「結婚前夜」
最終話ということで。今夜は怖いわけではないが実体験した不思議な話。
今ある私の実家というのは祖父母が住んでいた家に二人が亡くなった後、家族全員で移り住んだ場所である。それ故、広くはあったがかなり古い家だった。
これは私が結婚することになった時の話。
私の両親は共働きで常に忙しく、近くに住んでいた祖父母によくお世話になっていた。時に優しかったが、かなり厳しい人たちだったのを覚えている。
祖父母が住んでいたのは四階建てのビルの四階で、よくそこでご飯を食べさせてもらっていた。一時期だが、空いてる部屋に居候していた時代もある。
そんな祖父母が亡くなり、ウチの家族が移り住んだ。四階の祖父母の部屋には両親が住み、下の階には兄や私が入る事になった。
時は流れ兄が家を出、私も結婚が決まり家を出る事になった。
私の結婚式の前日、既に別の場所で暮らしていたのだが式場が実家から近いこともあって一人で実家に泊まっていた。
その夜、夢を見た。
現実と同じく実家の二階にいる。すると誰かに呼ばれて三階に上がる
三階の部屋には祖父母が並んで地面に正座しておりいつもの厳しい顔をしている。
「座りなさい」
祖母がそう言って地面を軽く叩く。
私は有無を言わず地面に正座する。
二人とも厳しい顔つきは生きている時とまったく変わらない。祖父は口をへの字に結んでひと言も喋らない。祖母はこちらを射抜く様な目をしている。
私は思わず姿勢を直す。
すると、祖母がひと言。
「おめでとう」
それに続き祖父もひと言。
「おめでとう」
「しっかりおやんなさい」
「ありがとうございます」
私は夢の中でそう言って頭を下げた。
それで目が覚めた。朝だった。
これと言って何があったワケではない。ただ結婚式の前夜に見る夢としては、なかなかだなと思った。
余談だが母にこの話をしたところ、思ったより感動せずに「あらそう」とだけ言っていた。
「でもなんで三階だったんだろう。住んでたのは四階のイメージなのに」
と私が言うと
「今はあたし達(両親)が住んでるから遠慮してんのよ、お母さんたち。らしいわねえ」
と笑っていた。
仮にこの先、私に子供が出来て結婚する事になったら、私の両親はその子の夢に出て来てくれるだろうか。その時両親は気を遣って、三階にいてくれるだろうか。今から楽しみである。
数年前に実際に体験した話。
了
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