その8 前編 ~アレで戦う者達~

《対戦カード》


 ~トーナメント一回戦~


 メイ・サッチャー VS バニラ・S・チトセ


 アルテミシア・ジェード VS ドレド・ノト


 轍洞院 コクテツ VS ジャクリーン・ブラック


 轍洞院 シテツ VS シナモン・ロウル




―コーラクガーデン ホール(夜)―


       皆様こんばんは。

       本日はUWF、“Ultimate Word Fight”第1回

       大会の模様を実況は私ショーン・オールドマンと冨垣 エヌさんの

       解説でここコーラクガーデン・ホールよりお伝えします。

       冨垣さん、よろしくお願いします。


       はい、よろしくお願いします。


       今回は初開催ということで非常に楽しみな大会ですね。


       そうですね、遊びや暇つぶしとしてのしりとりは一般的ですが、

       「言葉の格闘技」としてのしりとりは初めてご覧になる人が多いと

       思うので、勝負のしりとりを楽しんでもらえたらと思います。


       ここで今大会のレギュレーションを説明します。

       参加者8名によるワンデートーナメントで行われる今大会は、先攻

       後攻はコイントスで決められ、最初の言葉はレフリーが目を閉じて

       辞書を指差したものが使用されます。

       各選手持ち時間10秒、タイムアップは二回で失格。

       試合内で既出の言葉の使用は禁止。また、しりとりを続ける意外で

       言葉を発してはいけません。これらの反則もタイムアップと合わせ

       二回で失格となります。

       もちろん、しりとりですので語尾に「ん」が付く言葉を使用したら

       その場で負けとなります。

       その他、放送禁止用語などはレフリーの裁定により反則負けとなる

       事もあります。

       冨垣さん、このルールについてはいかがですか?


       そうですね、初めての本格的なしりとりの大会ですので、様子見と

       言ったところでしょう。今後第二回第三回と行われれば改定される

       可能性や箇所はまだまだあると思います。

       ただ、見方によって自由度の高い試合ができるとも取れますので、

       初回としてはほどよいのかもしれませんね。


       なるほど。

       さて、もうまもなく開幕戦メイ・サッチャー対バニラ・S・チトセ

       戦が始まります。


       さあ、UWFの歴史に最初に名を記す者が現れます!

       制服姿のメイ・サッチャーが静かに凛とした顔つきでこのコーラク

       ガーデン・ホール中央のリングへと歩んで行きます。

       “タクティクス・インベンター”、希代の戦術発明家はこの試合で

       どのようにして勝利の方程式の解を導き出すのでありましょうか。

       今、ゆっくりとリングに入りました。


       さあ、対しますバニラ・S・チトセの入場であります。

       彼女のその破天荒な言動はまさに“クレイジープリン”。

       甘い容姿の小柄なメイドさん。しかし、戦いの場面においてはこの

       プリン、決して甘くはありません。

       今、トップロープを飛び越えてリングイン!


       いよいよ始まりますね。


       そうですね、頭脳的にじっくり試合を組み立てるメイ選手と本能的

       に爆発力で勝負するバニラ選手。両極端な二選手の対戦は開幕戦に

       とても合ったカードだと思います。


       確かに、真逆の二人の戦いは面白そうですね。

       さて、リングの上ではレフリーのおタマはんによって攻守と最初の

       言葉が決められています。

       ええと、バニラの先攻で最初「しりとり」から始めるようです。

       やはり最初は定番のスタートでということでしょう。

       さあ、試合開始です!


バニラ 「リキュール」

       おおっと、早くも語尾に「る」を付けてきた!


       しりとりにおいて「る」攻めは一番の基本ですからね、先攻ならば

       当然の手だと思います。

メ イ 「ルビジウム」

バニラ 「む… ムニエル」

メ イ 「ルテニウム」

バニラ 「む? えっと…」

       メイは「む」で攻め始めたようですね。


       はい、それだけでなく元素を立て続けに挙げているので言葉を選ぶ

       余裕も相手に見せつけていますね。

バニラ 「むぅ… 無水エタノール!」

メ イ 「ルテチウム」

バニラ 「それ言った!」

       おっと、早くもミスが出たか?

       しかし、メイは涼しい顔をしているぞ。

バニラ 「…… ぎゃん!」

       おおーっと! 大きな金だらいが降ってきてバニラの脳天に直撃を

       したぞっ!


       今のはバニラ選手が試合を切らずに抗議したので、『しりとり以外

       の発言』と逆に反則を取られたのでしょう。


       なるほど。

       おや、ここでメイが手を上げて試合を一度切ります。

メ イ 「ボクが言ったのは三つ。元素番号37番ルビジウム。次に元素番号44

     番ルテニウム。そして、元素番号71番ルテチウム」

バニラ 「んな事、知らないよぉ…」

メ イ 「そう… なら、ボクは元素名だけを言うことにするよ」

バニラ 「舐めないで! 私だって、すいへーりーべ…… 何だっけ…」

       メイが再び手を上げて試合の再開を要求しました。

       おや、手番を教えるようにその手を差し出ししました。


       メイ選手は余裕ですね。

バニラ 「む… む、む…」

       「る」に繋げようとして考えていますね。時間が無いので早く返す

       方が大事ですよ!

バニラ 「む… (ダメだ…)ムール貝!」

メ イ 「硫黄」

バニラ 「う… ウー…」

バニラ (ん? 待てよ… 「る」で続けるよりも、元素を潰しちゃえば勝てるん

     じゃない? 「う」だと… あった!)

バニラ 「ウラン!」

       えっ… まさか、そんな……

バニラ 「(フフン、どうだ)  …… ぎにゃぁ!」

       ああーっと! ドヤ顔で「ん」を付けたバニラにボーリングの玉が

       降ってきたっ!

       これはひとたまりもありません! 一撃でKOです!


       バニラ選手は最初のペナルティで出鼻をくじかれた状態で「む」を

       絡めた元素名攻めに乗ってしまった。結果的に、彼女の破天荒さが

       裏目に出てしまいましたね。

       メイ選手からすれば、上手く自分の土俵に誘い込んだと思います。


       なるほど、この試合はメイのゲームプラン通りに進んだと言っても

       過言ではないということでしょうか?


       そうですね、プラン以上の出来ではないでしょうか。


       まもなく一回戦二試合目が始まります。


       “驚異的なフェノメナルメイド”、“セルリアン・メイドの頂点に立つ女”あるい

       は“Perfect and Elegant”他にも彼女を称える

       異名は数知れず。

       戦争屋メイド集団でありますセルリアン・メイドチームのボス。

       『AJ』ことアルテミシア・ジェードの入場であります。

       彼女たちの戦闘服であるメイド服を着て、威風堂々と力強くリング

       に向かっていきます。

       リングに入り、その中央で四方にスカートを広げお辞儀をします。

       これぞまさにメイドの鏡!


       さあ、替わりましてドレド・ノトの入場であります。

       “オガサーラの神秘”とされる謎のシャーマンが今コーラクガーデン

       に姿を現しました!

       シャーマン… と言うよりは、忍者のような出で立ちでの登場だ!

       忍者頭巾から鋭く覗いた目はリング上のAJだけを見ている。

       うおっ、危ないっ! 鎖鎌の錘を大きく振り回しながらリングへと

       向かっていきます。

       さあ、リングに入り…

       マスクを脱いだ! これは凄い、マスクの下の顔一面には恐ろしい

       ドクロのペイントだっ!


       さて、今大会の優勝候補のAJとダークホースとなるのではと言わ

       れるドレドの一戦です。


       そうですね、優勝候補筆頭のAJ選手が唯一負けるとすれば、この

       ドレド選手ではないかと言われている中で最初に当たることになり

       ましたからね。

       大会を大きく左右するかもしれない一戦ですよ。


       確かにこの一戦は特に注目です。

       今リングの中央で最初の取り決めが行われています

       ドレドの先攻… 何だ、何だ! ドレドが急に不思議な動きで踊り

       始めたぞ!

       冨垣さん、これはどういう事でしょうか…


       相手に集中させないための作戦ですね。

       「動くな」というルールはありませんから、上手くルールの隙間を

       突いた攻撃だと思います。


       そうですか…

ドレド 「世紀末」

A J 「月」

       さあ、早くも「年の瀬」から試合が始まっている!

ドレド 「来たる世紀末」

A J 「… 月の光」

ドレド 「理想とは程遠い世紀末」

A J 「……」

       おっと! 早くもAJが苦虫を噛み潰したような顔になったぞ!

A J (そんなの有りなの…)

       どんどんカウントが進んでいく! 7… 8… 9…

A J 「月の世界の世紀末」

       おおーっと! なんと、「世紀末」で! 

       しかも、ほぼ文章で返した!

ドレド 「月の光はただ静かに残酷に、何もない焦土と化した我が祖国を照らして

     いた… あぁ、世紀末」

       おっと! こっちは完全に文章だっ! 後から取って付けたように

       「世紀末」を無理矢理ねじ込んできた!

       しかし、試合は続行されます。反則はありません!

A J 「…… ……」

A J (ちょっと、何でアイツにたらいが降ってこないのよ! あの変な動きも

     気になるし、結局は世紀末に行き着くし…)

       AJ、ここで腕を組んだ。 もう、時間が無いぞ!

A J 「月が笑い、太陽は泣く… 海は涸れ果て、大地が空を舞う… まるで、

     今の私の心のような、そんな世紀末」

       なんと、ポエムだっ! AJがポエムを読み上げたっ!

       おや、さらにAJは目を閉じました。


       これはドレド選手の不思議な踊りを見ないためですね。

       AJ選手はドレド選手の創るカオスな展開にも合わせています。

       さすがですね!


       なんと! AJはポエムだけではなく、ドレドの手の内も全て読み

       切っているのか!

       しかし、ドレドがAJに近寄っていく…

ドレド 「月づきに月見る月は多けれど月見る月はこの月の月」

       凄いキレの早口言葉だ!

A J 「? …… きゃあっ!」

       あーっと、思わず目を開けた所にドレドのドクロペイントが間近に

       待ち構えていた! 驚いたAJが尻餅を突いた!


       でも、運良く前回の語尾が「き」なので反則は取られてませんね。

ドレド 「赤い沼…」

       あっ、これは… マズい……


       おや、どうしたのでしょうか? AJが小さく口をパクパクさせて

       何も言えません。


       思考が止まっています! 早く止めた方がいいですよ!


       おっと、冨垣さんが言ったように今おタマレフリーが慌てて試合を

       止めました!

       レフリーストップでドレドの勝利であります!


       こちらも波乱の一戦となりました。これでセルリアン勢はバニラと

       AJの二人が早くも敗退となりました。

       この結果はどうでしょう?


       いや、これは意外でしたね! 個人的にはドレド選手がどんな戦い

       方をするのかと期待していましたが、まさか完全にAJ選手の思考

       を封じるとは思いませんでした。


       さあ、まもなく1回戦の第三試合がはじまります。


       “自由人”轍洞院コクテツが入場曲のかけ声に合わせて観客を煽り

       ながら入場してきました。

       凄い大合唱だ! コクテツはまだコーラクガーデン中を煽りながら

       リングの外を練り歩いています。

       おっと、コーナーに登ってから… 何もせずそのままリングイン。


       場内の照明が落とされ、赤いパトライトの光が照らされました。

       一度静まりかえった場内に重々しいギターの音色が響きます…

       ジャクリーン・ブラックの入場であります。

       “霊人救急車”が現場に到着、この試合で対戦相手を病院へと送るの

       でありましょうか。

       さあ、今静かにリングに入りました。


       事実上の決勝戦とも言えるカードですね。くじ運なので仕方がない

       ですが、一回戦なんてもったいないです。


       レフリーのおタマはんを挟んで二人が向かい合いました。

       どうやら、先攻はコクテツのようです。最初の言葉は「伸し餅」と

       なっています。

       さあ、立ち上がり先攻コクテツはどう出る?

コクテツ「ちくわぶ」

       実力者のJB選手が相手とあって、無闇に最初から攻めずに様子を

       見るようですね。

J B 「豚肉」

コクテツ「栗」

J B 「りんご」

       互いに速いテンポで食べ物を続けます。


       「伸し餅」からでしたから、この流れには入りやすかったですね。

コクテツ「ごま」

J B 「松茸」

コクテツ「けん玉」

       おっと、コクテツがココで流れを切ってきた!


       「ま」で攻めるのがどう出ますかね…

J B 「真アジ」

コクテツ「十カーネ玉」

J B 「真ダコ」

       これは互いに安定パターンを見つけましたね。

コクテツ「コケ玉」

J B 「真鯛」

コクテツ「依頼」

J B 「…」

       ココでまた変えてきた! 一瞬JBの目が泳いだぞ。


       「ま」で受けようとしていたところに元の字が来たので対応が遅れ

       ましたね。

J B 「イノシトール」

       ココでJBも変えてきた!


       ここまで後手に回っているので「る」攻めで行くと思います。

コクテツ「ルール」

       コクテツ、すぐに「る」で返した!


       相手にペースを作らせない良い対応ですね。

J B 「ルジャンドルの微分方程式」

コクテツ「はぁ?  ……っ、痛てっ!」

       おーっと! コクテツの頭に金だらいが落ちてきたぁ!

       しりとりを続ける意外で声を出してしまったため、反則を取られた

       ようであります。


       JB選手の少々難解な長大語に一瞬だけ思考を止められてしまった

       ようですね。コクテツ選手はペナルティのたらいを受けてしまった

       のでもう後がありませんよ。

コクテツ「き… 煙管」

J B 「類肉腫症」

コクテツ「う… ウシガエル」

J B 「ルビーキクイタダキ」

コクテツ「き…」

       コクテツ選手、JB選手があえて難解な長大語をチョイスしている

       ことに混乱していますね。それに「る」攻めがほとんど効いてない

       ので、逆に精神的なダメージがあるかもしれませんね。

コクテツ「き… キサントプロテイン反応!」

       コクテツも長大語に変えてきた!

J B 「ウィトルウィクス的人体図」

コクテツ「ずぅ… ずいずいずっころばし」

J B 「シガテラ中毒」

コクテツ「クリスマスキャロル」

       さあ、再びコクテツが「る」を差し込んできた!

J B 「ルリビタキ」

       今は回答を優先してJB選手の攻め手が止まりましたね、コクテツ

       選手はココがチャンスです!

コクテツ「キシリトール」

J B 「ルリカケス」

コクテツ「スパンコール」

J B 「ルリウラナミシジミ」

       これは凄いぞ! JBがコクテツの怒濤の「る」攻めを見事に受け

       切っています!


       しっかりと対策していましたね。「るり」で始まる言葉を使うこと

       であまり考える時間を掛けずに返して、逆に相手を消耗させる攻守

       一体の戦い方です。

コクテツ「ミートボール」

J B 「… ループコースパズル」

コクテツ「…!」

       おーっと、逆に「る」を取られたっ! コクテツ、ここは口に手を

       当てて声を押し殺します。


       一度たらいをもらってますからね、よく堪えました。

コクテツ「……」

       ああっ! ギブアップだっ! コクテツが腕で大きくバツを作って

       降参しました。


       恐らく、先程の「るり」受けからこの先を読んで「る」の取り合い

       では勝てないと判断したのでしょう。


       今、両者がハグを交わし健闘を称え合っています。


       序盤はコクテツ選手から積極的に仕掛けて試合を作れていたのです

       けど、彼女が矢継ぎ早に攻め込んでいった所にJB選手の長大語が

       カウンターで入ったのがこの勝負の分かれ目でしたね。


       やはり、あの一発を食らってしまったのがコクテツには痛手だった

       訳ですね。

       さあ、両者退場して場内は次の試合を待ちます。


       これから1回戦の第四試合が始まります。


       まずは轍洞院シテツが… おっと、走って入場してきました!

       今日も理不尽に立ち向かう“雑草魂を持つ雑草”。

       前の試合では姉のコクテツが敗れています、姉の無念を背負い…

       今、リングに入りました。


       一度、場内が暗くなりました…

       物々しい入場にコーラクガーデン・ホールのお客さんがざわついて

       ます。その中を、セルリアン・メイドチーム最後の刺客であります

       シナモン・ロウルが既に敗れたAJとバニラの二人ををセコンドに

       付けて現れました。

       “屋敷一腹黒い女”が頭に大きな青いタオルを掛けてシテツの待つ

       リングへと向かっていきます。


       両者が、リングの中心で向かい合います。

       あぁ… タオルの下から覗くシナモンの目がギラギラとした殺気に

       満ち溢れてています。


       シテツ選手には厳しい戦いになると思います…


       シナモンの先攻で始まるようです。

       最初の言葉は… え~、どうやら「現場」のようですね。


シナモン「馬鹿!」

シテツ 「何、いきなり…   …… うぎゃっ!」

       おっと、いきなりシテツ金だらいを直撃してしまった。


       あぁ… やはり、シナモン選手が最初からラフファイトに持ち込み

       ましたね。


       このルールでは多少の文章も度を過ぎない暴言でもしりとりとして

       機能していれば試合が続くというのは第二試合のドレドと同じ戦い

       方ですね。


       そうですね。細かい所では全く違いますが、変則的な戦い方として

       は同じと考えていいですね。


シテツ 「痛ったぁ… 私が始めるのは「か」ですよね…」

おタマ  コポポ…

       シテツは全く予期していなかった展開です。今、おタマレフリーに

       状況を確認しています。

シテツ「カエル」

       「る」攻めの展開に持ち込む。

シナモン「る、る… ルーザー」

       おーっと、シナモンが相手を指差して挑発した!

シテツ 「… ざる」

シナモン「流罪… あ~、いや流刑」

シテツ 「インストール」

シナモン「ルッツェルンハンマー」

       シナモン選手は相手を挑発するだけでなく、きちんと「る」に対応

       していますね。シテツ選手の方はもっと相手に揺さぶりを掛けない

       と厳しいですよ。

シテツ 「ま… マンホール」

シナモン「累積赤字」

シテツ 「ジグソーパズル…」

シナモン「「る」かよ… 羸弱るいじゃく、無駄だって分かんないの? 馬鹿なの? あなた

     の頭って本当、羸弱っ!」

シテツ 「……」

       シテツが口を固く閉ざしてしまった…


       たらいを受けていますので、ここは我慢の為所です。


       おっと、シテツがタイムを求めて手を上げた。

シテツ 「ちょっと、レフリーこれってアリなの? 私は一言言っただけでたらい

     が降ってきて、向こうは散々悪口言っても何も無しって… 誰が見ても

     おかしいでしょ!」

おタマ  コポコポ…

       今おタマレフリーに抗議をしています。


       う~ん… 私も九割は反則だと思うんですが、ルール上では反則に

       該当してないのでレフリーも反則を取れないんですよね…


       やはり、これは非常に高い反則の技術を持っているシナモンの巧さ

       なのでありましょう…

       どうやらシテツの抗議は却下されたようです。

シテツ 「…… クソはお前だ、コノヤロー!」

シナモン「ローレル」

シテツ 「ほぇ? る? る、る、るぅ……」

       ココで逆にシテツが「る」で捕まった!

シテツ 「ルール!」

シナモン「ルイ・ヒール」

シテツ 「えっ? る、る… あっ、さっきの…… ループコースパズル」

シナモン「ルチル」

       シテツも必死に「る」攻めで切り返そうとするが、シナモンが全く

       放さない!


       コレは危険ですよ! ボキャブラリーがどんどん失われていきます

       から、無理に「る」で返そうとしないで一度「る」から逃れた方が

       いいです。

シテツ 「ルームランナー」

シナモン「…… 舐めてんの? そんなんで私に勝てるわけないよ」

シテツ 「うるさいっ!」

       あっ…


       感情的になってしまった! シテツの頭に金だらいが…

       落ちてきたぁあ!

シテツ 「がふっ…」

       ああーっと! シテツが倒れた! 

       なんということだ! シナモンが悪の戦いで勝利を奪っていった!


       シテツ選手、最後は冷静さを保てませんでしたね…


       今、シテツが担架で運ばれていきます。

       リングの中央では倒した相手のことなど気にも留めていない様子で

       シナモンが憎々しく舌を出して勝ち誇っています。

       その隣でAJが白字で『Cerulean Maids』と書かれ

       た鮮やかな青の旗を広げて見せつけています。


       さあ、白熱の一回戦が全て終了しました。

       ここで休憩を挟みまして後半戦となります。




                    〈サブストーリーその8中編へ続く〉

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