弾幕
*
「よし!」
イリス連合国第5軍軍長のザラオスは思わず声を出した。対ヘーゼン=ハイム用の魔杖封じが、功を奏した。
どれだけ強大な魔法でも、相性によっては封じることができる。これで、あの強大な魔法使いが数千の死兵を召喚する魔法を放てなくなった。
さらに。
「放て放て放て!」
魔法の弾幕。四方八方から五月雨のように。ヘーゼンの元に魔法弾が一斉に降り注ぐ。次々と魔法使いたちが集まってきて、秒間で数千発の魔法を食らわせる。
その物凄い数の魔法で、周囲は視界が見えなくなった。
「クド=ベル将軍の情報が役に立ったな」
腕を組みながら、ラグドン将軍がつぶやいた。このまま間髪入れずに、魔法弾を浴びせ続ける。身動きが取れない状態で攻撃を続けて、その間に将軍、軍長たちが集まりトドメを刺す。
今回放っている魔法弾は主に火属性。相性としては良く、効果的に魔力を減らしていくはずだ。所詮は、多勢に無勢。圧倒的な戦力を持って、個を殲滅していけばいい。
クド=ベル将軍は、よい役割をした。あれほどの狂戦士が2日目以降もすぐに出るとは思えない。後は、持久戦を持ってヘーゼンの魔力を削り、仕留めていく。
イリス連合国は強国だ。ノクタール国のように、個人頼りではない。ヘーゼン=ハイムさえ仕留めれば、戦略的にも破綻するだろう。
ノクタール国の出鼻を挫けば、逆らう気力も削がれる。その後は、徹底的な蹂躙が始まる。強国に逆らった愚かな弱小国は悲惨な結果をもって終わるだろう。
それから、数十分ほど、魔法弾を浴びせ続けた中。
伝令が青い顔をしながら走ってきた。
「報告します。へ、ヘーゼン=ハイムが西の第7軍を急襲。次々と兵を蹂躙し続けています」
「……っ、馬鹿な」
ラグドン将軍は驚愕しながらつぶやく。ならば、今、自分たちが攻撃を続けているのは、なんなんだ。
……いや、これは流言だ。
「敵の情報操作に惑わされるな。ヘーゼン=ハイムは確かに、あの場所で魔法弾を浴び続けている」
「……将軍。ロギアント城が奪還された時にも、同様のことがありました。私たちの見ている前で、別の場所に現れたのです」
「……」
クドカン軍長は前の戦の生き残りだ。その時にも、このような信じられないことが起きていたのか。
敗戦の報告は悲惨だった。まるで、大将軍以上を相手にしていたように、彼らがヘーゼン=ハイムの凄さを語れば語るほど、自らの無能を弁解しているようにしか聞こえなかった。
今回は、自分たちが同じ目に遭うのか。
「……西に行くぞ。実際に目にしてみなければ」
「はい」
戦力を分散するのは痛いが、無駄な攻撃でこちらが疲弊する訳にはいかない。ラグドン将軍はクドカン軍長とザオラス軍長を連れて、西の第7軍の方へと向かう。
「……っ」
その先では、第7軍は壊滅していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます