第二話 宇宙子と降ってきた少女
プロローグ
いったいどうなっているんだ。
転校早々クラスメートが三人も死んだと言うだけで十分異常だと言うのに、また僕の前には一人の生徒が倒れている。
俯せに倒れて動かない頭の下から、赤黒い染みが広がっていた。
真上に位置する三階の窓が開いている所を見ると、あそこから落ちたのか、それとも飛び降りたのか。
先生が倒れた生徒を確認し、救急車を呼び、野次馬の生徒を追っ払う。
僕も追っ払らわれた。
ざわめく胸をよそに昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴って教室に戻る。
倒れていたのは
そんな子が、いじめを苦に自殺を図ったともうウワサになっている。
授業中だけど、先生が黒板に書き込んでいる間にがやがやと話声がするのは日常茶飯事だ。
さすがに先生も根も葉もないウワサだと否定を兼ねて注意する。
本当かどうかは分からないが、ウワサを聞くと遺書が見つかったらしい。
いじめを苦に自殺……。
隣の席に座るショートカットの女の子を見る。
この子は
そして直ぐにそれを後悔する事になる。
空湖はクラスの、いや学校中のいじめられっ子。
友達である僕もそのおこぼれを貰っている。
数日前の三人の生徒が死亡した事件で空湖の事を知り、気の毒な事もあって、偏見を捨てて友達になろうと決心したんだけど……。
机の上に置いたノートをどけて眼鏡を上げる。
そこにはマジックで『孝』と『宇宙人』が相合い傘に入っていた。
片方は僕の名前である
もう片方は空湖のあだ名である宇宙人。
そこはせめて水無月か、空湖と書いてあげようよ……。
確かに小学生には難しい漢字だけど、と思いつつノートを戻す。
知り合って数日だが、空湖は痛みというものを感じていないのではないだろうかと思う節がある。
今日も体育の後、上履きから靴に履き変えると中に画鋲が入っていた。
漫画の様に派手なリアクションで悲鳴を上げる僕に、
「どうしたのコウ君?」
「が、画鋲!? 靴に、画鋲が……」
「へえ、壁から落ちたのかな。偶然ってあるんだね」
「そんなわけないだろ! 僕だけのはずないよ、空ちゃんは大丈夫なの?」
「あ、ホントだ」
と足に刺さった画鋲を平然と抜いていた。
空湖と苦難を共にしようと決心したのだが、もしかして苦難の道を歩くのは僕だけではないのか……。
五時限目の授業が終わる。
バタバタと外へ遊びに出る生徒の中、空湖は勢いよく立ち上がる。
「行くよ、コウ君」
「え? どうしたの?」
放課後は大抵一緒に帰るが、普段は休み時間にあまり話しかけて来ない。
今日はどうしたと言うのだろう。
「二階堂さんの事、いじめが原因なら真相をハッキリさせなきゃ」
これまたどうしたと言うのだろう。先の事件では、どちらかと言うと詮索する僕を止めていた方だったのに。
キッと僕に怒った様な顔を向け、
「わたし、いじめとかって許せないの」
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