第5話 僕はストーカーじゃない
「……何? 誰だっけ、あなた」
「同じクラスの
「ああ」
良い気分はしない。
怪我には同情するけれど、僕はそこまで善い人にはなれない。
そう。
断じて違う。
僕が
「
「何でそんなこと聞くの?」
「助けるためとは言え、体当たりしちゃったし。その怪我って、交通事故って聞いたけど」
「……そう。車に撥ねられたの。こんなの別にどうってこと無い。こんなの、痛くない」
しかし、彼女はそう口にした瞬間、顔を歪めてよろめいた。
「おい、無理すんなよ」
「してない」
「脂汗かいてるぞ」
じっとりとした彼女の肌。顔色も悪い。
「気にしないでって言ってるでしょ? こんなの、平気だから」
「でも」
「これ以上しつこくしたら、警察に電話する」
ハッキリとそう言った
正直、失敗したと思う。
灰の臭いに関して聞きたかったのに、これでは聞くことが出来ない。
とは言え、面と向かって女の子に「君の体から灰の匂いがするよね。クンカクンカ」と言うのは難易度が高いし、これは間違いなく通報されてしまう。
それだけは避けなくてはならない。
しかし、灰の匂いが気になって仕方がない。
そう、もしかすると
ただの勘だし、そんなまさかと思う。
むしろ、違うと思いたい。
しかし、魔術においては、そう言った「勘」と言うのが実は大事だったりするのだ。
もし、彼女が関わっているならば、彼女も僕と同じように異世界に転移していることになる。
始めて転移した時の僕のように、危険な目に遭っている可能性があるのだ。
僕は
「いい加減にして。ついて来ないで」
「でも」
その時、
「どうしたの?
スーツを着た美人である。
社会人であることは間違いなく、僕や三度よりもずっと年上であることは間違いない。
しかし、母と言うには若すぎる。
「お姉ちゃん!」
姉らしい。
「お姉ちゃん、助けて! ストーカーが!」
「ストーカーじゃない!」
酷い冤罪だ!
「止めてっていってるのにつきまとって来くるんだから、ストーカーじゃない!」
「怪我が心配だっただけだ!」
思わず叫んだが、それらを聞いた
「学校のお友達?」
「こんな奴と、誰が!」
僕は紳士である。こと美人の前では、特に紳士なのである。
だから、僕は
「始めまして、お姉さん。
「あらあら、ご丁寧に。
……ごめんなさい、お姉さん。そんなに仲良くしてないです。
しかし、あえて否定するのもどうかと思ったので、僕は雰囲気を壊さないように努めて言葉を選んだ。
「
「え、ええ。そうです。階段から落ちて」
……階段?
「お姉ちゃん! こんな奴と話なんかしないで、家に帰ろう!」
「も、もう、
そのまま僕は家に帰り、どうもスッキリしない気分のまま時間を過ごした。
階段ってなんだ? 交通事故じゃないのか?
やっぱり、どうもおかしい。
それでもパジャマに着替えてベットに横になると、眠気はすぐにやってくる。
そして、マルレラに課せられた宿題を思い出し、僕は憂鬱な気分のまま眠ったのだった。
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