第2話、若い者には旅をさせろ

 勇者と女神の激戦の後、勇者はさらに兄弟たちと競い合い、別の女神との戦いをも日々繰り広げながら、概ね平和なときを過ごしていた。

 あえて語るまでもないことであるが、兄弟とはもちろん血の繋がった兄弟のことではない。また、魂の兄弟といった概念とも違う。一番の指名権を賭けて争い合う相手であり、多くの仲間同士で共有体験をなす。それを、あ・・・・・・、これ以上は蛇足であろう。


 狩りが休みのある日の午後、珍しくゼルベルトがのんびりと酒も飲まずに昼寝をしていると、彼の住む掘っ建て小屋に客がやって来た。

「お~い、ゼルベルトや。おるか~?」

「・・・・・・ぐぅ」

「ゼルベルトや~。寝とるのか~?」

「・・・・・んが? くぁ、ふわ~あ。起きてるよ、ジジイ!」

 ゼルベルトは億劫そうに起き上がると、面倒くさげに立て付けの悪い扉を乱暴に押し開けた。

 そこにいたのは老齢の男。一見すると、今にも昇天しそうなほどヨボヨボに見えるのだが、立ち姿は意外にしっかりとしており、腰も曲がったりはしていない。それどころか好々爺然とした雰囲気とは別に、どこか強者の気配を感じさせる不思議な空気を纏っている。

 辺境の集落に住む人間は、老いも若きも男も女も皆が頑健なのだ。ちょっとした見た目だけでは判断できない。

「どうしたんだよ。なんか用か?」

「すまん、寝ておったのか。邪魔したようじゃのう」

 股間をボリボリとかきながら眠そうな顔で話すゼルベルトに、老人は呆れた顔も見せず、ほっほっほっ、なとど笑いながら鷹揚に接する。ふところの深い人物だ。

「別に構わねぇよ。退屈だったしよ、何かあんなら手伝ってやるぞ」

「なに、そろそろ武神例祭ぶしんれいさいの時期じゃからのう。その準備が要るじゃろう? 次の狩りの予告に来ただけじゃよ。なんせ、お前さんが一番楽しみにしておったからのう」

「なんだと!? もうそんな時期だったか。当然よ、俺がやらずに誰がやるってんだ。俺はよ、この時を待ってたんだ」

「ほっほっほっ、まぁ若いの皆で狩って来るとええ。ほかの若い衆にも言っておいてくれんか?」

「おう! 任しとけ」

 武神例祭とは、この辺境の集落で、5年に一度行われる大きな祭りのことだ。

 一種の宗教儀式も兼ねた祭りには供物くもつが必要で、それは常に決まった獲物が供物として神に捧げられる。武神例祭はその時にしか狩ることの許されない大物を狙うことができるのだ。

 前回の武神例祭ではゼルベルトは狩りに出ることが叶わず、今回をとても楽しみにしていたというわけだ。集落では誰もが知るほどに、この祭りに賭けるゼルベルトの熱意は高い。

 だが、それはゼルベルトだけではない。ほかの若者にとっても、ゼルベルト同様に熱い思いがあるのだ。

 武神例祭というだけあって供物を捧げる対象となる神は、武と狩猟の神"ヴァハテュール"だ。強さを重んじ狩猟を身近にしている辺境の人々にとって最も親しみ深い神といえる。

 ヴァハテュール神へ捧げる供物となれば、当然のことながら普通の獲物ではない。それは強力な魔獣の多い辺境にあって、最も強い魔獣でなくてはならない。

 多くの魔獣の中でも頂点に君臨する怪物が狩りの対象であり、供物となるのだ。それこそが武と狩猟の神へ捧げるに相応しい。


 血気盛んな若者たちは、常にその魔獣を狩りたいと切望しているのだが、残念ながら生息数が多くない希少な魔獣なのだ。無闇矢鱈むやみやたらと被害を与えては、生態系に影響が出てしまう。

 ゆえに5年に一度の武神例祭が、戦うことのできる唯一のチャンスとなる。

 ゼルベルトに告げに来た老齢の男は、実はこの祭りを取り仕切る地位にある。ただのジジイではない。

「そうと決まったんなら、すぐに行きてぇからよ。ジジイ、準備ができたら早速出ると思うからよ。一番デカイ奴狩ってくるから楽しみにしとけよ!」

「ふむぅ、お前さんらの心配は無用じゃろうが、獲物の素材はなるべく壊さんようにな」

「あぁ、それがあったか。戦ったことがねぇからよ、上手く手加減できるか分からねぇぞ?」

「まぁ、滅多に狩れん獲物じゃからのう。できる限り、なるべく残しておいてくれたらええわい。期待しとるからのう」

 獲物は最強の呼び声高い魔獣だけあって、その体から取れる素材は巨万の富を生み出すことができる。辺境の集落は時折、街に出ては貴重な素材を売りさばき、財をなしているのだ。ここにおいて、文明を感じさせる服や道具は全て、行商役を勤める者が街に出て買い込んできた物になる。

「狩人として獲物の価値が下がることはできねぇか。ジジイ、上手くやるから心配すんな。神さんへの捧げ物でもあるわけだしよ」

「ほぅ、分かっとるようじゃが、細かいことまで気にせんでええわい。せっかくの機会じゃからのう。若いもん同士で思い切り楽しんできたらええぞ。さっきも言ったように持ち帰るのは、ある程度でいいんじゃ」

「やけに気が利くじゃねぇか。まぁいい。俺はさっそくアイツらにも教えてくるからよ。またな、ジジイ」

 せっかちな若者らしく、聞きたいことだけを聞き終えると飛び出していく。それを微笑ましそうに見送る老人。関係性は非常に良さそうである。



 数日後の早朝、見送りに集まった集落の人々と旅の装いに身を包んだ若者たちがいた。武神に捧げる獲物を狩りに出掛ける日がやって来たのだ。

 若者たちはいつものラフな格好とは別に、丈夫そうな袋を背負っている。往復で8日程度の旅になるはずだ。その割には荷物が少なく見えるが案外たくさんの物が袋には入っていた。防水処理を施された袋の中身は調理道具と塩と水筒に手ぬぐいなどの小物が少々。丈夫な布地にロープなどもある。そして何よりも重要なのが紙だ。中途半端に文明に染まった彼らにとって、尻を拭く紙というものは欠かすことのできないマストアイテムなのである。その代わりに着替えのたぐいが一切ない。川で随時洗うつもりなのだが、どうにも不潔な奴らである。

 それにしても最強の魔獣を狩りに行くにしては、ずいぶんと心許ない装備だ。相変わらず武器になりそうな物はナイフだけのようだし、そのナイフとて武器として使うつもりはないのだろう。

 個人の荷物のほかには、大きな獲物を持ち帰るための台車が一つ。これは解体された状態で、荷運び役の若者が私物入りの袋とは別に背負っている。巨大な荷物だが、例によって若者同士の賭けに負けて荷運び役を押し付けられたのだ。その若者は不本意そうではあるが、苦にした様子はない。やはり集落の人間らしく、怪力の持ち主のようだ。


 家族や知り合いからの激励を受けながら、意気揚々と若者たちは出発していく。

 ゼルベルトも皆と同じように歩みを進めるが、彼に家族はおらず天涯孤独の身である。そんな彼であるが、集落は皆が家族のようなもの。まるで息子や孫のように親しげに声を掛ける者たちに、ゼルベルトも寂しさなど感じる暇はないだろう。

「ゼルさん、おっきいの獲ってきてね! あとこれ、オババから」

 クラーラが渡すのは小さな薬ビン。ズボラなゼルベルトは薬など持ち歩かないので、気を配ってくれたのだろう。

「オババのか! そいつはありがてぇ。クラーラもいい子にしてろよ」

「もうっ、子供じゃないもん!」

 背伸びをしたい年頃の少女を適当にあしらうと、ゼルベルトはいそいそと薬ビンを鞄に仕舞い込む。

 オババは集落で一番の薬草師であり、唯一の魔術師だ。一体何年生きているのか分からないが、オババはゼルベルトが物心つく頃からオババであった。そのオババが作る薬は抜群の効果を誇り、辺境の集落においては誰もが一度は世話になったことがある特別製だ。荒くれ者ばかりの集落でも、オババには誰もが頭が上がらない。そのオババからの贈り物ともなれば、ゼルベルトも喜びは隠せない。

 その後も女神や老人に子供、集落の多くの者たちに声を掛けられながら湧き上がる期待を胸に旅立つのだった。



 目的の獲物が生息している場所は、頑健な若者たちの足でも片道4日近くは掛かる秘境にある。

 辺境の中央にそびえ立つ火山の中腹が最終的な目的地だ。大物との戦いにはやる若者たちであれば、もう少し到着は早くなるかもしれないが、彼らにとっても初めて訪れる地だ。監督役のベテランも同行しないとなれば、どんなハプニングがあってもおかしくはない。それも含めて、辺境の若者たちにとっての、ある種の試練のようなものなのかもしれない。


 途中、魔獣を見掛ては次々と倒してそれぞれで確保する。道中の食料とするためだ。ほかにも、山中のどこにでもたわわに実るフルーツ類をもぎ取っては随時かじり付く。小腹を満たしつつ、水分補給にもなるし何より美味だ。辺境の食物が魔獣の肉を含めて、軒並み美味であるのには理由があるのだが、ここでは割愛しよう。

 若者たちは順調に、予定よりも早いペースで進み続ける。この調子であれば、日の落ちる頃にはマント川に辿り着けるだろう。マント川はいつもの狩りで体を洗う小川とは違って、もっと大きな川だ。そこに沿って上流に遡っていけば目的地には迷わず到達できる。また、飲み水としても十分であるし、魚を獲ることもできる清流である。

 実り豊かな辺境は、その分非常に危険である。だが、彼らにとっては日常茶飯事。気に掛ける素ぶりもなく、極々平常運転で今日も生きる。


 一先ずの目的地であるマント川へ向かう一行だが、午後になると急なスコールにあってしまった。よくあることで、辺境の住民は一々傘を差したり持ち歩いたりもしない。

「ちっ、雨かよ。マント川まではまだ距離があるな」

「一休みしてぇが、ここらじゃ休むところもねぇ。進むしかねぇな」

「クソッ、これじゃ晩飯用の魔獣も出て来なくなっちまうぜ」

 ずぶ濡れになれど、常夏の気候の辺境だ。朝晩は多少気温が下がるが、日中帯に寒さを感じることはない。だが、いくら慣れているといっても、うっとおしいことに変わりはない。足場がぬかるんで速度は落ちるし、血気盛んな若者が苛立つのも無理はない。


 予定よりも早いペースで進んでいたはずだが、思った以上に長引いたスコールの影響で、結局は予定を大幅にすぎた夜半になってマント川に到着した若者一行。

 頑健で元気一杯の若者たちも深夜にまで及ぶ強行軍に疲労困憊の様子だ。星明り程度の暗闇の中でも、夜目が利く彼らは行動に支障はほとんどない。疲れていても、食事をきちんと取らなければ力が出ないし、彼らが腹を空かせた状態のまま寝るなんてことはあり得ない。

 いつものように自然な連携で石でかまどを作り、火をおこす。塩を振って肉を焼くだけの料理だが、素材がいいので十分に美味い。

 元気な若者たちとは思えないほどに静かな食事を済ませると、疲れから自然と眠り始める。大きな岩がゴロゴロしているので、なるべく平らな岩を寝床に選ぶ者が多いようだ。



 翌朝、夜明け頃から起き出す若者たちは、簡単な食事を済ませると早速、今日も進み始める。

 川沿いの岩場は起伏の激しいところが多く徒歩には向かないので、すぐ側の山中にある獣道を列を成しながら進む。

 そこでゼルベルトが急に列を外れた。

「おうっ! 俺はちょっと用足してくるからよ。先行っててくれよ。おぅ、漏る漏るっ」

「俺も行くぜ」

「なんだよ、じゃあ俺も」

「お前ら、そばに来んじゃねぇよ! 離れてしやがれっ」

 お通じの良い男たちである。健康的な証であり、結構なことだ。


 生憎あいにくとこの日も昼過ぎからのスコールが何度か続き、行程にかなりの遅れが出てしまった。

 幸いにも午前中に多くの魔獣に遭遇したお陰で、食料の確保は十分であったが、若者たちの苛立ちは増す。いつにないスコールが多発するせいで、まさしく水を差された気分なのだ。どうにもならないことではあるが、短気な彼らに理屈は通用しない。ムカつくものはムカつくのだから。

 連続で深夜までの強行軍では疲れから思わぬミスで事故に繋がる可能性もある。魔獣ごときに遅れをとる彼らではないが、辺境の男といえど思わぬ事故に不覚をとる場合もある。そのくらいのことは、まだ未熟とはいえプロの端くれだ。十分にわきまえている。したがって、今日は日が沈んだ時点で野営の準備に入ることになった。

「ったく。この調子じゃ、明日も遅れるかもしれねぇな」

「うるせぇ。食ったらさっさと寝ちまうぞ」

「けっ、言われるまでもねぇ」

 後片付けもそこそこに休み始める一行。ゼルベルトはいち早く眠りにつくようで、今日は川べりではなく、森の中で大きく張り出した根っこの隙間に横たわった。


 若者たちのほぼ全員が眠りについた深夜、まだ眠らない者もいる。ゴソゴソと何かをやっているようだ。漏れ聞こえる息遣いが荒々しい。やがてそれも静かになるが、残滓ざんしは残る。

 運の悪いことにその人物の近く、しかも風下で眠っていたゼルベルトは、風に流されてくる強烈な臭いで最悪の目覚めを果たした。

 その臭いは例えるなら栗の花のにおい、いや、単純にイカ臭かった。どうやら男だけの旅路で我慢ができず、ソロ活動に精を出してしまったバカがいたらしい。精だけに。

「うっ、このっ、バカ野郎! 臭ぇんだよっ! 行きと帰りの何日かくれぇ我慢できねぇのかっ! クソッバカタレが!」

 ゼルベルトはカッとなって飛び起きると、近くで眠っていたはずの若者に詰め寄りながら罵倒する。

 言われた若者も黙っちゃいない。売り言葉に買い言葉だ。

「お前にだけは言われたくねぇ! いつもいつも、マルレーネを取りやがって!」

「何言ってやがんだっ、バカ野郎! 文句ばっかり垂れやがって、俺は賭けの権利を使ってるだけじゃねぇかよ! てめぇの不甲斐なさを棚に上げんじゃねぇよ!」

「それにしたって、ちっとは遠慮しやがれ! 穴さえありゃ何だっていい奴だろうが、お前は!」

「なっ、そんなわけあるかよ、バカ野郎!」

 さすがに酷いことを言われたゼルベルトだが、何の迷いもなく暴言を放った相手の顔面をいきなり殴りつけた。

 巨大な魔獣を一撃で倒す恐ろしい拳のはずだが、遠慮の欠片もない思い切った殴り方だ。殴られた若者は吹き飛び、樹に激突するがすぐさま起き上がる。一見すると大した怪我はしていないようだ。


 ゼルベルトの喧嘩相手はギャランといって、体格だけならゼルベルト以上の筋骨隆々とした偉丈夫だ。

 平均的な体毛のゼルベルトとは違って、集落一の剛毛の持ち主でもある。剃ってはいるが青々と残るヒゲはもちろん、ワサワサとした胸毛にボーボーの腋毛。下半身は長ズボンに隠されて見ることはできないが、間違いなくフサフサであろう。何よりウエストからヘソの辺りまでを覆うギャランドゥが激しい主張をしている。

 ゼルベルトと同じように前を全開にしたシャツを一枚羽織っただけのスタイルだけに、毛の濃さが丸分かりだ。恥じることは何もないが、とにかく毛の濃い奴である。


 殴り飛ばされたギャランだが、こちらも負けてはいない。起き上がると猛然とゼルベルトに向かって殴り掛かる。

「ゼル! 今日こそ、お前を倒す! おらぁっ、行くぜ」

 今度はギャランの一撃をまともに受けたゼルベルトが若木を圧し折りながら吹き飛ばされる。

 すぐさま復活したゼルベルトがやり返すと、ギャランも負けじと殴り返す。

 技術も何もない、ただ力に任せた野蛮な殴り合いだ。巨大な魔獣を屠るほどの拳での殴り合いは、本人たちの異常さはおいておくとして、周囲へは甚大な被害をもたらす。空振りした拳が大樹を穿ち、大岩を粉砕する。まるで嵐のように暴れ回り、互いにあざを作り鼻血を流す。

 ただ、怪我といえるものはその程度で、周囲へ及ぼす影響に比べれば随分と軽い怪我に思える。出鱈目な頑丈さは辺境の男たちゆえのものか。

 派手に暴れていれば、当然ほかの者たちも気が付いて様子を見にくる。そして囃し立てる。

「うるせぇぞ、早く寝ろよバカ!」

「ゼル、なまってんじゃねぇか!? どうしたどうした!」

「おいおい、ギャランよぉ! もっと気合入れろや!」

 うるさい奴らである。たまたまゼルベルトの傍まで寄ってきた一人の野次馬をギャランが間違えて殴り飛ばすと、ゼルベルトも空振りした拳で別の野次馬を殴り飛ばす。

「あっつ、痛ってぇな! この野郎!」

「上等だ! やんのか、この野郎!」

「くそっ、今殴ったの、誰だ!? お前か、この野郎!」

 暗闇の中、次々と広がる罵声と暴力。若者たちは元気に全員を巻き込んだ大乱闘を繰り広げたのだった。

 少々とは言い難い環境破壊を撒き散らした若者たちだが、彼らがそれを気に掛ける素ぶりは欠片もない。

 結局、最後まで立っていたのはゼルベルトだったが、散々に暴れてスッキリしたのか満足したのか、倒れたまま眠りにつくギャランたちと同様に、大の字に倒れると気持ち良さそうに目を閉じた。

 当然だが、こんなことをしていては早起きなどできるはずもなく、翌日は昼過ぎの出発となる。これでは旅程の遅れを取り戻すどころではなく、さらに遅れることが確定した。


 悪いことは重なるもの。翌日からの行程も、山中で腹を下す者や立小便の最中に魔獣に襲われて軽症を負った者の救護、深夜に昆虫型魔獣の大群襲来があったりと、次々とハプニングに見舞われた一行の行軍速度は遅れに遅れた。

 ただでさえ目的地の火山は、辺境の中にあっても、さらに秘境の中の秘境だ。そこに近づくにつれ、魔獣は軒並み強力になっていくし遭遇する頻度も増す。ただ単に力が強かったり巨大だったりするだけではなく、様々な毒を持っていたり不思議な力を持つ魔獣までもいる。さすがの彼らとて、草を刈るように進むことはできなくなる。出鱈目な強さを持った辺境の男たちでもなければ、決して辿り着くことなどできはしない。それが最強の魔獣が生息する秘境なのだ。

 普段なら元気あふれる若者たちが旅の疲れと戦いの疲れを見せ始めた頃、ようやく目的地である火山のふもとに到着した。

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