掌編

森越苹果

1、和尚と化け猫

日曜日:書き出しお題

日曜:夏休みも半分が過ぎた頃。



 夏休みも半分が過ぎた頃。和尚の孫も毎日の修行とやらで大分宿題が進んだらしい。お盆が近くなり大人達が忙しくなったのをこれ幸いにと、虫取り網と籠を携えて部屋を抜け出すことが増えていた。彼自身は気付いていないが大人の半分は彼の後ろ姿を見守っていて、呼び止めない優しさで健やかな成長を応援しているようだった。

 あまりの呑気さに開けた口から声を上げると、通りかかった和尚がこそこそと猫の額を撫でていく。

「今日もありがとうよ」

 和尚の中では猫もまた大人の内に含まれているようで、どこからともなく取り出した煮干しを添えて仕事に戻る。ナアとまた一つ鳴いて返事をし、猫はカリカリと味の詰まった煮干しを噛んだ。

 蝉の声は騒がしく、彼の姿は、瞳の上で輝いていた。

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