第4話 LASTって、最後であるのと同時に最新っていう意味もあるのね!
「ごめんジャス。私降りる」
「ん? 降りるって、何からだ」
「このゲームからよ!」
「バカ言うな。降りられるわけがない」
「やだ! おーりーるーのー!」
「あのっ、あなた方、喧嘩は良くない……」
「博之のせいだろーーー!!」
思わず彼の胸ぐらを掴む気持ちで服にガシッと掴みかかる。
とは言っても私は156センチ、相手は180センチということで傍から見ればおかしな図面になっているかもしれないけど。
「あの、すみません……僕の名前はヒロユキではなく、“ヒロ・モトオカ”と申します」
「へっ? あぁ何かそういえばそう書いてあった……? って! 岡本博之と色々似て紛らわしい名前ね!?」
言われてみれば、博之に劇的に似てるっていうことで、ヒロ・モトオカの方が美形な気がする。
まぁ、性格も違いそうだし、何よりゲームの世界だしそうだよね。
「まぁ何にせよゲームは降りられない」
「な、何でよ!」
「この特別プログラムにも、きちんと原則がある」
ジャスが得意気にどこから取り出したかもわからない分厚そうな本を開くと、肉球をわざわざ見せるように指を一本立てて胸を張った。
「ゲームが始まった以上、ゲームを進めなければ現実世界の時間が進まない」
「は!? 現実の時間が進まないって……?」
「ずー……っとその終わらない日を過ごすだけだ。この“LAST TIME”の意味は、未来をつくる、という意味も込められてるからな。それを聞けばこの世界を救う甲斐があるだろう」
「はぁああああ!!?」
「とにかく。どんな仲間であれ、このゲームをクリアしてもらえればいい」
「なに、それ……」
「それほどここも、現実も、時間の歪み方がひどいってことなんだ。どうか分かって欲しい」
「そんな……。時の歪みとかぁもうゲームなんだしさ、そんな馬鹿げたこと……」
「時の歪みは、ユアの未来にだって大きく関わる!」
ジャスが怒りを露わにして私の目の前まで飛んできたものだからびっくりしてたじろいた。
「ユア、時をあなどっちゃいけない。在るはずの幸せな未来だって、時の歪みがその間にきまぐれに出てきてしまえば、簡単に違う未来に変わってしまう」
「う……」
「血まみれのバージンロードを歩くという未来にたどり着きたいなら、オレは止めない」
「ば、バカじゃないの。血まみれのバージンロードとか……。あり得ない」
「ふっ、時の歪みを甘く見すぎだな。あり得ないことなんて、この世界には……無い!」
急に低くなるジャスの声に、どこか真実味がある気がして、生唾を飲み込む。
「ねぇ、ジャスぅ何とかしてよぅ」
「可愛く言っても無駄だ。あとは、そうだな。ユアの記憶をどうにかするしかない」
「それってどういう……」
「一応言っておくが、ヒロの存在はユアの強い記憶の中の“一部”だ」
まっすぐ私の目を見ていうジャス。
嘘でしょ、ショックすぎる。
博之が、私の記憶の中に強く残っていたなんて……。
「あの」
私達の緊迫感漂う雰囲気の中、穏やかな声をかけられる。
「はい?」
私達の目の前には、私と同じくらいの背の、白ひげがお腹まであるんじゃないかというくらい伸ばした、年配のおじいさんが杖をついて立っていた。
「この度は、村の子ども達を救ってくれて感謝しておる。ワシはこの村の長をしておる。よかったら、お礼も兼ねてワシの家に来てもらえんかの」
「は、はいっ」
村長が歩きだし、私達も後からついていく。
おー、おー! これはよくある、歓迎会、そして次なる大きな旅が……!
仲間に関してはテンションだだ下がりだけど、やっぱり冒険ってなると話は別だなぁ……。
「まぁユア。出会った仲間をちゃんと知るのも大事だぜ。それに、きっといるはずだ。ユアが心から信頼できる仲間の思い出。本当の仲間が居た記憶を思い出すんだ」
うーん……。
本当の仲間って、言われても……。
なぜか私の頭の中は、イラつく人物がかなりの割合を閉めている――。
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