激闘
*
西方最大の平野ドルストラ。各所で激闘が繰り広げられている最前線の地で、テナ学院の教師バレリアと魔戦将軍ダーウィンが対峙する。
「……」
赤髪の美女が、軽やかな鎧を着てトントンと跳躍する。一方、雄々しい漆黒の鎧を纏う魔法戦士は、その佇まいだけで禍々しさを撒き散らす。
魔将軍ダーウィンの魔杖は、
「……カク・ズのそれに近いのかもしれないな」
バレリアは冷静につぶやく。ただ、先ほどの戦いを見ていて異なるのは、魔将軍ダーウィンは、どれだけのダメージを加えても無尽蔵に回復し続けるという点だ。
カク・ズのように、短期決戦でしか真価を発揮しない訳ではない。
彼女の魔杖は
「……あれから、5年か」
かつて、期待を込めてヴォルト=ドネアから賜った大業物。何度返しに行っても、受け取ってもらえなかったのは、再び彼女が再び戦場に戻ることを見越していたのだろうか。
「さて、感傷に浸ってないで、やるかね……一の型、
バレリアは、静なる動作で
「シャアアアアアアアアアアアアアアアッ」
「……」
速い。
魔将軍ダーウィンは、奇異な叫び声とともにバレリアの元へと突っ込んでくる。その速さは、明らかに人のレベルを超えたものだ。
だが。
バレリアは、軽々とその高速攻撃を躱し続ける。目線、筋肉の動き、動作。それらから敵の行動パターンを予測し、事前に回避の動きを取ることができる。
彼女の才は、武という技術を凝縮し、達人の域まで昇華していた。
「ウハハハハハハハハハハハハッ! 避けるだけか! そうであれば、貴様は、やはり大言吐きの愚か者だな!」
「……」
意識がハッキリしているところも厄介だ。思考ができるということは、いずれ、バレリアの行動パターンを読み取り、動きを変えてくるだろう。
さすがは、大国のトップ級。
だが。
すでに、
魔将軍ダーウィンが、一旦、距離を取った時。ガクンと身体が崩れ落ちる。
「手足の腱が……斬られてる?」
「気づくのが遅いな。痛覚もないのか」
「……くははははははははははははははははははははははははっ! くははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ!」
「……」
それでも。
魔将軍ダーウィンは。
嬉々として、鬼鬼として、
その振る舞いは、紛れもなく
「面白いな貴様はっ! 早く屈服させて手足ちょん切って、ガンガン犯して、ヒィヒィ泣かせてえええええーーーーーーーーーー!」
そう叫び。
先ほどと同じ……いや、先ほど以上の速度でバレリアに向かって突っ込んでくる。
「くっ……」
回復の速度が、尋常じゃない。いや、回復した手足が、それ以上に補強されているような感覚さえある。
これが、特級宝珠の大業物。
バレリアは、先ほどと変わらず
その時。
一つのナイフのようなモノが、地面に突き刺さる。
「……」
バレリアは、即座に後ろへと跳躍し、魔戦将軍ダーウィンと距離を取ろうとする。
だが。
間髪入れずに、
「ニの型……
紅刀の柄の部分を当てた瞬間、魔戦将軍の身体が大きく吹き飛ぶ。
「ぐははははははっ! そんな小細工……っ」
不敵に笑いながら着地の体制を取ろうとした瞬間、魔戦将軍ダーウィンの身体が止まる。
いつのまにか、地面には他に4本……彼を中心として五芒星を描くように突き刺さっていた。
「さすがは、戦場の隼。見事に合わせてきたな」
戦場に到着したのは、イリス連合国の大将軍ギザールだった。
彼の魔杖は
ギザールは、小型の投げナイフのような魔杖を5本を放った。
しかし、この魔杖の真価はもう1つの能力にある。
さらに、
広範囲の捕縛魔法。
「不死のヤツに対しては、こうやって動けなくしてやるのがいいんだ」
「……それが、容易く遂行できるのは、さすがは雷鳴将軍と言ったところですか」
バレリアは、ギザールに対して微笑む。
「がっ……ぐっ……ふざけるなぁあああああっ!」
魔将軍ダーウィンは、力任せにもがこうとするが、空中で身体を封じられているので身動きが取れない。
「貴様らぁあああああかあ! ボサっとしてないで助けろおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
彼が叫び散らすと、支配ノ
「まあ、当然そうなるわな」
「……ですね」
背中合わせになったギザールとバレリアは、それぞれ
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