか肉を食べ終えたリースがなんでもないことのように言った。クルノは当然の事の様に聞いたが、リースが反射的に振り向こうとしてしまったのをクルノが叩くように止める。後ろの人影にはじゃれあっているだけに見えたはずだ。


「ノアしか見れないのに、俺に聞かれても困る」


 クルノが何事も無かったかのように食事を続けながら悪態をついた。

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