汚れた靴底で人生の細片を踏みにじる

ささやか

生存戦線

 正しさにあふれた街では呼吸するにも正しさが必要だ。

 買いだめしていたポテトチップスを貪る。ふえる贅肉。ひとりきりの部屋でほんのかすかに蛍光灯のひかりがちらつく。ああ、汚れちゃったなって人さし指をなめてみじめ。ねえ、積木細工にしては脆すぎる。それが心だよ。

 オナニーをすれば自分がひとりだってわかる。別にセックスをすれば救われるわけじゃないけれど、それくらいはしたかったかな。救われたいと思っている。息を吸って救われたい。息を吐いて救われたい。それは間違っているよ、わかっている。


 正しさにあふれた街では生きているにも正しさが必要だ。

「わかっているから、もうじき死ぬから、どうかそれで許してくれないか」

 そうやって呼吸困難にあえぐ君が被っているビニール袋をはぎとって、そこではないどこかに連れていくよ。見てくれ、この醜い間違いだらけの私を。救ってほしいと駄々をこねていた私を。それでも生きているからコカ・コーラでも飲んで美味しいと思ってくれないか。


 間違いにあふれた私達に正しさが必要だというなら、そんなことをわめく肥溜頭どもに中指をたてることも正しささ。ファッキュー。笑おうぜ、それができないならせめて泣こうぜ。崩れ散った感情片でも握りしめていれば価値はあるから。


 コンビニエンスストアは煌々と輝いて深夜3時の暗闇すら許さず。正しさを持っていなければきっと否定されるだろう。それでもその光のなかへと歩いていくんだ。

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