小さな物語

ナイトウォーク

鳴いている

夏休みの真っ最中、蝉は元気よく鳴いている。

「ミーンミンミンミーン♪」

と楽しそうに聞こえるのは私だけだろうか。

外に出ると暑くてたまらない。だから部屋に閉じこもっている。

冷房の効いた部屋で一人、本を読みながら休日を過ごす。

しかし外に出なくてはいけない時がやってくる。


『お腹が空いた・・・。』


朝から何も食べていなかった。

コンビニエンスストアは便利だか、ウチからはショッピングモール

の方が近い。ピザの配達を頼むよりもさっさと行って買ってきた方が

早く済む。このまま過ごしていると、空腹もマヒしてきて、

一度はおさまるが、しばらくすると大きな音が鳴る。

『ぐううぅぅぅうう~っ』

腹のムシが鳴いている。身体は正直なのだ。

いくらお腹が空いて食料調達に行く気力がなくても

カラダが無意識に動き出す。

『お腹が空いているのだ。食料が必要なのだ』

とカラダが求めている。

支度をして外へ出る。、、、あっ暑い(-_-;)

食欲が一番にあって、大切なことを忘れていた。

外は炎天下36.5℃。


体温と変わらないじゃないか(-"-;A ...アセアセ。


さっきまでの蝉の

「ミーンミンミンミーン♪」

が、

「ミーン!ミン!ミン!ミーンッッ!!」

に聞こえてきた。

彼らも必死なのだ。命のある限り鳴き続けて、

次の子孫を残すために一生懸命鳴いていた。

暑さは感じているのだろうか?

そんなことよりもこちらのお腹も鳴いている。


さっさと済まそうと歩き出す。

外に出たとたんにふき出してきた汗が、歩くたびに

滴り落ち、またふき出してくる。


そうこうしているうちにモールについた。


「うぅ~すずしいぃ( ^^) ノ」


たくさんの人がいて、みんな楽しそうにしている。

子連れの客も多いな。


イスやソファーに座っている人もいる。

家で過ごしているよりもこちらの方が金がかからないか

とか考えながら、腹のムシをおさえるために食料を買う。


なんでもいいと思いながらも、好きなパン屋の前に足がいく。

パン屋さんの香りがたまらなく好きで、店にいるだけで

お腹が膨れそうだ。


『ぐううぅぅぅうう~っ』


そんなことはあるものかと対抗するように腹が鳴った。

はいはい、今買いますよ。


とりあえず試食を食べる。たいていパンよりも

自分の好みのものを選ぶ。

何だか余計に空腹感が増してきた。

パンを2,3個トレーにとってレジへ向かう。


お腹が鳴らないように腹筋に力が入る。

ちょっとの時間なのだが、済ませるとホッとする。


さあさあまた熱帯を超えてウチへ帰りますか


モールから外に出ると、


ザァーーザァーッザァーー


と雨が降っていた。少しだけ気温も下がりさほど

暑くはない。


恵みの雨か


蝉の鳴き声も何だか小さく聞こえる。

お腹のムシも鳴ってても小さく聞こえる。


ウチに着くころには小雨になっていた。

再び蝉が鳴いている。


「ミーンミンミンミーン♪」

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