第3話

教室に戻るとやっぱり沓子に


「あれあれ?口元が緩んでますよぉー?」


なんてからかわれて。


「やっぱり茜、山下のこと好きでしょ。」


「え、いや、」


「素直になりなってー、遅かれ早かれ私に言うことになるんだから。」


いつも、大抵の相談事は沓子にしていて、それを沓子はよく分かっている。


「で?好きなの?」


「…う、うん。」


「あらー?恋する乙女になっちゃって。」


「べ、別に。早くお昼食べようよ。」


椅子に座って沓子と向かい合う。


「そう言えば恋する茜ちゃんにお教えしたい事があるのよ」


いつになく真剣な顔になる沓子


「な、なに?」


沓子が真剣な顔なんかするから、私も身構えてしまって。


「隣の組のリナっているじゃん?」


私たちと同じダンス部の一員であるリナちゃん。

ショートカットで美人顔のすごくモテる子だ。


「うん、リナちゃんがどうかしたの?」


「いや、結構前からさ、リナ山下の事好きらしいんだよね」


「え?」


考えてなかった、ライバルがいるなんて。


そりゃあ、山下は顔綺麗だし、優しいやつだけど、あんまりモテるとか聞いたことがない。


「リナ、去年山下と同じクラスだったらしくて」


「そうだったんだ。」


「この間、リナのグループにサポートで入った時に聞いたの。そん時は気にしなかったんだけど…」


ぼーっとし過ぎて沓子の話が半分くらい聞こえない。


今の私じゃあ全然リナちゃんに敵わないな。


リナちゃんみたいにすらっとしててショートカットがよく似合う綺麗な顔の人の方が

私なんかより山下に釣り合うんじゃないかって

そんな事しか考えられなくなって。


「…ね…茜ってば!」


「わぁ、どうしたの?」


「どうしたの?はこっちのセリフよ。いきなりぼーっとして、なんかあったの?」


「もし…もしもリナちゃんがライバルだったら、私絶対敵わないなって」


「あら、随分と消極的。茜も充分可愛いわよ?」


そういう事じゃなくて、なんて言うか、


「…出来ればもっと美人に生まれたかったな…」


そうしたら、そうしたら、リナちゃんみたいにショートカットが似合ったかもしれないな。

なんて思って腰近くまで伸びた私の髪をてぐしで梳いてみる。


「そしたら、聞いてあげようか。山下に」


「なにを?」


ずいっと身を乗り出して私の鼻をちょんとつつくと


「す・き・な・タ・イ・プ」


「…っえ?」


「だから、山下がどういう女の子がいいか聞いてあげようかって。もしかしたら、茜みたいな可愛い感じの子好きかもよ?」


いきなり言われて放心状態。


「そ、そんな。別にそういう事じゃなくて、なんて言うか、」


「照れなくてもいいのにぃー。」


「本人に聞くの!?」


「流石にそんな大胆なことしないよ。」


苦笑いする沓子。流石の沓子でも本人には聞けないよね。


「仲のいい男子とかに聞いてもらえばいいでしょ?」


「そ、そうだね」


「じゃあ早速明日から決行だね!」


…今回ばかりは少し、沓子に感謝。だね。

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