現場へGO

 現場である旧校舎の前に立つ。もう黄色いテープも張られていない。

 割れた窓は塞いであるが、破って入ろうと思えば入れる。怒られるだけだけど。

 事件当時開け放たれていた入口は、今は閉まっていて鍵がかけてある。

「新しい鍵じゃないわね」

 空湖が鍵を見ながら言う。確かに少し錆のついた年季の入った鍵だ。

「普段は鍵がかかってるの?」

「そのはずよ。ずっと使ってない建物のはずだから、かけ忘れるはずもない」

 なのに入口のドアが開いていたって事は……。

「あの三人は鍵を壊して入ったんじゃなくて、開けて入ったって事ね」

「鍵は誰でも持ち出せるのかな?」

「各教室の鍵は職員室にあるから、部活用の鍵を借りるフリをして持ち出せるけど、ここのはないんじゃない?」

 そりゃ、そうか。

 でもどこにあるのか分からないと、誰が持ち出し可能だったのかも分からないな。

 そう考えていると空湖は旧校舎の裏手に歩いて行く。

 校庭に面した割れた窓と同じ物が反対側にもある。

 その窓の下を空湖が何やら調べているが、僕が見ても足跡だらけだ。何か分かるとは思えない。

「ガラスが割れた時にわたしは旧校舎を見た。入口から人が出て来たなら見えたはず。死体を動かした人はここから外へ出たんじゃないかしら」

「でも足跡でいっぱいだよ。警察の人が周りも調べただろうから。今からじゃ分からないよ」

「この調べ方は尋常じゃないわ。手懸かりになる足跡がここにあったからじゃないかしら」

「あ、そっか」

 そう考えてみると捜査の跡が軌跡のように見えてくる。

 まるでそれが足跡のようにここを通った人の行く先を教えてくれる。

 窓から出た人の足跡だけなら僕達には分からなかった。

 足跡の主は校舎の裏手に向かったようだ。

 さすがにここから先はどこへ行ったのかは分からないな。

「外へ逃げたわけじゃないって事かな」

「そうとは限らないんじゃない? 塀を乗り越えたら目立つけど、裏門からなら自然でしょ?」

 この先には裏門があるのか。

 校舎の裏は中庭というほどではないが開けている。ちょっとした菜園や貯水タンク、ゴミ置き場、そしてあれは……、焼却炉?

 古い、錆びた焼却炉が隅にある。蓋には南京錠がかけてある。今時焼却炉を使っている所はないはずだから長い事使われてないはずだけど。

 空湖は焼却炉の小さな窓から中を除き込み、

「コウ君、ハンカチ持ってない?」

 あるけど……、と取りだすと空湖は拾った石をハンカチで包み、上へと放り投げた。

 狂いなく煙突の穴に入ると、ゴトゴトと音を立てて、焼却炉の中に落ちた。

 なんて事するんだよ! と抗議しようとすると空湖は僕を見て、

「鍵。開けてもらわなきゃね」

 と言ってニッと笑った。

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