事件のあらまし

 空湖の家で事件について考える事となる。

 あのお母さんは出かけているらしい。太陽の下を出歩いて大丈夫なのかと少し心配になる。

「言っておくけど、警察はもうとっくに事件を解決しているわよ」

「そうなの? どうして?」

「だってもう何もしてないじゃない。私達にも何も聞いてこないわ。保護者の騒ぎ方も収まってきたしね」

「でも、別に犯人が捕まったって話も聞かないし」

「そんな事、子供に教えるはず無いじゃない。それに『犯人』なんていないのかもしれないわ」

 犯人がいない? それはホントに宇宙人か何かの仕業だって言ってるの? それともあれが事故だっていうの?

 そこから考えても答えは出そうにないので、推理物の鉄則『状況の整理』から始める事にする。

「まず水無月さんが、旧校舎で三人が倒れてるのを見つけたんだよね」

「苗字で呼ぶんだ」

「え? じゃあ……そ、空湖ちゃん」

「なーにそれ。もう私を自分の物にした気でいるの?」

 なんだよそれ。

 ケラケラと笑う空湖を無視して続ける。

「ガラスが割れる音がしたんだよね」

 事件の後、刑事に話した事を反芻する。

 空湖が校庭の真ん中でポツンと僕を待っている時に、旧校舎の窓ガラスが割れたと言うのだ。

 なんだろうと近づいてみると割れた窓から三人が倒れているのが見えた。側面に回ってみると大きめの出入り口は開け放たれていて、そこに立っている時に僕がやって来た。

 空湖が証言したのはそれだけだ、ものの数分の事だ。

「という事は三人は空湖ちゃんが見つける直前に死んだって事かな」

「ガラスを割ってから、あのフォーメーションを組んで倒れたの? 窓から倒れた位置まで結構距離があったわよ」

「うーん」

 やっぱり無理があるか。室内には他にガラス製の物はなかった。あったのは内側から割られた窓だけだ。

「そもそも人はどうすれば、あんな風に倒れるんだ?」

 と言って携帯の写真を出す。結局何も聞かれなかったので証拠として提出する事もなかったが、何かあっては困るので消す事も出来ずにいた。

「なにそれ? コウ君、凄い物持ってるじゃない」

「携帯の事?」

「何やってるのかと思ったら写真だったのね。こんなに小さい、地球のテクノロジーとは思えない。もしかしてコウ君も宇宙人だったの?」

 適当に流し、どうやって撮るの? とせがむ空湖に適当に教えてから写真を見せる。

 体を引きつらせる様に伸ばして白目を剥いた遺体写真。正直あまり見ていていいものではない、早く解決して消してしまいたい。

「やっぱり普通じゃない、こんな死に方あり得ないよ」


「そう?」

 空湖は写真を見てあっさりと言う。

「何でなのか分かるの?」

「やってみないと分かんないけどね」

 空湖は押入れから何やら機械を持ち出してコンセントに繋いでいる。

 次に枕を取り出し、僕の後ろ方にこの辺かなと言いながら置く。

「じゃ、これ咥えて」

 と言って何かコードの繋がった棒を差し出した。分けもわからず言われるままに咥える。

 空湖は続けて僕の足も大きな洗濯バサミのような物で挟んだ。そして機械のダイヤルをカリカリと回している。

 なんだろう? 嘘発見器?

「じゃ、いくよ」

 ん? と思う間もなく全身に衝撃が走った。

「ぎっ!」

 と変な声を上げて意識が途切れる。

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