断罪の天使③
リースが刀を手に取ると、刀全体が淡く輝き、リース全体を包み込む。
あの夜地面に散らばっていた光と同じような色だ。
リースがそのまま刀を抜き、刀を振る。
「凄いぞリース。切れ味は? 切れ味は?」
「刀身が薄いから試し切りしたら折れるぞ」
ノアが感嘆の声を上げる。クルノも未知の光に驚きを隠せなかったが、一応止めに入る。
「大丈夫、この刀ならやれる」
リースの目が今だかつてない自信に満ち溢れた目で言った。
試し切りに選んだ木は、近くにあった大人が両手を回して手が届くかどうかと言った太さで、単純な刃物ならどうやっても斬れないはずだ。
黙って、二人は見守る。
「白雨――世を切り裂く、一瞬の光」
リースがぼそりと呟き、袈裟切りを放った。淡い光を纏った刀が、宙に剣筋の軌跡を残す。次の瞬間、まるで豆腐を斬る様に大木が真っ二つになり、最期の断末魔のような音を立てて倒れた。
リースは刀を鞘に収める。すると、リースを包んでいた淡い光はスッと消える。
今までの常識を覆す切れ味に二人は開いた口が塞がらなかった。
「クルノ、少しだけ思い出したんだ。俺は戦える。この白雨を使って、色んな魔物を退治してきた」
リースは一言一言自分の言葉を確認言った。その表情はまだ明るいとは言い難いが、少し迷いは薄れていた。
「いやっ、凄いぞリース! ちょっとそれ貸してくれ!」
クルノが何か言う前に、興奮したノアがリースの白雨を手に取って近くの木に切りかかるが、全く切れなかった。
しばらく不思議そうに何度も木に白雨で斬ろうとしたが、やがて飽きて白雨を返した。
「その刀の力は? 魔術式が刻まれている様子もなかったし、どういう力だ?」
「そこまでは分からない……」
クルノが難しい顔をした。魔術式と呼ばれる、物に魔術の力を宿す技術の研究がされている事は小耳に挟んだ事があるが、普通の魔術でさえ成功が難しいゆえに、この技術は全く成功例がないと聞く。
「まぁ、考えても分からない事は気にしないのが一番。もう役に立ちそうな物もなさそうだし、早く馬車に戻ろうぜ」
ノアの切り替えは早く、もう馬車に戻る気満々だった。確かに、ここにもう用は無い。
一同は街道に向かってまっすぐ歩き始めた。
大木を一薙ぎで切り倒す謎の白い刀と頑丈な体、これからのドグネル商会の仕事で大いに役に立つ筈だ。不明な点も多く残るが、思わぬ拾い物をしたとクルノは満足げだった。
これなら、しばらくはラルシュレイ相談所に居てもらってもいいかもしれない。
そう思っていた矢先、街道に異様な雰囲気の一人の人影を見つけた。
緑色の髪二くらい金色の目をした、男とも女ともとれる中性的な小さな子だ。年は七八位だろうか、ぶかぶかの真っ白なローブを羽織っているが、左右の長さが違う赤色のブーツが異様に目立ってた。
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