「幽霊を見た話」
前回に続き短すぎる話をいくつか。
前回も書いたが、幽霊を見た事があるという人は意外にも少なかった。しかも、はっきり肉眼でとなるとなお少ない。幽霊に出会うというのはそれだけ貴重な体験なのかもしれない。
「幽霊をみた話」
地元の後輩から聞いた話。
家族で古い一軒家に引っ越した時の話。
はじめにソレを見たのは後輩のお姉さんで、まだ引っ越してから間もない時だったそうだ。
新居で一人、留守番していた時だったそうだ。
トイレに入ろうと思った時、家の中に妙に人の気配を感じた。しかしたまにある勘違いだと思ったので気にせずトイレに入った。
それが勘違いではないと分かったのはトイレから出た時である。
目の前を、透き通った見ず知らずのお爺さんが横切ったのだ。
これには相当驚かされたのだが、どういうわけか怖いという気持ちにはならなかったそうだ。
恐らく八十歳前後の頭の禿げ上がったお爺さん。とにかく音もなく、スッと歩いている。
しかも同じ場所を何度も何度も繰り返し。じっと見ていたらそのうち消えてしまったそうだ。
もちろん家族にそれを話したが容易には信じてもらえなかったし、第一そんなものどうすればいいのか誰も分からなかった。ひとまず特にこれと言って害がある訳でもなかったので放っておくことになった。
家族が引っ越すまでの約二年間。結局、後輩を含めた全員がその透き通ったお爺さんを目撃するのだがやはりこれと言って害はなかったそうだ。
そして何故か、家族以外の人には絶対に見えなかったそうだ。
同じく別の後輩から聞いた話。
ある時会社の出張があってよくある大手のビジネスホテルに泊まった時のこと。
夜遅く帰ってきて疲れたので風呂に入ろうと思った。
かなり狭いユニットバスでうんざりするほどだったらしい。狭いので湯船の縁に腰をかけて頭を洗っていた。シャワーは出しっ放し。
風呂で頭を洗っていると、後ろに誰かいる気がするんだよなあ。などと考えていた。すると、本当に立っていたのである。しかも後ろではなく目の前に。
下を向いていてシャンプーをしていたのだが、誰かの両足だけがくっきりと視界に入っている。妙に生白い二本の足。細い、恐らく女性の物だ。
足は立ったままでずっと動かない。後輩も怖くて動けず、ひたすら頭を洗っていたそうだ。シャワーの音だけが浴室に響いている。
そのうちシャンプーの泡が垂れてきて、目に入りそうになってきた。痛い。目を瞑ってしまいそうだ。でも怖くて閉じられない。でも痛い。いよいよ我慢が出来なくなり、目を閉じてしまった。
手探りでシャワーホースを掴み、急いで洗い流した。
恐る恐る目を開けた時にはそこには誰もいなかったそうだ。
あまりの怖さにすぐホテルを飛び出して、次の日が仕事にも関わらず朝まで開いている飲み屋で過ごしたそうだ。
それから何度かビジネスホテルに泊まる機会はあったが、風呂で頭を洗う時は絶対に目を開けないらしい。
地元の後輩から実際に聞いた話。
了
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