第二章 信じた希望との死別
断罪の天使①
ガタンと、車輪が石を跳ね上げる。
今度は自分達でレンタルした馬車で、もう一度レストへの道を走っていた。
国境近くの街道でもあるまいし、二度襲われる事は無いだろうが、一応全員武装はしっかりと装備している。
クルノがチラリと二人の様子を見ると、ノアは一昨日と同じように座席でだらけて座っており、反対にリースは真剣な表情で失った記憶を取り戻そうと唸っていた。
「あっそういえば」
ノアが突然声を上げる。予想外の所から声が上がって、クルノは若干仰け反った。
「時間的に余裕もあるし、旅砦寄って行こう。あの時散らばってた荷物を見たらなにか思い出すかもしれないぞ」
それを聞いてクルノも謎の光の玉と一緒に物が少し散乱していた事を思い出した。
あの時は、辺りも暗くなり始めていたので全部置いてきたが、拾いにいく価値は十分ある。
「よし、そうしよう。まだ日も経ってないし、ほぼそのまま残っているはずだ」
「いいのか?」
リースが心配そうに聞き返す。
「そりゃ、少しでも早く思い出したいだろ?」
ノアがそれに対して爽やかに笑って返し、馬車の御者に伝えにいく。
クルノが馬車の窓から外を見る。旅砦はもうすぐそこまで来ていた。今度は遠目で兵士を確認できた。
馬車が緩やかにスピードを落として行く。
「さて、降りるか」
三人の傭兵は馬車を降りた。
旅砦に駐屯する兵士はこちらから語り掛けなければ基本的にはなにも言ってこない。
「ここ数日魔物の情報はありますか?」
クルノは見張りの一人に聞く。一昨日の兵士の失踪については恐らく何も言わないだろうが、魔物の出現情報ぐらいなら教えてくれるだろう。
「ここ最近はあまり良くないな。二日前この先でオーガの死体が発見された。見回りは済んでいるが、最近は特に魔物の出現情報が多いから気をつけな」
難しい顔で兵士は教えてくれた。
発見されたオーガは、恐らくクルノ達が倒したものだろう。
王都に近いこの辺りの旅砦の兵士は少しの魔物情報で大騒ぎする傾向にある。あれから魔物は出ていないだろう。
クルノは兵士に礼を言って、リースが倒れていた場所に向かって歩き出す。御者に話を付けたノアが遅れてやってきた。
「油断禁物ってね。魔物はなんにも無い所から突然沸いてくるっていうからな」
はたから見たら一番気を抜けているように見えるノアがリースに忠告する。
言われて、リースはないよりマシと思って持ってきた木刀に手を掛けて周りを警戒し始める。
「本当に何も無い所からはでないけどな、魔王や、魔族が魔力で作り出すんだよ」
視線を前に向けたままクルノが訂正する。
続けて、魔力によって生まれ自我を持たない者を魔物。闇に属する存在を魔族と呼ぶ、と付け足した。
「ま、その辺の強い奴らはこんな所来ないって、もし来てたら、戦争の始まりだ」
ノアは頭の後ろで手を組みながら、何気ない事のように話した。
「……なんか、すまん」
「何謝ってるんだよ」
ノアがリースの背中を叩く。リースも、何故かあまり分かってない様だった。
「大体この辺だな」
クルノが振り返り、旅砦からの距離を目測する。
リースの倒れていた茂みに到着した。
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