第5話 異世界です(スキル)

 私は異世界一周旅行を空想していた。空想事態は十分乙女的だったけれど、はたから見て、その姿は握りこぶしを作り男らしかった。稲垣龍二(いながきりゅうじ)だった頃、男らしくと行動に気を付けていた影響でしょう。


 その間に、ギザンの手によってお皿は下げられ、机はピカピカになりましたとさ。


 「イリーナ様、食後のお茶はいかがですか?」


 ギザンが控えめに問う声で我に返りました。


 はっと現実に戻った私は、自分のとった行動を思い出し、恥ずかしくて俯きます。


 「はい・ください」


 羞恥で声が震えますぅ~。くすん

 今の私は女の子なのに何してるのよ。もう、男らしい恰好とか動作とか気にしないで思う存分女の子的な行動が出来るというのに、私のばかばか!


 「畏まりました」


 ギザンがさっとコップにお茶を注ぐ。執事だから、見ないふりをしてくれているのかな?


 「ありがとう」


 「はい。ところでイリーナ様、本日のご予定はいかが致しましょう」


 「えっと。もう少しゆっくりしたら、いろいろ試したいことがあるので出かけます。あっ。私が出かける時ギザンはどうするのかな? 『家』に残る方がいいの? それとも一緒に? 」


 「私、物語ウサギ族は、とても珍しい一族です。見つかると襲われる可能性が高いので、できれば『家』でお帰りをお待ちいたしたいかと存じます」


 「そっか。わかった。ところで、『家』を倉庫に収納してもギザンは大丈夫なの?」


 「心配ご無用です。そこのところは、女神様からスキルを頂いております。もう少しすれば、変装スキルも女神様から頂けることとなっておりますので、そうすれば、一緒に出掛けることも可能となります」


 へ????なんで、変装スキルをすぐ貰えなかったのかな?


 「ふふふ、疑問に思われているようですね。理由は簡単です。われわれ物語ウサギ族と変装スキルの相性が最悪なのです。そのままでは、スキルを身に付けることができないので、今体質改善のようなものを飲んで変装スキルが身に付けられるようにしているところなのです」


 「えっ! それって大丈夫なの!?」


 「はい。女神様印の薬ですので、副作用も何もありません」


 よかったです。でも、スキルって相性があるのですね。


 そうそう、お茶を飲みながら『スキルについて』を見てみましょうか。


 どれどれ。


 『スキルについて


  スキルは基本的に、技術の熟練度によって発生します。

  才能によっては、数度で身に付く者もいれば、どんなに頑張っても決して身

  に付くことの無い者もいます。

  まれに、神様の祝福として生まれつき備わっている者もいます。


  ・体術

  ・武術

  ・解析

  ・売買

  ・飼育

  ・呪術

  ・魔法

  ・魅了

  ・使役

  ・智        等

   全部で88あるとされています』


  うーん、なるほどね。スキルって多いんだ。だからかな? あまり詳しい説明はないね。あったとしても、見るの大変そうだから、しょうがない追々試してみよう。


 お茶も丁度飲み終わったし、ぼちぼち出かけてみましょう。


 「ギザン。そろそろ出かけようと思うから後よろしくね」


 「はい、畏まりました。ところで、お忘れものなどありませんでしょうか?」


 うーん、あったかな? 


 や・やべえー!! 肝心の持ち物チェックが終わっていなかった。

 あら嫌だ。また、癖がでちゃった。切り替えが意外と難しいわ。


 「ありがとギザン。持ち物チェックを忘れてたよ」


 えっと、空間魔法の倉庫で、頭の中で思い浮かべればよかったよね・・・。


 持ち物リストを思い浮かべてぇ・・・・・・・・・。あっ! 魔法のステッキというのがある。男なら剣もいいけど、女の子で魔法といえば魔法ステッキ。


 某アニメの主人公が持っている魔法のステッキの玩具が発売された時、すーごく欲しかったんだけど、言える雰囲気でもなくてなくなく諦めた。


 女神様、ありがとう!


 思い浮かべて出てきた魔法のステッキは、某アニメの様な可愛い物で、先端は太陽のような形で、真ん中に赤い宝石で、その回りに水色・金・青・赤・緑・茶・白の色の8ミリの大きさの宝石がくるくる回っていて、柄のところの上に白い羽がついている。

 

 柄を握った時に頭に流れてきた取り扱いには、呪文を唱えながら願えば、一日一回なんでも願いが叶うという物凄くチートなものだった。


 私は、魔法のステッキを一度収めて、他の物も一通り確認してから、改めてギザンに「いってきます」と言って『家』を出た。


 当然、見渡す限りの草原。『家』を収め、どっち進むか悩んで悩んで、へたり込んだ。


 その時、どこからか人の叫び声が聞こえてきた。


 私は慌てて辺りを見渡した。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る