目的不明のRPGって、クリア不可能じゃないか?
招き猫
1章 1話 異世界転移、そしてチョロイン
「何で、こうなったんだっけ? 僕って確かさっきまで普通にゲームをプレイしてただけだよな。……なのに、何で僕は知らないところで寝そべってるんだよ! はっ、まさかこれは異世界転移! そんなわけあるわけないだろ。ライトノベルでもあるまいし」
そうこの男、【
確かに安藤は、バーチャル・マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロール・プレイング・ゲーム、通称VRMMORPGをプレイしていた、《WBO、ワールド・ブレイク・オンライン》というタイトルのゲームを。
WBOは無料で配信され、完全無課金でゲームの中にフルダイブして遊ぶゲーム。
このゲームはみんなが平等に遊べるように課金制を排除し、自分のゲームの腕で強さが変わるゲーム。
それだけがWBOの特徴ではない。
WBOには
プレイヤーは全100種、いや全101種の中から一つ選んでゲームをプレイするんだけど、安藤はその101種類目の特典を選んだ。
このゲームを出しているメーカーからは全100種と伝えられていたのだが、何故か安藤には101種類目の特典があった。
それがバクなのか、仕様なのかは分からないが、元々珍しいものにはすぐ飛びつく安藤は、何の迷いもなく101種類目の【異世界転移】を選んだのだ。
そうこれが、安藤の間違い。
安藤はゲームはプレイしていたけど、普通にはゲームをプレイしていなかったという事なのだ。
その事実を今さっき僕は思い出した。
「僕は間違えたのだろうか、選択を。ネガティヴ思考はやめろ。異世界転移が出来たなら、元の世界にも戻れるはずだ。そうだよ、そうじゃないとおかしいもんな。でも、ここって……」
そう僕には分かる。
βテスト版を遊んでいた僕だから分かる。
ここは本来あるマップの範囲外という事が。
「……どこだよ。ここどこだよ。何これ、どうしたらいいの? バカなの? 死ぬの?」
「勝手に死ねば」
「ひぃ!」
「気持ち悪い。本当は、お前みたいな奴と一緒には居たくないけど、お母様がお前を連れてこいって言うから、仕方なく案内してあげる。別にお前の為に案内するんじゃないんだからね」
「はい! お願いします!」
僕の前に現れたのは、銀髪で髪がサラサラのロングヘアーで、紅い瞳で、身長は150cm前後の美少女だ。
口は悪いけど、本当は優しいんだろうなと僕はすぐに確信した。
「何を笑ってる」
「いや、別に。唯、ツンデレなのかなって思って」
「何言ってんの? マジでキモいんだけど。やめてくれる?」
「はい、ごめんなさい。調子に乗りました」
僕は少し距離を置いて、彼女についていった。
「着いたぞ」
「ここは、何?」
「こんにちは、悠人君。私はこのゲームの創設者にして、このゲームの女神である【
その女性は奥の方から歩きながら、そんな事を言ってきた。
その女性も銀髪で髪がサラサラのロングヘアーだけど、瞳の色が青紫色だ。
それで、身長は160cm前後で、スタイルが良いけど、少しバカっぽい。
でも、そのバカっぽさが彼女の魅力を引き立ててる。
もし、現実世界にこんなに美人の人が居るのなら、プロポーズが絶えないだろうな。
「こんにちは、夜神さん」
「うん、よろしくね」
「聞きたい事があるんですけどいいですか?」
「【異世界転移】を選んだのは、他にもいるのかっていう事を聞きたいんでしょ?」
「はい!」
「残念ながらいないわ」
「そうですか」
「落ち込まなくても大丈夫よ。悠人君がこの世界の中で、悠人君がやらなければならない事を全てすれば現実世界に戻れるから。……それにしても、悠人君って平凡だよね」
平凡で悪かったよ。
僕は今年で14歳の中学2年生の、学力も容姿も体型も身長が164cmで体重は55kgの14歳の平均値くらいの平凡だよ。
平凡の何が悪いんだーーー!
「それで、僕がこの世界でやらなければならない事って何?」
「教えなーい。最初から目的が分かってたら面白くないでしょ! でも、今の悠人君じゃクリア出来そうじゃないから、二つ
「いいんですか?」
「はい。では、この紙の中から選んでくださいね」
「分かりました。……夜神さん。あなた何してんですか? 何で自分の娘を
「別にいいじゃない。悠人君が選ばなかったらいいだけですし」
確かにそうなんだけど、……一つ目はこれにして。
二つ目はこの【スキル硬直排除】にしよう。
僕はこの二つを選んだけど、他には全ての魔法が使えるようになったり、魔剣や聖剣といったチート武器が貰えたりといった凄まじいチートがあった。
でも、僕はそこまでチートが欲しいわけではない、唯楽しみたいからこの二つにした。
「決まりました。僕が選んだ
「その二つでいいんですね?」
「はい!」
「では悠人君、いえユート君、あなたが生きてまたここに来る事をお祈りしています。ユリア、ユート君を守ってあげるのよ」
僕たちは地面から浮遊し、上へ上へと上っていく。
「分かりました、お母様。このどうしようもないユートは私が守ってあげます」
そして、僕たちは最初の街であるティウルに送られた。
「おぉ! 本当にゲームの世界に転移したんだ!」
僕たちが居る場所はゲームの世界にそっくりとかじゃなくて、まんまゲームの世界だ。
街並みは中世のヨーロッパで、レンガを組み立てて造ったような家があり、川から水を引くための水車がある。
僕が喜びを言葉に表してたら、「うるさい、少し黙って」と怒られた。
「怒ってる? 僕が無理矢理ユリアをここに連れて来たから」
「怒ってるに決まってるでしょ。何で私がお前みたいな奴と一緒にいなきゃいけないのよ」
「そんなに嫌だったのか? ……ごめん。ユリアは何もしなくていいよ。僕が頑張って、元の世界に戻してみせるから」
そう言って僕は歩いていく。
「なんで、なんでよ。どうして、一人で抱え込もうとするの! どうして、私を一人にするの! 一人は嫌なの! 一人ぼっちは嫌なの。ユートが私を選んでくれて嬉しかった。なのに、ユートはまた私を一人にしようとする」
この人ちょっと色々とめんどくさいな。
僕は歩みを止めて、後ろに振り返り、「どっち? 僕と居たくないのか、居たいのかどっち?」と問いかける。
「一緒に居たいに決まってるでしょ! 一緒に居なきゃ、お母様との約束を守れないでしょ」
「そう。なら、早く行こう。まずはこの先にある冒険者ギルドに行こう」
「うん」
あら何この子、可愛い。
涙目になってるけど、少し嬉しそう。
「そういえば、さっきからウィンドウみたいなのが表示されてるんだけど、これ何?」
「そんなの知らないわよ。私、ゲームなんてした事ないもの」
「そうなの?」
「何、悪い?」
「別に悪くないよ。母さんはゲームを作ってる人だから、ユリアもゲームとかするのかなって思っただけで」
「ユートはさ、どうして私なんかを選んだの?もっといい
「あったけど、ユリアと一緒に居た方が楽しいかなと思ってユリアを選んだ」
「そう。私、愛想も、口も悪いわよ。そんな私でいいの?」
「ん? そんな事どうでもいいんだよ。俺は唯、ユリアと一緒に居たいって思ったから、一緒に居るだけなんだから」
「ありがとう。私、こんな性格だから、人付き合いが苦手なの。だから、そんな事言われた事なかったから嬉しい」
もしかして、この子はチョロインなのか?
チョロインは本当に居たんだ!
「おっ、ここが冒険者ギルドか。やっぱりユリアと一緒に居たら楽しいから、一瞬に感じたな」
「……」
「どうした? 行かないのか?」
「私、人がたくさん居るところって苦手なんだ」
「ふーん。なら、こうやって手を繋いでたら平気だろ?」
僕はユリアの手を握りながら、そう言った。
「……うん」
「じゃあ、行こうか」
ユリア、さっきまであんなに口が悪かったのに、一瞬で仲良くなったんだけど。
もしかしたら、元々はあんな性格では無いのかもしれないな。
そんな事を思いながら、冒険者ギルドへと入っていった。
目的不明のRPGって、クリア不可能じゃないか? 招き猫 @bell5525subaru
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