第4話 人がいなくなる
さて、そうこうしているうちに、私の霊感は成長し続け、今では一日に何度かは見えない誰かに声をかけられる。
ついつい返事をしてしまうのだが、これには大きな問題があって、幽霊達の声を無視し続けなければならなかった。なかなかに難しいことではあるが、そうしなければ噂がたつ。幽霊が出ると噂のある現場からは、ひとり、ひとりと発掘作業員がいなくなってしまうからだ。
決して神隠しにあっているわけではない。ただ、怖いから、人が現場に来なくなるだけだ。この噂が広がってしまえば、発掘作業はたちまち頓挫してしまう。彼らの力なくしては、作業は行えないのだ。
こんなに苦労して進めているのに、得体のしれない幽霊なんかに邪魔されてたまるかと、今日も私はその声に反応しつつも、無視を決め込んでいた。
だが、そうごまかされてくれない相手も多い。
「かみ……じょう……さん……上条さん……」
「……」
「上条さん……いい加減返事してくださいよ、聞こえているんでしょう?」
「……?」
「上条さん、次の現場の指示を下さいよ、最近、ぼうっとしていることが多いですね、どうかされたのではないですか?」
「あ、あ、ゴメンゴメン……現場の指示ね……」
危なかった、段々、幽霊の声と、現実の声に境がなくなってくる……このまま、自分はどこへ向かって行くのだろうかと不安になる。現場に不安が広がりつつある。それに、私自身も、今の様に幽霊の声が聞こえるだけで済むのだろうか……。声が聞こえるだけで、これまでの日常とは、かけ離れた別世界だ、これから先、何があってもおかしくはない。
仕事の悩み、声が聞こえる超常現象、そして、これから先の自分に何がふりかかるのか、不安を抱えたまま、今日も明日も、また、穴を堀り続けることになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます