僕の死因

筒谷 将

第1話

それは夏休み中、八月の夜の事でした。

「眠れない…」

ふと時計を見ると、もう午前二時。

寝なくてはいけない。分かっているのだが身体が全力で眠る事を拒否している。

ニャォォォン!!

僕は猫を飼っている。普段はこんなには鳴かないはずなのだが、今日はなんだかとてもうるさい。

ただでさえ寝れないのに猫もうるさい。

どうすればいいんだ…

と本気で悩んでいた時だった。


「寝れねぇのか?」


天井の方から声が聞こえた。

なんだ!? と思い上を見る。すると


「寝たいのか?」


目の前にいかにも悪魔といった感じのリアリティある怖いやつが目の前すぐの所に顔を近づけていた。


「ヒッ…!」


なんか変な声が出てしまった。その変な声が叫びに変わる直前、悪魔っぽいやつが発言した。


「安心しろ。俺は怖いものじゃねぇ」


いやもうその見た目だけで怖いよ…


「俺はお前の望みを叶えてやるものだ」

「え?望みを叶える?」


僕は思わず聞き返した。


「そうだ、お前が望むことを望んだ通りにしてやる。例えば今お前を睡眠状態にする事もできる」


なるほど… すごく落ち着いてしまっている自分に恐怖を覚えながらゆっくり理解をした。そして浮かんだ疑問をぶつけた。


「それって何かしらの代償とかは無いの?」


悪魔的な物は答えた。


「代償は無い。ただ使うには俺と契約をしてもらう必要がある」


自分は大して考えなかった。


「分かった、じゃあ契約しよう」

「おぉ、ずいぶんと早いじゃねぇか」

「うん、んでもうお願いを聞いてもらってもいいのかな?」

「大丈夫だ。俺は優秀でな。言葉と気持ちだけで契約完了だ」

「適当なんだね… まぁいいや、早速なんだけど玄関の方で鳴いてる猫を静かにしてくれないかな?」

「ほう、いいんだな?」

「うん、頼むよ。」

「オーケー、了解した」


すぐに静かになった。さっきまであんなにうるさかったのに。


「本当にすぐ静かになったね。」

「当たり前だ、俺を誰だと思ってんだ?」

「誰って…そりゃ悪魔の様な何かだよ。」

「かなり適当な認識だな…まぁその方が都合がいい」


…そういえば猫の餌を出しておくのを忘れてた。だから鳴いてたのかな。出してあげなくちゃ。


「えっ…」


僕は目を疑った。そこには目を開いて不自然な体勢のまま横たわった僕の飼い猫がいた。


「ねぇ…これはどういうこと?」


悪魔は答えた。


「静かにしろとお前が望んだ。だから静かにしてやった。」

「殺せとは言ってないよね!」

「殺すなと望まれてもいなかったぞ」


こいつ…


「お前…今まで何体の動物を殺した?」

「今のが初めてだな」

「本当の事を言えよ」

「それは望んでいることか?」

「そうだね、確認しなくても分かるよね!」


一呼吸して、やつは口を開いた。


「覚えていないくらいだな」


こんな奴の相手はもう嫌だ。とっとと消えてくれ…


「消えて欲しいと望むか」

「え?」

「いいだろう、消えてやろう」


いや、違う…


「消えるんじゃなくて、この場で死ね。」

「死ねと望むか。本当にいいのか?」

「当たり前だ。今すぐやれ。」

「うむ、了解した」


え?何これ?体が、痛い!足が、足が逆に曲がってる!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!!!!腕が腰が首が痛い!!!!!!!!!!!!!!!!!!

なんだよなんなんだよこれいたいいたいいいいいいたたたたたきいいいいい!!!!!!!!!!


「俺が死ぬということは契約者であるお前も死ぬということ」

「何で…おまえは い き て

る ん だ よ …」

「俺は優秀でな、残機というものが大量にあるのだ。一度死んでもう一度やり直しだ。」


ふざけるなよいたいたいいたいいたいいたい

痛い痛いああおおおおおおおあああああああ…………

……………………


今夜はよく眠れそうだ…

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僕の死因 筒谷 将 @bays2008

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