断罪の天使⑤
「……殺すのか?」
「あんなヤバい奴らに手加減なんて出来ない。それに、相手も話し合いをする気はない」
リースは黙り込んだ。出来るだけ早く自分が何者なのか知りたかったのだろうが、状況はそれを許さない。ここで死んだら意味は無いのだ。
頭上を影が通り過ぎて、クルノ達は急停止し、後ろから詰まってきたリースとノアを横に突き飛ばした。その瞬間、頭上から暴風が吹き付けられる。
吹き付けられた暴風にクルノは仰け反る。幸い狙いが甘かったおかげで大した怪我をする事はなかった。
「クソッ、アイツ空も飛べるのかよ!」
辺りを舞い散る木の葉にまぎれて、ルーナクは上空から一直線に急降下してくるのが見えた。クルノは迎撃を諦め、木陰に飛び込む。先ほどまでクルノのいた場所が砂埃を巻き上げ、大地が揺れる。
「ルーナクの攻撃を二回も避けるなんてやるじゃねぇか? 傭兵!」
葉吹雪と土埃の先で、小さな人影がぬらりと立ち上がり、無表情でクルノを見つめていた。
その隙を突いて、背後から音もなくノアの二本の剣が襲い掛かる。ただの人間なら、視界の悪いこの状況で、避けるのは困難だ。
しかし、ルーナクは体を空中で回転させ、ノアの剣と剣の僅かな隙間に身体を滑り込ませて避ける。
人類の枠を超えた動きにノアは驚愕するが、すぐに自分を取り戻し、空中で身体を捻りながら放たれた反撃の春雨をノアは首を捻って間一髪で躱す。背後で暴風が巻き起こり、森の木々が悲鳴を上げた。
至近距離まで接近してしまえば、春雨の力はそこまで脅威ではない。ノアは今の一撃でそのことに気づいたようで、距離を開けられないようにひたすら前へ前へと消耗を気にせずルーナクを肉薄し続ける。
「最ッ高だぜお前ら! ルーナクがここまで手こずったのはお前らが始めてだ!」
ノアの嵐のような剣技をルーナクはひたすら避け、弾き返す。その間も、仮面のように一切表情は変わらず、息を乱している様子もなかった。
クルノが援護に飛び出そうとした所を、リースに腕を掴まれて阻まれた。クルノは苛立ちと共に振り返る。
「オレが囮になる。だからその間に二人で逃げてくれ」
「却下。リース一人で俺達が逃げられる時間は稼げない。そんな事言ってる暇があるなら、あいつの春雨みたいな必殺技でもここで思い出してくれ」
クルノはリースの手を振り払って、飛び出す。
ルーナクの攻撃に全く反応できなかったリースが、この戦いに混ざっても邪魔にしかならない。
クルノはルーナクの背後から飛び掛る。ノアの嵐の様な二刀流に、クルノの神速の槍が加わり、ルーナクも避けられなくなっていく。
お互いの攻撃の避ける先を狙い、徐々にルーナクを追い詰めていく。それでも人形のようなルーナクの表情は変わらない。
ノアの剣を避け、宙に浮いた所を狙ったクルノの短槍がついに身を翻したルーナクの左肩を捕らえた。
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