月曜日:書き出しお題

月曜:運試しだと思って



 運試しだと思って、下駄を放り投げた。カンと音を立ててぶつかった先は木の幹で、振動で音のカーテンに開きが生まれる。

「そこだ!」

 虫取り網を振り回す子供の背後、小気味好く音を立てて小枝を割りながら、猫は機嫌よく歩いていた。人の耳には騒がしく聞こえる蝉の声も、猫の耳にはなんて事のない日常である。

 にぼしの尻尾を大事そうに舐めながら、ごろりと腹を土の上に横たえる。湿気を含んだ土は、晴れの下の草原と同じくらい柔らかい。

「待て!」

 長閑な昼下がりに欠伸をしたところで、子供の足が見事に猫の尻尾を踏んだ。

 和尚が傷だらけの孫に驚くのは、それから一時間後のことである。

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