ダイオキシン

「まったく、何をやってたらそんな所にハンカチを落とすんだ」

 と文句を言う校務員を連れて空湖の待つ焼却炉に戻る。手に持った鍵束から焼却炉の鍵を探しているが、中々合わないようだ。

「いつものおじさんは?」

 空湖が聞く。いつもの人じゃないんだ。

「ああ、前の人は辞めちゃってね。僕は臨時だよ」

 焼却炉の扉を開け、中からハンカチを取り出して空湖に渡す。

「ありがとう」

 という空湖に、気を付けるんだよと言って帰って行った。

 なにやってるんだよ、と空湖を見るとハンカチを広げてニッと笑っている。

「ああーっ、灰だらけじゃないか」

「どうして灰だらけなの?」

「そんなの中で物を燃やしてるからに……」

 ってそうか! 焼却炉は長い事使ってないはずなんだ。

 ハンカチに付いた灰を指で摘まんでみる。そんなに古い灰ではない。

 紙? いや落葉かな?

 使用された焼却炉。こんな所にある焼却炉をわざわざ使う理由なんて、そうは考えられない。

 そして辞めていた校務員。

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