第28話 眠っていたい

 本当にドタバタで、精神的にも肉体的にも疲れました。『巣篭り風テント』に入ったら、瞬殺でした。あっという間に爆睡。夢の世界の住人です。


 『巣篭り風テント』は、最高の寝具で、疲労もすっきりすっきりと取れます。


 ぴちゅぴちゅ ぴぴ 


 でも、朝を知らせてくれるタイマー付きだったかな? この中に居ると外の音は聞こえないはずなのに、鳥の囀りが聞こえます。


 ふあぁぁぁ~ 大きな欠伸を1つ 


 目を擦って ちろり


 ううん? きょろきょろ


 両手をぱたぱたぱたぽすぽす・・・


 いない・・・、いない! さくらこさんが居ないです!!


 えっえっ!? さくらこさんはどこ?


 『巣籠り風テント』の中を隅々まで探しても、何処にも見当たりません。


 確か寝る時は一緒だったはずです。


 寝て起きると、さくらこさんがいなくて、私は独りぼっち・・・・・・・・。


 べそべそ泣いてもいいかしら? いいよね? 異世界で心細くなっていて、情緒不安定なんだし。それにもう、目から水がつつつー。


 「みゅみゅ? (おきた?)」


 さくらこさん!! 反射的に飛び付いて、ぎゅーーーーーーーと抱き締め、じたばたと腕の中で暴れるさくらこさんを離したくなくて、さらに羽交い締めにしました。


 その為、怒ったさくらこさんに思いっきり腕を噛まれてしまいました。


 がぶり!!


 痛いーwwwwwwwwww


 でも、痛いってことは、現実です。


 嬉しくてにへらと頬が緩んでしまいますー! 


 良かった、さくらこさんに棄てられた訳ではないようです。


 目尻を下げて笑う私に、さくらこさんが斜めにジローと不気味なものを見るような蔑む視線を向けてきます。


 私、けっしてマゾではないです。ただ、さくらこさんが私にかまってくれるのが、嬉しいだけです。嫌いな人には、近づかないでしょう? だから、嫌われてないってことが嬉しいのだ!!


 でもそろそろ放さないと、本当に嫌われます。放しがたいですが・・・・・・・・。


 ぎゅっ! ぎゅるぎゅる ぎゅ!


 えっと・・・、私のお腹が何か食べろと訴えていますね・・・・・・・・・。


 最後に食べたのは、くまさんの村での感激ご飯で、その後、キラーアントから逃げて戦って、そしてくまさんたちの村が崩壊したから、カムイの洞窟に引っ越してくることが決まって、カムイに対してはぶてて洞窟に帰って『巣籠もり風テント』にダイブしてさくらこさん抱えて寝たんだよね。だから、くまさんの村で食べたのが最後の食事です。


 うーーーーん、どのくらい寝ていたのだろう?


 ここは、洞窟の中なので、当然お日様は射し込まないし、『巣籠もり風テント』の中だとさらにわかるはずもないでしょう。


 ぎゅるぎゅる ぎゅるるん


 お腹は鳴っているし、このお腹のすき具合からみて、かなり時間がたっているとみてよいでしょう。取り合えず、このままでは何の解決もしないので、一先ずここから出ましょうか。


 うっ!! 寒い!


 流れる風が、肌を刺すように痛い。さっきまでそんなこと無かったのになんでろう、この寒さ。


 両腕を抱えて震えながら思い出す。そう言えば、『巣籠り風テント』の中は、快適空間だった。

 

 でも昨日、そんな経験はちっともしていない。詰まり、今は夜ってことだね。


 どの位の時間かな?


 くまさんたちは、どうなったんだろう。


 確かに、この寒さで野宿はきつい。ちゃんと、この洞窟に来てるのだろうか?

 

 今更だけど、心配だ・・・・・・・・・。


 でも、その前に自分のことだ。このままでは、私も凍ってしまいそうだ。何かいい解決方法はないだろうか?


 取り敢えずは、腕の中のさくらこさんが良い湯タンポ代わりになっている。


 方法としては、いろいろ考えられるけど、一番に思い付いて、簡単に想像がしやすかった方法を試してみることにした。つまり、私の回りだけ温風を吹かせてみたのだ。これが結構ヒットで、実に快適っていうやつだね。本当に魔法って便利だ。


 後は、さっきからお腹が催促し続けているご飯だ。


 困ったことに、何にもない。


 水は魔法で出せるけど、食べるものはそう言うわけにはいかない。


 何時の間にか頭の上に移動していたさくらこさんをそのままに、自分の部屋から出る・・・


 くっくまぁ!! (きゃっ!)


 えっ? 小さな小さな、くまさんの叫び声。


 そっと自分の足下を見れば、シルバ○○ファミ○ーのくまのお人形さんが、尻餅をついた姿である。


 これって、どういう状況でしょうか?

  

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る