木曜日:三題噺「かき氷 / 提灯 / 浴衣」
ストローをさくりと刺すと、端から溶けていく氷に、提灯の光が赤く反射した。
「かき氷、ありがとう」
「ああ。ゆっくりお食べ」
孫の頭をゆったりと撫で、和尚はふうと息を吐いて深く腰掛ける。暑さが鳴りを潜める夏の夜ながら、肌に浴衣に汗がじわりと滲みゆく。
人の熱気と機械の熱と、躍動感ある生命力に感服だ。
浴衣に慣れぬ子供は裾に氷を落として飛び跳ね、和尚の肩に衝突する。困ったものだと手を掛けて、ぬらりと摘み出してやる。
へへと笑う歯抜けの顔はあどけなく、無心に頬張る姿は愛おしい。
赤々と輝き踊る人の影は遠く、彼我の境は三途の川にも似ている。
「夏は良いなあ、お前」
頬杖をついて、和尚は膝上の猫の背に指先を通すのだった。
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