第6話 異世界の人
うーん、きょろきょろ。
声はすれど、姿は見えず。でも、明らかに切羽詰まった声が聞こえる。
どどどど どっどどど
響く足音に、豆の様な影・・・。
あれが、そうかな?
だんだん近づいて、さらに近づいて・・・。うん、いのししの様な生き物がこちらへと走って来ています。このまま行くと、私の所に来そうです。
どーんん! どすーん! どんーん! どすん!!
ちょっと待って!! きゃー!! なんなのよこの大きさ!?
ありえないでしょ?!
さっきまでの自分に物申す。何呑気にしてたんだよ!
いっいけない、つい男になっている。ここは、可憐に気絶?
じゃなくて、にっ逃げなきゃ!!
いのししもどきの大きさ、ただいま牛サイズを超えました。でも、近づくにつれてまぁーだまあ~だ大きくなります。
「そこの人、逃げてー!!」
「はやく よけろ!!」
「逃げるんだー!!!」
「なんで人がいるのよーーーーー!!」
大きないのししもどきの後ろに人らしき人がいて、何やら叫んでいますが、足が固まって動きません。えーん
どんどん どんどん 近づいてクローズアップ。
泣いちゃうんだから。 泣いちゃうんだから。
きゃーー!! だめぇーーーーー!!
「こんな、か弱い女gの子を恐がらせるなんて、いけないんだからーーーー!」
気が付けば、目の前にあるいのししもどきの二つの牙をがっしと、両手で掴み背負い投げ・・・・・・・・・・・。いのししもどきの走って来た勢いもあって、綺麗に決まりました。
どーーーーーーーすーーーーーん!! ぼきっーーーーー!
舞い上がる砂とともに、響き渡る不吉な音。
えっ? あれれ? 私、何を何をしたのかしら。
きゃっ! もじもじ
自分の両手といのししもどきを交互に見つめてみても、やったことの現実は目の前にがんとしてあって変わりようもないのです。
あはは、なんかやっちゃいました。
以前でもこんなに力なんてなかったのに、これはいかがなものでしょうか。
女の子が怪力なんて、恥ずかしいだけでなく、恋人ができないじゃないですか・・・。しくしく
はあ はぁ はぁ
「君大丈夫だったかい?」
「すごいな。1人で倒すなんて何かの魔法かい?」
「はぁ。怪我はない・・・?」
「ところで君、可愛いね」
いのししもどきの後ろにいた人たちのようです。
1人、物凄く気持ちの悪い人がいます。誰とは言わないですが最後の金髪です。
でも、最初に声を掛けてくれた男性は、なんと私のハートにドッストライクでした。2メートル級のがっしりした体格、素晴らしい筋肉、たわわな御髭のクマの耳をした獣人でした。物凄く重そうな盾を軽々と持ち走って来る姿は、たいそう光輝に溢れていて眩しゅうございました。くらくら💫
後は、魔法使いの女の人と、よく分かんない男の人の4人なので、冒険者のチームでしょうか?
「君、服装は変だけど可愛いね。僕と付き合わない?」
えいやっと! ぽーーーん
気色の悪い金髪が、私の手を握ろうとしたので、自衛手段を取らせていただきました。
一生地面に顔を埋めてなさいってね。
「すまない。こんなのでも、そんなに悪い奴ではないんだ」
なんて優しいのでしょう。クマさんは見た目通り良い人のようです。
「いえいえ、十分悪い奴です。こんなに可愛いくて似合っているのに、変な服とは、沈められてもしょうがない発言です」
魔法使いの女の人がいつの間にか抱きついていて、頭をなでなでしています。
でも、なんだかいい気分です。今までの切なさを癒してくれているような感じです。
「ちょっと、サアラ。また抱きつき癖が出てるよ」
「いいじゃない、可愛いものに抱きつくと癒されるのよ」
「それ、解ります。可愛いは、すべてです」
私が力説すると、彼女も両手を握って頷きます。
やりましたよ、女神様。ゴスロリ友達をゲットです!
嬉しくて、今度は私から抱きついてGyuーです。
「げっ! もしかして、君もユリなのかよ」
ユリ? なんのことでしょう。
「ユリなら僕が振られてもしょうがないね。だから、許してあげるさ」
気持ち悪い金髪野郎が、勝手なことをのたまっています。許せませんですなー。もう一度地面に埋めましょう。
ぼすっ!
ところで、ユリってなんでしょう?
「それより、このイノブタどうします?」
黒髪の普通の男の人が、死体をつんつんしながら聞いてきました。
「まず、自己紹介が必要だろう?」
クマさんが、今一番しないといけないことを提案してくれました。
そう、私はあなたの名前が知りたいです。
「まずおれからしよう。チーム『命の輝き』のリーダー、ダイアン・デスクだ。よろしく」
ほー、やっぱりリーダーなんですね。さらに惚れてしまいます。
「次は、私ね。魔法使いのサアラ・カレッジ。女だけど、女の子が大好きなのあなた恋人になって」
えーーー!? もしかして、ユリってそういうこと?
「ごめんなさい」
速攻でお断りします。
「やっぱりね。そんな気はしていたの。でも、お友達にはなってくれる?」
彼女の方が年上だと思うけれど、うるうると下から見上げるように言われると・・・・・・・・。
「と・ともだちなら・・・」
「騙されちゃだめだよ。それが、彼女の手なんだから。それよりも、ユリでないならこの僕、ガイ・ハートとどうだい」
はい、地面と付き合って下さい。
ボスン!
「ははは、君なかなかやるね。俺は、斥候のヒャト・アンライだ。よろしく」
「私は、イリーナといいます。こちらこそよろしくお願いします」
「おや? 家名は無いのかい? その恰好からいって、貴族か一般の人より裕福な家の者と見えるけど?」
ヒャト・アンライ、鋭すぎます。この世界の人が、大体どの位のレベルか分かりませんが、私の着ている服は、女神様特注のものです。
皆家名があるということは、貴族かそれに準じるレベルといえます。そんな彼らの服装からいっても、私のこの服はかなり上等なものでしょう。
いったいどうやって誤魔化しましょう。
「ヒャト、人にはそれぞれいろんな事情というものがあるのだ。そう、尋ねていいものではない。イリーナ、別に理由を無理にいう必要はないからな」
ああ、ダイアン・デスク様はなんて優しいのでしょう。困ってる私の為に直ぐに救いの手を差し出してくれる・・・・。
「はい、ありがとうございます。ダイアン様」
「様なんていらない。普通に呼び捨てにしてくれ。それと話は変わるが、このイノブタを我々に譲ってもらえないだろうか? もちろん、お礼はさせてもらう」
「いいですよ。ただ私の方からもお願いがあります。実は私、迷子でして・・・。近くの町まで、案内をしていただけたらありがたいのですが、駄目でしょうか?」
くねくね もじもじ
「それぐらい、お安い御用だ」
こうして、私は町までの素敵なナビゲータを手に入れました。
これから町までの間に、しっかりとアプローチすることにしましょう💕
私は、女の子です トチイ 青 @usagiao
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