第10話 生贄音頭だ勇者でワッショイ


 雲海のごとく眼下に立ち込めた煙が徐々に晴れていく様子を見て、アンドが呑気にウンドに言う。

「やあやあ、煙が薄くなってきていますな」

「ですな。しかしまだまだ足元は見えません。用心をした方がよろしいですな」

「ですな。しかし、あの勇者はどこにいるのでしょうな」

「逃げたとは思えませぬな。我等の目は煙の外もしっかり見てますからな。出ていけば流石に分かりますぞ」

「煙の動きは正直ですからな」

 機竜形を止めている間、アンドとウンドは眼下の煙の揺蕩う様子に常に注意を払っていた。これまでに、煙のうねりに線を引いたような変化は現れていない。

「しかし連中、煙の中から出る様子はありませんな。一体何をしているのか……」

「アンド殿は心配性ですな。機竜形に対抗できる手段など、奴等にはありませんぞ。ジルトールの誇る最先端重機に、弓矢や電撃が効く訳がありませんぞ」

「魔法はちと怖いですがな」

「機竜形をどうにかできる魔法は時間がかかりますぞ。すぐに使える魔法でどうにかされるようなもろいものではありますまい」

 ウンドの楽観的な発言を受けて、アンドは次第に気が楽になったらしくシートに背を預けた。

「それもそうですな。勇者など恐れるに足らず、ですな」

「ですな。……おや?」

 眼下の景色を見下ろしていたウンドが、煙の中のある一点を注視した。

「どうしましたかな?」

「あれを」

 ウンドが指差した先を、アンドも見る。

 雲海のごとく広がる煙の中で、ぼう、と人影が一つ浮かんでいた。足元にいくつも火を灯しているらしく、その影は煙の中にあって一層その長身を引き立てている。ベールを被っているらしく、腰に丈の長い布を巻いている様子も相まって、そのシルエットは女性らしさの際立ったものだった。

「あんな女いましたかな?」

「ウンド殿、何やら聞こえますぞ」

 アンドが気付いたものに、ウンドも聞きつける。

 それは風の音にも似た、重なるフルートの音色だった。聞く者にもの悲しさを感じさせるような曲調であり、冬の空気を表したようなものだ。

 アンドとウンドは事態が飲み込めず、怪訝な顔をする。辺りを見回すが、音の出どころらしいものは煙に隠れているのか見当たらない。

 やがて新たに、隙間風のようなバイオリンの音が上がり始めた。弦の音がフルートと混ざり、更に陰鬱なメロディーへと変わっていく。人影はそれに合わせ、天に助けを乞うようにその手を上げた。手は次第に下がり、自らの顔に触れ、顎、そして首へと伝っていき、胸の前を通る。その時には膝を付き、人影は力なくうな垂れる。

 悲観に暮れる女の心情を表すような一連の動きに、アンドとウンドは首を捻った。

「一体、何の催しでしょうな」

「まるで分かりませんぞ。しかしあの影……」

 人影をじっと見ていたウンドが、ぽつりとこぼす。

「なかなか惹かれますぞ」

 ウンドの一言に、アンドは耳を疑った。

「正気ですかな?」

「彼女は丸腰ですぞ。それに、こちらは機竜形。故事に則り、生贄としてこちらに命乞いをしているようにも見えますぞ」

「……」

 アンドはこれに同意できなかった。彼はウンドと比べて操縦に相当気を使う四つ足を担当している。瓜二つとはいえ、用心深さは彼の方が上だった。ウンドほど楽観的になれず、人影の動きに警戒する。

 音楽は静かに途切れ、人影は動かない。観衆の二人が沈黙を持て余したその矢先、今度は新たな音が上がった。

 ぽん。ぽん。ぽん、ぽかぼかぽか。

 逆さにした鍋の底を叩くような、間の抜けた軽い音。それは先ほどの悲観的な音楽の後に上がったからこそ、かえって陽気なものにも聞こえた。

 その音はどんどんペースを上げていき、やがてそのリズムに呼ばれるようにフルートが、そしてバイオリンが高らかに唄声を上げた。

 それはもはや、陽気な音楽。

 演奏に呼ばれるように、うな垂れていた人影が顔を上げ、ゆっくりと立ち上がった。

 音楽は互いにリズムを合わせていくように、一つのハーモニーとなって激しく、情熱的な曲へと変わっていく。人影の動きもまた、音楽に導かれるように激しく、煽情的なものへと変わった。

「ダンスですな」

「ダンスでしょうな」

 ウンドとアンドは、踊る人影に完全に見入っていた。

 人影が腰を振る度に腰布が、頭を振るたびにベールが翻る。伸びやかな肢体が波打つ様が、大きくひねられる胴の細さが人影をよりなまめかしく見せ、大きく揺れる胸元が二人の目を惹きつけた。一度くるりとその身が回り、ベールと腰布が大きく翻る。

 煙は今なお濃く、人影の実態は二人の目には届かない。なまじはっきり見えないからこそ想像の余地があり、人影を一際妖艶に見せていた。

「……アンド殿、近づきましょうぞ」

 アンドはこれに、さほど驚きはしなかった。ウンドならそう言うと、分かっていたからだ。

「……勇者の罠かもしれませんぞ?」

「どうせできるのは電撃だけですぞ。それも機竜形の首を持ち上げていれば防げますし、下げたとしても操縦席から出なければ問題はありますまい」

 機竜形の操縦席の窓にガラスはないが、だからといって操縦席の二人が感電するということはない。操縦席の感電対策も万全であり、電撃で機竜形が無力化されることもない。

 つまり、身を乗り出しさえしなければ、電撃に打たれる事はないのである。

「……ええ。気になってしまいますからな」

 アンドの同意を受けて、ウンドが機竜形の首を持ち上げ、尾をしならせた。そうして生まれた機体の振動を利用して、アンドが機竜形の足を動かす。重い足音と機体の各部で鉄のわずかに軋む音とを立てて、機竜形は歩みを始めた。

 足元は以前として煙に覆われているが、人影より遠い部分は濃度が薄まりつつあった。おかげでアンドは機竜形の足元を見ながら歩行に踏み切る事ができたのだ。

 機竜形は足元を確認するように、狭い歩幅で少しずつ人影へと近づいていく。ウンドは人影に近づくその歩みの遅さに焦れ、機竜形の首と尾とを大きくのけぞらせた。当然機体は揺れ、アンドは生じた慣性を前進に活かそうと四本足を操作するが、アンドの警戒心を表すように機竜形はむしろ踏みとどまろうとしてたたらを踏んだ。

「ウンド殿、焦り過ぎですぞ」

「アンド殿が警戒し過ぎなのですぞ」

 二人の連携に齟齬が生じ始め、機竜形もその動きを徐々に不安定なものへと変えていく。

 ぐらつく機竜形の動きや足音の変化を受けて、演奏に乱れが現れた。人影もこれに怯んだようだった。人影に逃げられると危惧したウンドが、アンドに声を張る。

「アンド殿、落ち着きましょうぞ」

「私は落ち着いてますぞ」

 首や尾を乱暴にしならせ、全身をぐらつかせながら歩く機竜形。トン単位の巨体がまるで疫病にかかったかのような不安定な足取りで煙を蹴散らしていく。

 なおも続く演奏の中、機竜形の鼻先はついに人影の頭上を越えた。そして四つ足を止める。

 操縦席から人影を見下ろすため、ウンドがレバーを操作して機竜形の首と尾とを下げる。機竜形の長い首は、今も踊り続ける人影のすぐそばに横たえられた。ずん、と重い音を立てて、人間の身長の二倍はあろう太さの鉄の首が地に沈む。

 人影は巨体が肉薄しても、なお踊りをやめなかった。

「ウンド殿、機体から出てはなりませぬぞ」

「承知してますぞ」

 相方の返事を受けて、アンドはレバーを操作し、ついに機竜形の足が止まった。煙は幾分晴れたとはいえ、人影を取り巻く辺りはまだ濃い。人影は機竜形の操縦席から見下ろす位置にあったため、アンドは機竜形の四つ足を曲げ、操縦席の高さを下げ始めた。

 ウンドは浮ついた笑みを浮かべているが、アンドには未だ警戒の色が残っている。

「勇者が煙に紛れているかもしれませんぞ」

「だとしても我等には銃がありますぞ。それにほら、演奏している連中も、ちらほら見え始めておりますぞ」

 ウンドが指差す前方に、アンドが目を向ける。

 次第に煙が晴れていく事で、草の茂る丘陵や石の陰で、楽器を構える人影がちらほら見えだしていた。

 二人の右手に見える地面のくぼみには、座ってフルートを奏でる金髪の少女と、すぐ近くで同様にフルートを構えている赤毛の少女がいた。さらに右にある離れた場所にある岩の影では、長身の修道女が立ってバイオリンを弾いていた。

 他に誰かいるのかと視線を左に向けたアンドは、空の鍋をいくつも並べてその底を叩き続ける男の姿を認めた。その顔に見覚えがあるのに気付き、それを指差してウンドに言う。

「あれは我が国の偵察員ではありませんかな?」

 ウンドも男を見ておお、と声をあげた。

「ですな。何をやってるのですかな」

「女達と演奏に興じておるようですな」

「我々の停泊地に上がり込んできて世話になりながら、こんな事に加担するとは」

「なってませんな」

 興じる、とアンドは言ったが、演奏を続ける四人は誰も機竜形を見ようとはせず、ひたすらに演奏に集中している様子だった。誰もが必死で、楽しむ様子は微塵もない。

 演奏を聴きながら顔ぶれを見回す二人だったが、ふとある事に気付く。それは操縦席の高さを下げている最中だからこそ気付けた事だった。

 女達の顔ぶれをよく見れば、全員が四人目のヒジャの勇者に同行している者達なのだ。報告で聞いた通りの顔だと感心すると同時に、もう一つ、別の事に気付く。

 勇者がいない。

「ウンド殿、勇者がいませんぞ」

 アンドの言葉を、ウンドは聞いていなかった。

 ウンドは踊り続ける人影を取り巻く煙が薄らいでいくのを見て、人影の実態に釘付けになっていたからだ。

 しかし彼の興奮は、一気に冷える事になる。

 背を向けている人影が被るのは修道女のケープ。詰め物をした、胸の帯。裸の上半身に、腰に巻かれた赤い外套。

 今まで妖艶に踊っていた人物の衣装はちぐはぐで、裸の腹は筋肉で構成された平らなもの。そしてその顔は、少しばかり太い眉とやや大きな口が特徴的な……

「……お、男ぉ!?」

 ウンドの声は、悲鳴に近かった。

 彼の声を聞きつけたその男、荒也は振り返ると、

「ハァイ」

 と言って、気さくに手を振った。

 これがウンドの癇に触れた。落ち着き払っていた顔がみるみる赤くなり、両手をわななかせる。

「貴様ぁ!」

 落ち着き払った態度から一転、ウンドは腰から銃を引き抜き荒也に銃口を向けた。眼前の機器類に足をかけ、身を乗り出して引き金にかけた指に力をかける。

「ウンド殿!」

 アンドが血相を変え、咄嗟にウンドの腕を掴み引き戻そうとする。

「邪魔するな!」

「いえ、違います!外に出ては……!」

 アンドの忠告の意味する所に、ウンドに理解する余裕はなかった。

 そんな時間も、なかった。

 機竜形の操縦席から身を乗り出したウンドを見て、荒也はにやりと笑って右手を突き出した。

「出ろぉっ!」

 竜の形を動かしていた二人は、一瞬現れた稲光によって同時に撃たれた。


 煙が晴れ、辺りが元の景色を取り戻す。草原を横断する道の真ん中で、荒也は身動きできずにいた。

「こ、腰が……」

 踊る囮の役目を果たした荒也は、膝を付き尻を突き出した格好で地に伏し腰を押さえていた。疲れからくる荒い呼吸が落ち着く気配は未だなく、着替える余裕もないので、即席の踊り子の格好のままである。汗ばんだ上半身に張り付く雑草の感触が、この上なく気持ち悪く感じられた。

 そんな彼の元に、楽器を抱えたエリザ達が近寄ってくる。

「何よ、腰痛めたの?」

 エリザが呆れたように尋ねると、荒也は息も絶え絶えに、いや、と首を横に振った。

「わ、わき腹が、固く、なって……。それと、尻と腿が、痛い」

 ああ、とマックジョイが合点がいったように声を上げた。

「肉離れかぁ?勇者がこれじゃ、ヒジャも形無しだな」

 意地悪く笑うマックジョイに、すっとアーシーが近づく。

「一発いっときます?」

 メリケンサックをはめる彼女を見て、マックジョイはさっと血相を変えた。

「い、いや失敬!ホント助かったよ感謝してる、だからホント、お願い殴らないで!」

 慌てて両手を挙げるマックジョイにアーシーはにっこり笑い、そのまま何もせずに彼の前を通り過ぎると、荒也の前で膝を付いた。

「代理様、お疲れ様です」

 荒也は起き上がる体力もなく、地面に額をつけたままこれに答えた。

「お、おお……。皆、よくあの案に、乗ってくれたな」

 なおも横たわり腰の辺りの筋肉をさする

 彼等五人の行動は、荒也の提案によるものだった。

 ここで少し、時間を遡る。


 近くにいる相手がどうにか影として見えるほどの煙の中、荒也は顔を寄せる他の四人にこう言った。

「いわば、生贄作戦だ。囮を用意して油断を誘い、近づかせて一瞬のスキを突く」

「ベタすぎねーか?」

 マックジョイの怪訝な声に、すぐククリマが口を挟む。

「でも、他にいい方法あるの?」

 マックジョイは少し黙り、その後そうか、と呟いた。

「……それで、囮は誰が?」

 アーシーが、その場の全員の疑問を代弁した。そして、女三人が互いを見やる。自薦は気が引け、かといって他薦もしづらい。三人とも、表情こそ互いに見えてはいないが、そんな心情から口を開くのにためらう様子は十分に表れていた。

 マックジョイは今も煙に隠れている三人を、品定めをするように見回す。見えていないため、覚えている顔を参考に意見を言った。

「聖女リリエンヌのはどうだ?美人だし、機竜形の二人もほっとかないだろ」

 指名され、息を詰まらせるアーシー。エリザとククリマが、彼女の方を見て息を詰まらせた。

 そこで、呆れたように言う者がいた。

「何真面目に選んでんだお前は」

 そう言ったのは、荒也だった。驚いたマックジョイが、彼を見る。

「お、お前が言うか?言い出しっぺだろ」

「そうだよ、言い出しっぺだ。だから、俺だよ」

 一拍の間。

 その後、言葉の意味を徐々に理解した四人が、やがて同時に、はあ?と声を上げた。

「いやいやいや、なんでだよ?囮っつったら、普通は美人を選ぶだろうが」

「この煙で顔なんか見える訳ねーだろ」

 あ、とマックジョイは思わず声を上げ、ぽんと手を叩いた。荒也は続ける。

「この煙を利用しない手はない。どうせ見えてないんだから、それっぽく動くならむしろ男の方が逆にらしくなるはずだ。まずは皆から衣装借りて、それっぽいシルエットを作る。それと、奴等と俺達はそうとう距離があるから、とにかく目を引くようにしなきゃならねぇ」

 これに、異論の声は出なかった。

「しかし、目を引くように、って言ってもなぁ……」

 マックジョイが提案に困る。全員が考え込む中、やがてククリマが口を開いた。

「演奏、どうかな?」

 これに、エリザが手を叩いた。

「それね」

「そうだ、俺達楽団だった。いや表向きはだが」

「そうなると代理様が囮なのは名采配ですね。私達が音楽であの竜に気付かせて、代理様が竜を引き寄せる寸法になります」

「曲はどうする?『歌姫の凱旋』?それとも『アライグマのフーガ』?」

「ククリマちゃん、もうちょっと官能的な曲にしようよ。『鎌を洗う女』とかどう?」

「え、それやらしい曲でしたっけ?」

 女三人の口が目に見えて軽くなる。荒也はそれに苦笑するも、悪い気はしていなかった。

 どうあれ、前向きになるのは良い事だ。

「一世一代の大芝居だ。失敗したり勘づかれたりしたら全部おじゃんだ。俺は向こうが気付くまで、踊る事しかできないぞ」

 三人が荒也の方を見て、ほぼ同時に頷いた。表情はいずれも見えないが、真摯な返事である事は荒也にはすぐに分かった。

「……ま、がんばれよ。俺はもう、お暇させてもらっ……!?」

 言いかけ、逃げようとしたマックジョイの手を、荒也が掴んだ。

「お前もやるんだよ」

「え」

「え、じゃないよスパイさん」

「打楽器が足りないのよ」

「今更無関係とは言わせませんよ」

 他の三人にまで口々に言われ、マックジョイは目を白黒させた。答えに窮する彼に、荒也はぼそっと言う。

「嫌だと言ったら」

「やりましょう」

 電撃を予感したマックジョイは、即座に了承したのだった。


「まさか万事うまくいくとはなぁ」

 呆れと感心の混ざった声で、マックジョイは地に伏せる機竜形を眺めそう呟いた。間近まで来てバレる、というのは予想していなかったが、成果を見れば些細な問題だ。

「しっかし、マイペースで通るあのコンビがあんな手で釣られるのか。……溜まってたのか?」

 勘ぐる彼をよそに、エリザが地表に横たわる機竜形の首の上に乗った。そして首を伝って機竜形の操縦席まで来ると、すぐにそこに潜り込み、そこで痙攣しているアンドとウンドとの両手足を縛りあげてしまった。

 一連の行動を見ていたマックジョイが、感心したようにおお、と声を上げる。

「ご丁寧なこったな。始末した方がいいんじゃねーの?」

 薄情とも取れる言葉に、エリザが眉をひそめて彼を見やる。

「仲間じゃないの?」

「その仲間に火ぃ噴いた連中だぞ。裏切り者として本国に報告しても、誰も文句は言わねーよ。で、どうなんだよ?」

「殺生が好きな訳ないでしょ。抵抗されたらそうしてる」

 それだけ言うと、彼女は縛り上げた二人を機竜形から放り捨てた後、操縦席から飛び降り、仲間たちの元へと着地した。

 アーシーが全員の集まったのを確認すると、よし、と声を張る。

「これでやっと前に進めますね。確認や水の件は村の方々にお任せして、私達は先を急ぎましょうか」

 これに、なおも倒れたままの荒也が抗議するように手首から先だけで地面をぱん、ぱんと叩いた。気付いたアーシーが、ばつの悪い顔をする。

「……代理様がお疲れみたいですね。今日はもう歩けませんか?」

 しゃがんで顔を覗き込む彼女に、荒也は緩慢な動きでわずかに首を縦に振った。息は疲れからか、浅く規則的なものとなっていた。

「これは仕方ないですね。じゃあ、ここで野営にしましょうか。幸い、この竜が暴れたおかげで辺りに敵はいないでしょうし」

 目の前で言われたこの台詞に、マックジョイが頷きかけ、そして気付くと慌てて首を横に振った。

「いやいやいや、俺!ジルトール!」

「ああ、そうでしたね。でも竜退治に協力してもらいましたし、あなたも今からやりあおうとは思ってないでしょう?」

 温和な言葉とは裏腹に、彼女の手にはメリケンサックがはまったままだった。

 下手な事を言おうものなら、その手が自分に飛んでくる。それを察したマックジョイは即座に何度も頷いてみせた。

「今日はもう早めに寝ましょう。日も、そろそろ沈みそうですし」

 アーシーの言う通り、すでに日は西の山の陰へと差し掛かっており、空も赤みがかったものへと変わっていた。雲が影をかぶり始め、見る者に夜の予感を感じさせる。

「……じゃあ、俺ももうお暇するぞ。こんな所、誰かに見られたら面倒だからな」

 返事も聞かずに、マックジョイは荒也達に背を向けその場を去っていった。これを追う者は、いなかった。

 その背中を見送っていたククリマが、ふと気づく。

「あ」

「どうしたの?」

 エリザが尋ねる。

「そういえば、ジルトールの人達って、他にもたくさんいたよね?」

 言われてエリザも、そしてアーシーも思い出した。荒也も気付いたが、表情や態度にそれを表す余裕はなかった。

 全員の目が機竜形のいた森の方へと向けられる。黒く焦げた木々の間には今も濃い煙が充満しており、煙は大樹の幹のごとく上へと立ち上っていく様子が見てとれた。

 ククリマの言う通り、機竜形のいた森の奥にある湖には何人ものジルトールの人間がいた。機竜形の整備や周辺警備のためだ。その彼等も、マックジョイと同様、機竜形に追われて逃げ出していた。

 今、荒也達の周辺には、マックジョイを除いて人影は見当たらない。

「す、スパイさん!」

 アーシーが大声でマックジョイを呼ぶ。彼は律義に足を止め、彼女等の方を振り返った。

「マックジョイだ!で、何だ?」

「他のジルトールの方は、どこに逃げたんですか?」

 問いかけるアーシーだったが、全く予想できていない訳ではなかった。この質問は、確認のためだ。

 マックジョイは怪訝な顔をしていたが、少し考え込むような間の後、彼女にこう言った。

「そりゃあ、人里だろ。機竜形が倒される訳なんざないと思ってたろうしな」

 これに、アーシー達の顔色がさっと青くなる。

「人里って……!」

 アーシーの呟きは、震えた声音となっていた。

 この周辺にある、人の住める場所。

 それはただ一か所、ガミカの村に他ならない。

 自分達が今日立ち寄ったばかりの村が危機に晒される可能性を前にして、エリザとククリマが視線でアーシーの決断を求める。彼女の決断は早かった。

「戻りましょう!代理様、立ってください!」

 彼女は踵を返すと、倒れている荒也の腕を掴んで上体を起こし、その腕を自分の首に回して立ち上がらせる。固くなった荒也の腰や脚の筋肉が痛みを訴えるが、荒也も自力で立とうと足先で踏ん張った。それでも体を支える余力がないため、アーシーはのしかかる彼の体重に怯み、思わず腰を落とした。

 エリザがすぐさま荒也の反対側の腕を掴んで支え、それでどうにか彼を立たせられている状態となった。

 これでどうにか歩く事はできたが、希望する速さには到底及ばない。

「アンタ、本当に動けないの!?」

 エリザが苛立ちをぶつけるが、荒也は浅い呼吸のまま彼女を見て「すまん」とだけ、か細い声でそう返した。掴む腕から感じる力も弱弱しい。当人の苦悩を読み取ったエリザは何も言えなくなり、より奮起して荒也を前へ引っ張っていく。

 荒也を支えるポジションを失ったククリマは、三人を見やりながら進む先を示すように彼らの前に立ち、ペースを合わせて前へと歩いていく。思うように進まない様子に、彼女の顔に焦りから困惑の色が浮かび始める。

「そんな調子じゃ、間に合わねーぞ」

 荒也達の様子を黙って見ていたマックジョイが、率直かつ無責任な言葉を飛ばした。

 かっとなったエリザが、彼の方を振り返る。

「じゃあどうしろってのよ!」

「俺に聞くかよ。勇者様方ならどうにでもできるんじゃねーの?」

 そう言ってマックジョイは荒也を見る。立つ事すら覚束ない彼は、反論の言葉すら出せないでいた。

 そこで、あ、と声が上がった。

「そうだ、勇者様だ!代理さんは勇者様だった!」

 ククリマのその言葉に、他の全員がぽかんとする。

「……そうですよ?今頃気付いたんですか?」

 アーシーが怪訝な顔で言う。ククリマは彼女に近づくと、先ほどまでと打って変わってにっこりとして、こう言った。

「ほら、私達は勇者様の従者でしょ?だったら勇者様をきちんと担ぎ上げないと」

 その後、マックジョイの方を見る。

「今日ばっかりは、スパイさんにも協力してもらうからね」

「……え?」


 日が沈み、薄暗くなった空が次第に青から黒へと変容していく頃。

 ガミカの村では怒号と喧騒、そして悲鳴が村一帯に広がっていた。

「抵抗するな!さもなくば、この地一帯は貴様等の血で染まる事になる!」

 白い甲冑を来たジルトールの騎士が声を張り上げ剣を掲げる。その騎士こそ、ガミカの村に近い湖に居座る機竜形の整備・警備を担う騎士団の指揮官である。

 その号令に続くように、他の騎士達が剣を振り上げて散り散りに走り、居合わせた村の住民達に殺到する。火のついた松明を持って付き従うのは機竜形の整備員達であり、炎を伴ない夜に迫る騎士の一団はさながら幽鬼の行軍であった。

 この襲撃は村の住民達にとって不意の出来事であり、彼等は抵抗する術もなくただ降伏する他なかった。

 やがてほぼ全ての住民達が剣によって脅され、大通りに並べられ膝を付かされた。その前を、騎士達の剣に囲まれて村長が指揮官の元へと連れ出される。連れてこられた村長は、待ち構えていた指揮官の前で膝を付かされ、相手を見上げる格好となった。

 指揮官が村長に言う。

「お前が村長か。只今よりこの村はジルトールの管轄下に置く。異論は聞かん」

 指揮官が手にした剣の刃を、村長の首筋に添える。

「……日も沈んで間もないのに、ずいぶんと急に来られましたな。まるで、何かに追われて来られたかのようだ」

 村長の、挑発とも取れる言葉に、指揮官の口の端が引きつった。

「おいぼれが随分な口をきく」

「夕飯時に押しかけられれば、気も荒くなります」

 指揮官は面白くもなさそうに、なるほど、と呟いた。

「度胸のある爺だ。……おい」

 すぐそばに立つ、松明を持つ数人の部下を見やる。部下達は頷くと、手近な民家へと歩み寄っていった。その様子を見た村長の表情が陰る。

「な、何を……」

「この村には今、水が足りないと聞く。井戸はあるが、汲み取りには手間がかかるだろうな」

 松明を持つ整備員達が木造民家の前で足を止め、ゆっくりと手にした松明を傾ける。灯された炎が危うい距離でちろちろと壁を舐め始めた。一連の出来事を見ていた村長や村の住民達の顔が、さっと青くなる。

「や、やめろ!やめてくれ!」

「価値のない拠点は燃やすに限る」

 指揮官が松明を持つ部下達を見やり、もう片方の手を掲げる。合図を出すためのその手に一同の目が集まり、村の住民達が恐怖に慄く。その恐怖をより一層煽るように、指揮官は溜めを入れる。次第に笑いがこみ上げてきた頃、そろそろ合図と共に腕を振り下ろそうと考えた、その時だ。

 ……わーっせ、わーっせ……

 妙な声が聞こえ始めた。

「……?」

 遠方から聞こえるその声に、指揮官はおろか、村長や住人達を含めた全ての者達が眉をひそめる。

「何の声だ?」

 指揮官が村長に問うも、村長も首を横に振る。

 わーっせ、わーっせ……

 声は次第に近づいて来る。

 次第にこれが、数人の若者が揃って声を上げているものだと分かるようになり、何人かが声のする方向に気付きそちらを見やった。

「あ。あれだ!」

 ジルトールの騎士の一人が、村の入り口を指差した。一同の注目が、そこに向く。

「わーっせ!わーっせ!」

 道を行き近づいて来る一団を見て、皆があっけに取られた。

 赤い髪の少女と、修道女、弓を担いだ少女と、ジルトールの偵察員。

 その四人が、鉄の棒と板で作った担ぎ台を神輿のように肩で持ち上げ、声を揃えながら歩いてきていたのだ。更に、担ぎ台の上に載っているのは、倒れている一人の男。頭に修道女のケープを被り、裸の上半身の胸元には詰め物をした帯を、腰には赤い外套を巻いているといった風体で、疲れ切って起きる様子もない。担がれているその男の奇妙な風体のせいで、一団の異様さが一層際立っていた。

「わーっせ!わーっせ!」

 四人に揺られて、心なしか男の顔色が悪くなっているようである。

 珍妙な一団は村へ入ると、揃ってその場で足を止めた。担ぎ台の上にいる男が、ううっぷ、と小さく声を漏らす。

 前の方で担ぎ台を持ち上げていた赤い髪の少女が、一同の前で大きく声を上げた。

「やあやあ皆さん!お待たせしました!ここにおわせし勇者様、お望み通り竜を討伐して参りました!」

 一拍の間。

 松明のじりじり燃える音だけが静寂に響く。

 やがて言葉の意味する所を理解した者から、徐々にどよめきが上がった。

「あ、あの竜を!?」

「本当に、本当に!?」

「あの変な恰好してるのが?」

「虫の息なんだけど……」

「バカな!」

 驚きを口にしたのは村民だけではなく、ジルトールの騎士や整備員達も含まれていた。村長が目を丸くして勇者達を見る。その勇者は担ぎ台の上で干物のように横たわったままだったが、それがかえってかつての死闘を予想させ、少女の宣告に真実味を与えた。

「ま、まさか本当にあの竜を……!?」

「有り得ん!」

 そう言ったのは、指揮官だった。村長から剣を離し、その切っ先を担ぎ台の一団に向ける。

「機竜形をたかだか四、五人で下せるなど、大法螺も大概にしろ!」

 あまりの剣幕に少女が怯む。しかしそこへ、担ぎ台を背負うジルトールの偵察員が間に入った。

「いやぁ、信じられないでしょうが、本当なんですよ」

 指揮官の目が彼に向く。

「……?お前は確か、偵察員第117号だったか。なんでそいつ等と一緒にいる?」

「いやぁ、成り行きで。ですが、あなた方を追い立てた機竜形を沈黙させたのは本当ですよ。アンドもウンドも、今は原っぱで寝ています」

 偵察員第117号、つまりマックジョイのその報告に、指揮官はおろか、ジルトールの騎士達や整備員達の表情がこわばった。

「た、確かか!?」

「ええ。竜の脅威は、去っちまいました」

 その言葉を受けて、村民達から歓喜の声が上がった。

 それを見計らい、修道女が声を張る。

「それでは皆さん、勇者様に感謝を!」

 その声に、村民が皆頭を下げた。村長も、例に漏れずだ。

 立つのは、担ぎ台を担ぐ四人と、戸惑うジルトールの者のみ。

「ほら、今!」

 弓を背負う少女の声で、担ぎ台の四人が同時に膝を付く。

 倒れたままの勇者、荒也は声も出せぬほどに疲弊していたが、少しだけ片手を上げた。

 そしてそのまま、あらん限りの力で、出ろ、と念じた。

 閃光。そして、弾ける轟音。

 その後訪れた静寂の中で、二本の足で立つ者は誰もいなかった。


 朝を迎えたガミカの村で、荒也達は村を立とうと村の出口に集まっていた。村中の人々が彼等の前に立ち、晴れやかな顔を彼等に向けていた。最前列にいる村長が頭を下げる。

「昨日は本当にありがとうございました。竜はおろか、村を襲うジルトールの者達まで倒していただいて、もはや感謝の言葉が尽きません」

 礼を述べる老人の前で、荒也がいやいやと手を振る。

「元はと言えば俺達が撒いた種のようなものです。その始末をしただけの事で、礼を言われる程の事ではありません」

「いえいえ、竜の脅威が去った事で我々も過ごしやすくなります。ジルトールの軍団も無力化して頂けて、感謝の言葉も足りません」

 村長が改めて頭を深々と下げた。荒也は謙遜しようと口を開きかけるが、それが村の人々の喜びを損ねると考え、あえて話題を変える。

「と、ところでですね」

「んん?」

「この村で捕えたあのドルイドや騎士団の連中は、今どうしてるんですか?」

 これを聞き、老人が真顔になる。そして一言。

「……知りたいんですか?」

「いえ、やっぱりいいです」

 不穏な返答の予感に、荒也は即座に断った。これに、村長が笑う。

「はっはっは、冗談ですよ。連中は揃って村の地下牢に入れています。いつかジルトールからの迎えが来るまで、『もてなし』という建前が通る程度には良い扱いはしますよ」

 思いのほか穏当な答えに、荒也は安堵した。

「……では、俺達はこれで」

 荒也と他の四人が揃って村長に頭を下げ、踵を返した。村長や村の住民達に見送られ、荒也達はガミカの村を後にする。

 しばらく歩き、村が見えなくなった頃、荒也とエリザ、ククリマとアーシーが揃って同じ方向を見た。

「……で、なんでお前いるの?」

 そう問われた残る一人、マックジョイが今更のように気付いた。

「え?」

「え?」

 戸惑い。その後の沈黙。

 やがてお互いが自分の立場と相手との関係をようやく思い出せた頃。

「じゃあな勇者ぁ!」

 マックジョイが意気込みと共に腰から銃を引き抜き、銃口を突き付ける。しかしそれより早く荒也の電撃が彼を撃ち、マックジョイは膝から後ろへと崩れ落ちた。

 マックジョイが痙攣するのを見届けると、荒也は彼の手元まで来てしゃがみこむ。

「さて、恒例行事だ」

 わななくマックジョイの手から強引に銃を取り上げ、弾の込められたシリンダー部分を横に外す。その後銃を振ってシリンダーから全ての弾を自分の手の平へと落とした。ちゃらちゃらと音を立てて、四つ全てが零れ落ちる。

「……よし、四つか。皆一つずつ取ってくれ」

 掌を差し出した荒也から、エリザ達は言われた通り一つずつ銃弾を受け取った。

 手にした銃弾をまじまじと見る三人。ククリマはその薄い金色に似た輝きに感心したようにおお、と声を漏らす。対して、エリザとアーシーは手にしたものの軽さと用途の読めない形状に首を捻っている。

「これがホントに危ないものなの?」

 怪訝そうに聞くエリザに、荒也は真面目な顔になって答えた。

「これは俺の国じゃあ、危険過ぎて流通も許されない代物だ。火薬が詰まってるから爆発もしかねんぞ」

「爆発、ですか?」

 アーシーが物騒な単語に耳を留めるが、自分が手にしているものとそれとを結びつけられず更に首を捻った。エリザやククリマも同様らしく、表情にすっきりしないものを浮かべている。

「……まあ、いいか。とにかく、好きな方向に投げるぞ」

 荒也の指示で、四人は思い思いの方向を向いた。結果、四方を見る形になり、銃弾は四方向へと放り投げられていった。ちりん、ちゃりん、という音を立てて、ある銃弾は茂みに隠れ、またある銃弾は岩にぶつかって高く跳ねるや岩の割れ目に飛び込む。他の二つも地面の隆起に消え、もはやどこにあるのかも分からなくなる。

「よし、行くか」

 荒也の一声で、全員が行かんとする方向を見る。ジルトール本国へと至る道を見る四人だが、ふとエリザが荒也に声をかける。

「アンタ、まだ疲れてない?」

「ん?いいや、しっかり食ってしっかり寝たし、もう平気だぞ」

 彼の言葉に嘘はない。昨晩に騎士団を制圧した後、村の好意で上等な食事や宿が無料で用意され、そのおかげで疲れは完全に抜けていた。

「そ、そう。ならいいけど……」

 それきりエリザは何も言わず、荒也の隣を横切ってさっさと前に出てしまった。荒也が彼女の反応を図りかね、首を捻る。

「心配されてるんですよ、代理様。好かれてますね」

 アーシーがふふ、と笑みをこぼし、荒也を追い抜きエリザを追った。

「ほら、急ぐよ代理さん」

 ククリマが速足で先の二人に続いた。

 三人が先を行く様子を見ながら、荒也は聞かされた言葉を反芻する。

「好かれてる、ねぇ……」

 悪い気はしなかったが、彼には引っかかるものがあった。

 今日までの旅で、三人とは同じ危機を潜り抜けてきた。最初の頃に感じていた、信頼する事への不安はもうない。三人からも、少なくとも嫌われてはいないのは分かる。

 しかし、今日に至るまで、彼女達から名前で呼ばれた事はない。

「……勇者代理が、だよなぁ……」

 そう一人ごち、荒也は三人の後を追った。


 道から外れた草原の片隅で、両手足を縛られた二人の男が並んで空を見上げている。後ろ手に縛られているせいで手は前に出せず、足首を縛られているせいで立つのも難儀な状態だ。

「……アンド殿」

 一人が、隣にいるもう一人に声をかける。

「なんでしょう?」

「……面目ない」

「今更ですな」

「ええ、今更ですぞ」

 互いに声を荒げる事もなければ、嘆くこともない。全ては過ぎた事だと、互いが納得していたからだ。

「機竜形などに乗って、いささか増長していたようですぞ」

「全くですな」

「全くですぞ」

 再び沈黙。しかしすぐにウンドが口を開いた。

「もしもあれが完成していれば、我々が乗っていたのでしょうな」

「あれ、ですかな」

「ええ、あれですぞ」

 アンドとウンドは空を見上げ、やがてぽつりと同じ言葉を呟いた。

「「戦闘機……」」

 二人は黙って空を見上げ、思い出したようにぽつりと続ける。

「我等の先人、撃墜王フルメールのように空を飛ぶ日を待つべきでしたな」

「全くですな」

 呑気な事を言いながら、二人は同時に鼻の下の髭がむず痒くなったのに身をよじらせた。


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