忘れてしまったモノ②
街道の小脇、薄暗くなった林の中で微かな光の中心に血塗れの少年が倒れている。
乱れた金髪に、血まみれになっているがゆったりとした布を纏った様な服装をしている。どちらも、アルムハイド王国ではあまり見ることが出来ない特徴だ。
少年は浅いとは言え斬られていない所を探す事が難しい程全身ズタズタにされている。その上に脇腹が深々と抉れていて、こちらは焦げたような臭いがしている。
コレだけの傷を負いながら、まだ息があった。
少年の物と思われる散らばった荷物が、ここで何かと遭遇し襲われた証の様に見えた。
「うわぁ……。また新種の魔物かも知れないぞ」
いままで見たこと無いような人の無残な姿に、ノアがドン引きしながらクルノの方を見る。
クルノもちょっと引いていた。
彼は異国の旅人だったのだろうか。もうすぐ旅砦だと言うのに凶悪な魔物に遭遇してしまったのは不運だったとした言いようが無い。
「早くここを離れよう。まだ傷は新しいから、コレをやった奴がまだ近くにいるかもしれない」
「この人は?」
「……助かる見込みは薄いけど、見捨てるわけにもいかない」
「りょーかい。さすがクルノ分かってる」
そういいながらすぐにノアはその辺の木の枝を剣で切り落とし、担架を作るのに丁度いい様に葉を払っていく。
クルノはポーチからロープを取り出し、ノアから投げ渡された枝にロープを張り巡らせていく。簡易的ですぐ壊れそうな担架だが、すぐそこまで運ぶ分にはなんとかなりそうな仕上がりになった。
担架に乗せる時、少年は苦痛に顔を歪める。普通ならもう死んでいるか、意識が無い程の重症だ。驚くべき生命力と精神力である。
担架を担ぎながら、クルノは思いだす。そういえば、旅砦の灯りは点いていただろうか? 旅砦から近いこの場所で戦闘があった事に兵士は気づかなかったのだろうか?
もし、この辺りで何かが起こっているとしたら、それに巻き込まれることになったとしたら? 悪い考えがクルノの頭から離れない。
クルノは担架の持ち手を握り直し、慎重に旅砦と向かった。
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