第4話

「早速、明浩に聞いてみるか」


「え?アッキー?」


「明浩って山下と同じ中学だったらしいよ。」


ダンス部の同じグループの園田明浩は高校生ながら有名なダンサーで、ブレイクダンスの世界大会にも出たりしていた。県外からわざわざこの学校に来たらしい。


「じゃあ、山下も県外出身なの?」


「そういう事になるよね。あ、明浩たち暇だからこっち来るって。」


「じゃあお昼ご飯食べちゃおうか。」


「うん。」


沓子と今日の話なんかしながら、お昼ご飯のパンをかじる


そうこうしているうちに、廊下から数人の足音が聞こえた。


少し雑に教室のドアが開く。


「お、まだ昼飯食ってんの?」


ドアの枠にもたれ掛かりながら言うアッキー


「そうだよ。今日部活何時から?」


「先生が午前中出張だったから十三時半から」


「あと一時間もあるのね。」


アッキーとその他数人が教室に入って各々座る。


「んで、橘のこと、俺に聞きたい事ってなに?」


「そんな重大じゃ無いんだけどさ、」


と話し始める沓子。重大じゃ無いんだけどってどういう事よ。


「茜が山下のこと気になってるんだってー」


ね?と言いながら私に向く沓子。

今、さらっと私が山下のこと好きなのバラしたよね?


「へぇ、」


「いや、違うよ!?」


慌てて否定するも沓子もアッキーも目を見合わせて意地の悪い笑い方をしてる。


「違うんだ、いいんだねそれで」


意地悪っぽく聞く沓子。こうなったらタチの悪さは天下一品だ。


「…違わないよ…」


根負けして答える私。すごい不憫。


「ちなみに、橘は彼女はいません。でも、気になる子はいるみたい。」


「なにそれ。いいのか悪いのか。」


確かに彼女が居ないのはいい事だけど、気になる子がいるってちょっと…嫌かも。


「それ誰か知らないの?」


「聞いても答えてくれないし、入学してからあんまり話さなくなったから分かんないわ。」


ごめんな。なんておどけて手を合わせて私に言うアッキー。なんだよちくしょう、こいつも面白がってるぞ。


「…あのさ、山下は何でこの学校に来たの?」


「最初は俺と同じでダンスするのに入ったよ。だけど…」


凄く気になるところで止めるアッキー。


「なによ?」


沓子も気になってるみたいで身を乗り出し気味に聞く。


「…いきなり、本当に今考えてもおかしいタイミングで、ダンス出来なくなったって…」


「おかしいタイミング?」


おかしなタイミング、その言葉が気になって


「…入部テスト受かってすぐに、ダンス部辞めるって言い出してさ、俺だって最初は止めたけど…」


「その後だよ、リナが入部したの。」


ここで意外な人物登場。なぜリナちゃん?


「だから、俺が思うにさ橘、リナのために入部しなかったのかも知れない。」


どういうこと?と私が聞く前に沓子が言葉を発した。


「え?それってどういう事よ。なんでリナのために?」


「入部テスト、実はリナ受からなかったんだよ。だから橘が抜けたあと、補欠合格って事。」


中学の時から仲良かったからな、あの2人。

そんなアッキーの言葉を受けて、私は、自信が喪失した。元々無かった自信がもっと砕けて粉々になった。


「だから、リナ、橘の事、好き、なの?」


沓子はゆっくり、確認するようにアッキーに問う。


「あ、やっぱり?リナ、橘の事好きそうだなって思ってたけど、本当だったんだ。」


「あの、私、今日は帰るね。」


急いで荷物をまとめて、足早に教室を出る。沓子の止める声も無視して。

今はちょっと誰の声も聞きたくない。


「茜!待ってよ、どこ行くの」


今日恋を自覚して今日失恋するなんて、私つくづく、ついてないな。

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